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正しいステロイド治療法

 ステロイド剤は使いたくない
【問】 酷いアトピーで悩んでいますが、ステロイド剤は使いたくありません。
インターネットで検索すると様々な治療法があって迷っています。
どの治療法が一番良いのでしょうか?
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【答】 インターネットは、多彩な情報と、営利を求めない素人さんの体験談が得られる素晴らしい情報 源です。 しかし、アトピー性皮膚炎に悩む私達が、ネットで治療法を検索した場合、全ての治療法に 対し賞賛と非難が入り混じった検索結果が出ますので、混乱して何を信じたら良いのか戸惑うでしょ う。 特に多くの体験者の声が集まった2ちゃんねるのアトピー板は、ここに辿り着くまでに遭遇した人 が多いと思います。
 漢方・針・温泉・特製ヨーグルト・機能水・・・ま、何だって構わないのですが、それで治癒した体験者 の話を読めば読むほど、もう絶対にアトピーが治る物と信じ切ってしまったのではありませんか?
 そして、その一方で、ステロイド剤について、あたかも化学兵器や放射性物質が如き恐ろしいイメー ジを植え付けられたハズです。

 「ステロイド剤は医者が金儲けの為に生み出した恐ろしい薬だ」
 「一回でも使用すれば9ヶ月間は毒が抜け切らず、その間に再使用すれば確実に中毒になる」
 「ステロイド剤は使い続ければ必ず効きが弱くなり、より強いステロイドを使用しないと効かなくなる」
 「ステロイド剤の毒は体に蓄積するので、長期間使用すると麻薬同様、依存症になる」
 「ステロイド剤の使用を中止すると、体に溜まった毒が害を成す『リバウンド』が起こる」
 「ステロイド剤を使用し続けると白内障などの恐ろしい副作用を生じる」
・・・etc
 そして、その論法は当然の帰結として、「脱ステロイドでステロイドの毒を排出し、特殊な治療でアトピ ーを根治する」と云う療法になります。 ま、誰が何を信じて如何程の地獄を味わおうが、それはその 人個人の問題であって、私の知った事ではありません。 (私も、脱ステロイドを試みて地獄を体験した ひとりです)
 しかし、ね。
 いささか滑稽だとは思いませんか? 総合病院へ行けば数多の診療科が存在するのに、病気を重く する薬を処方していると非難されるのは、皮膚科くらいのモンですよ。 治せる治療法があるのに、日 本中の西洋医学皮膚科の全てが、病気を重くする薬を処方して金儲けに走っているなんて、フリーメー ソンの陰謀説と同じ位現実離れした被害妄想ではないでしょうか。

 結論から先に言ってしまえば、ステロイド剤は決して恐ろしい薬ではありません。
 ただ、他の良く効く薬と同様に、使用上の用法用量を守らないとイケナイだけの事です。

 そして、アトピー性皮膚炎は、現状の医学レベルでは原因すら限定出来無い不思議な病気です。 と いうか、様々な要因が複雑に絡み合ってアトピーの原因になっているのです。 某アトピービジネスの サイトで語られる様な、単純なロジックで解明出来る病気ではありません。

 そもそも、本当に大多数のアトピー皮膚炎を治し得る治療法が確立出来たのであれば、個人レベル のビジネスでセコセコ儲けて居るべきではありません。 それは正にノーベル賞モノの発見だからで す。
 直ぐにノーベル医学賞の審査を申請すべきでしょう。 医学とは言え、学問を志す者が、ノーベル賞を 辞退するなんて考えられません。 中島みゆきがレコード大賞や紅白歌合戦を辞退するのとは次元が 違うのですからね。

 それでも、ノーベル賞に見向きもせず、個人医療を営んでいる「アトピーが絶対に治せる名医」が巷 に溢れています。
 百万歩譲って、その医師が無欲なのだとしましょう。
 でも、無欲であって人を救いたいと願う敬虔な医者が、何故ステロイドの被害を看過しているのでしょ う?
 皮膚病の新しい治療法が確立出来たなら、学会で発表すべきです。 そして、金儲けの為に患者を ステロイド漬けにしている悪徳西洋医学医師を告発すべきです。
 何故そうしないのでしょう?
 何故細々と口コミで集まってくる患者全てを、『絶対に治して』あげているのでしょう?

 彼らが使う詐欺の手口については、別の項に譲るとして、まず、知っておかなければイケナイ事があ ります。 それは、「ほとんど全ての病気には、勝手に治ってしまう症例がある」と云う事です。

 末期癌で手遅れだと宣告された患者が、いつまでもしぶとく生きているので医師が不審に思い、再検 査したところ、癌細胞が消えて無くなっていた例さえあります。
 ですから、稀有な治癒例で「私は○○先生の□□治療法でアトピーが完治した」と宣伝すべきではな いのです。 特にアトピー性皮膚炎の様な、自律神経の状態が症状に大きく影響する病気の場合、プ ラセボ効果が小さくありません。 また、アトピーの原因自体が複数の要因が複雑に絡み合っています ので、ちょっとした生活環境の変化で症状が大きく緩和されたり悪化したりします。
 ○○先生の□□治療法について語るなら、患者をグループに分類し、同じ生活をさせた上で、ブライ ンドテストで実効果とプラセボ効果を区別して評価する必要があります。

