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内燃工学

ハイオクって燃え難いの? 01
【問】ハイオクは燃え難い燃料だと聞きました。 分間6000回転で回っているエンジンは、上圧死点〜  下死点まで僅か0.005秒(!)しかありません。 燃え難いものがそんな短時間で燃え切るのでしょう か。 
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【答】極めて常識的な見解ですね。 
 ご指摘の通り、ハイオクは燃え難い燃料ではありません。 高温高圧下に於いて勝手に火が点いてし まうという現象が起き難い燃料なのです。 
 燃料は、高温・高圧になると発火し易くなります。 
 ガソリンエンジンは混合気を圧縮し、小さい体積の状態から燃焼させ、その膨張圧力を利用して出力 を得ています。 
 混合気の燃焼は点火プラグから開始され、瞬く間に燃焼室全体に燃え広がります。
 しかし、人の感覚では「瞬く間」でも、化学反応の世界では相応に時間を掛けて火炎が伝播して行き ます。 
 火炎が燃焼室の一番遠い場所へ届くまでの間に、最初に着火した部分は反応熱によって膨張を始 めます。  この膨張に因って燃焼室の内圧が上昇します。 
 圧縮行程によって圧縮され、燃焼室の熱を吸熱している混合気は不安定です。
 そのため、直接火を点けなくても発火することがあります。
 このような不安定な混合気が、既に燃焼を開始している部分に因って生じる圧力上昇という干渉を受 けると、火炎が届く前に自己着火してしまうことがあります。 
 これは火炎の伝播による燃焼と違い、燃焼可能状態にある混合気が一斉に反応を始めますので、  一瞬にして体積が急膨張します。 この急膨張は圧力波を生み、圧力波はシリンダー壁面やピストント ップの境界層を吹き飛ばしてしまいます。  結果、シリンダー壁面やピストントップが直接燃焼熱に晒 されて熔損してしまうのです。 
 この異常な圧力波が生じる現象をノッキング(正確には「スパークノック」)と言い、ガソリンエンジン設 計上の障害になっています。 
 エンジンにとってこのノッキングの起こり難さは、エンジンの特性を左右する重大な要素ですから、同 じカロリーであれば、燃料の耐スパークノック性は高ければ高いほどガソリンエンジン用として優れた 燃料だということができます。 
 この耐スパークノック性を表す数字が「オクタン価」と呼ばれるものです。
 ハイオクとはHiオクタン価、つまりオクタン価が高いという意味なのです。 
 そして、火炎の伝播速度はレギュラーガソリンもハイオクガソリンも殆ど違いません。 
 自動車雑誌やサイトの間違った記事に於いて、「ハイオクは燃え難い燃料だ」と言われますが、もし 文字通り「燃え難い燃料」であれば、炎が燃え移る速度、即ち火炎伝播速度が遅くなってしまいます。
 火炎の伝播速度が遅ければ、火が届く前に、先に燃焼を開始した部分の膨張圧力を受けて高温・高 圧の混合気が自己着火してしまい、スパークノックが起こり易くなります。 
 耐スパークノック性が高いということは、火炎伝播速度も速いということなのです。 
 ハイオクとは、決して燃え難い燃料ではありません。 

 ことのついでに説明しておきますが、ディーゼルエンジンに要求される燃料の性質は、ガソリンエンジ ンとは全く逆になります。 
 ディーゼルエンジンは混合気に火を点けているのではなく、高温高圧にした圧搾空気へ燃料を噴出し て火を点けています。 
 燃料が噴出される燃焼室内の圧搾空気は、圧縮行程で加圧され、高温になっていますので、噴出さ れた燃料は化学反応を開始します。 
 逆に言えば、高温高圧の圧搾空気に触れただけで燃焼しなくてはディーゼルエンジンの燃料になり 得ません。 
 ガソリンのようにオクタン価の高い燃料は、高温高圧の圧搾空気に触れても簡単には火が点かない のです。 
 オクタン価の高い燃料は、自己発火に至るまでに時間を要してしまいます。 この時間内に燃焼可能 な混合気が沢山生成されてしまうと、燃料噴出から少し遅れて、沢山の混合気が一斉に発火する現象 が起こります。 
 これも一瞬にして燃焼室内の圧力が急上昇しますので、エンジンの部品を破壊してしまうことがあり ます。 
 これがディーゼルエンジンにおけるノッキング(「ディーゼルノック」)です。 
 耐ディーゼルノック性を表す数字が「セタン価」と呼ばれるものです。 
 ディーゼルノックは火の点き易い燃料の方が起こり難くなります。 ですから、同じカロリーであれば、 火が点き易ければ点き易いほどディーゼルエンジン用として優れた燃料だということができます。 
 このように、ガソリンエンジン用燃料に求められる性質とディーゼルエンジン用燃料に求められる性 質は根本的に相反します。 
 そのため、オクタン価とセタン価は対義語の関係にあります。 

 ですから、余談ですが、ガソリンエンジンにもディーゼルエンジンにも効く燃料添加剤というものは眉 唾モノになってしまうのです。 



 さて、ここまでの説明により、オクタン価という用語の示すものが、「火が点き難い」という意味ではな いとご理解頂けたことでしょう。
 では、裸火に対する火の点き易さはどうでしょうか?
 
 実は、オクタン価の数値は、裸火に対する火の点き易さ/難さに全く関係がありません。
 ガソリンは、スパークプラグの火花は勿論、火種があれば容易に着火します。 
 ですから、ヒートスポットなどは火種ですので、オクタン価が高くてもヒートスポットに因る過早着火を 防ぐことはできないのです。
 ガソリンエンジンに於ける代表的な異常燃焼は、ノッキングと過早着火ですが、ハイオクが対策として 有効なのは、前者だけで、後者には効かないのです。


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