 しかし、現実にその様な比較で評価される事はありません。
 ネット上に溢れる治癒例は「△△治療法も☆☆治療法でも治らなかったアトピーが、○○先生の□□ 治療法で治った」と云う個人レベルの情報ばかりです。 そして、その情報に対し、「○○先生の□□治 療法はステロイド剤を使っている駄目治療」とか「私は○○先生の□□治療法でアトピーが悪化した」 などの非難がネット上に寄せられているのです。

 アトピー性皮膚炎には数多の治療法が存在し、それぞれに治癒例と被害者が居ます。
 ですから「『私は』これでアトピーが治った」と云う主張には常に賛同と非難が集まって当然です。

 どれを信じるのも個人の自由ですが、「外用ステロイド剤に対する恐怖が、誤った使用方法に起因し ている事」を再認識してから、民間治療に目を向けるべきでしょう。

 なによりもまず肝に銘じておかなければならない事は、「ステロイド剤に限らずこの世に存在する全て の薬には、効果に応じた副作用が起こる」と云う事です。

 薬なんて物は、神様がその病気を治す為に遣わした物質などではなくて、病症が起こるメカニズムに 対して作用する物質に過ぎません。 生体メカニズムを変化させて病症を抑え込み、自己治癒力が発 揮できる環境を整えてやるのが薬の作用です。 であれば、変化させられた生体メカニズムが、期待し ない症状を示してしまうのも止むを得ない事です。

 その事を念頭に置いて考えると、効果の著しい外用ステロイド剤は、その使用状態のコントロールが 完璧に成されていなければ成りません。 しかし、実態は余りにもいい加減です。 医者は患部の症状 に応じた強さの外用ステロイド剤を処方しますが、どの様に使用すべきかの説明はほとんどされませ ん。
 また、使用量に対する制限もありません。 例えば、ある患者に対し医者が、ストロングクラスの外用 ステロイド剤を1日に3g程度塗布すれば症状が抑えられると考えて、1週間分=5gチューブ×4本を 処方したとしましょう。 しかし、患者がその外用ステロイド剤を2日で使い切っても、医者から怒られた りはしません。 それどころか、次から処方される薬の量が増えたりします。
 強い効果を発揮する薬において、この様な処方のされ方をする薬は他に無いでしょう。
 例えば、毎食後1錠、1週間分21錠の薬を2日間で飲んでしまったら、医者から血 相変えて怒鳴られるのではありませんか?
 それが外用ステロイド剤に限って黙認されているのです。
 これでは薬害が出ない方が不思議です。

 外用ステロイド剤が怖いのでは無いのです。
 効果の強い薬を濫用する事が怖いのです。

 そして、この無知故の恐怖心に民間治療が付入ります。
 漢方薬や温泉治療、腹に寄生虫を飼うなんてのはまだしも、遺伝子情報を組み込んだ乳酸菌とか、 特殊な波動を記憶させた機能水など、中学程度の理科知識ですら爆笑物の奇天烈治療法が跋扈して しまうのです。
 注意しましょう。
 アトピーはおろか癌ですら、放っておいても自然治癒してしまう患者が居るのです。 放置して治る患 者が、たまたま某民間治療を受けていたら、その民間治療のお蔭で治った事になってしまいます。 も ちろん、そうでない患者は、ステロイド離脱と云う身の毛もよだつ地獄の業火に身を焼かれた挙句に、 全く抑えられないアトピー性皮膚炎に一生苦しみ続けるのです。

 いえ、民間治療を実践して、治らなかっただけなら未だマシな方かも知れません。 ステロイド離脱で 劇的に悪化したアトピーは、ステロイドを使用していては起こりえない重篤な症状に陥る事があります。
 他の項で詳しく述べる予定ですが、掻き疵から雑菌が侵入して敗血症を起して死亡した例。
 顔に活発な発疹が続いてアトピー性白内障を引き起こして失明した例。
 地獄の苦しみに耐えた代償としては、余りに悲惨なのではないでしょうか。

※:資料を失念してしまいました。
   代わりと言っては何ですが、ネットで見つけたサイトを紹介します。

   apital てんかん情報室 「代替医療で取り返しのつかないことになる前に」
   http://apital.asahi.com/article/tenkan/2013032700005.html?ref=rss&utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter


 私は、民間治療に手を出すのは、信頼出来る医師の下で行われたステロイド処方でも症状が抑えら れなくなってからで構わないと考えます。 ましてや、外用ステロイド剤でコントロール出来ているのに、 脱ステロイドをするなんて愚の骨頂ですよ。

 まぁ、これだけ言ってもドブ漬けで洗脳された人は決して目を覚まさないだろうから、
 「それでもステロイド剤は悪魔の毒薬だ」
 「アトピーを治せるのは○○先生の□□治療法しかない」
って仰られる貴兄を無理に羽交い絞めにして、思い留まらせ様なんて努々考えちゃいませんよ。

 ただ・・・ですね。
 自分で不思議だと思いませんか?
 これがクルマの故障だと喩えてみましょうよ。
 ディーラーが「数ヶ月間1万円づつの出費、後は時折数千円の出費で不具合無く乗り続けれる」と言 ってるのに、怪しげな修理工場の言う「1年間も2年間も死ぬような想いをして、5百万円掛けたら完全 に治ります」って言うのを信じるのと同じですよ。
 病気が辛いのは判ります(私もアトピーですからね)が、冷静に考えましょう。
 まともな感覚で判断すれば、おのずと答えは決まるのではないでしょうか?



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