更新の際に構造を変える事があります。 構造を変えるとアドレスが一から再配分されますので
ブックマーク等でお気に入りのページに飛んだ際に、目的と違うページが表示されることがあります。
その場合は画面一番下の [ TOP ] からトップページへ移動して、トップページから
目的のページへ移動してください。 お手数ですがよろしくお願いいたします。


内燃工学

 強化アクチュエータとブーストコンローラは何が違うのか?
【問】インターネット上の掲示板へブーストアップの手段を問うと、強化アクチュエータとブーストコントロ ーラの2通りの答えが帰ってきます。  両者は何が違うのでしょうか?
□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□
【答】具体的な話をする前に、根本的な次元での理解はされておいででしょうか?

 つまり、
 【問】ブーストアップって何ですか?

 あるは、それよりも更に一段階手前のレベルで
 【問】過給圧って何ですか?

 もしくは、
 【問】何故、過給圧に制御が必要なのですか?

 これらの問いに朧気ながらも答えることが出来るのであれば、質問に対する答は簡単です。
 しかし、このレベルでの知識が無いと説明されてもチンプンカンプンだと思われます。
 正直な話、自動車雑誌の記者の中にさえ、ちゃんと理解出来ていないと思しき者が少なからず居るよ うです。
 今回は、特別にターボチャージャーに因る過給の仕組みまで遡って説明することにしましょう。

 まずは、ターボチャージャーの構造について。
 この辺は、(書いてる記者が理解をしているかどうかを別にして)雑誌などの図でお馴染みだと思いま す。 
 単純に面倒臭いので、ここで懇切丁寧に図解説明することは避けます。
 検索エンジンで「ターボチャージャー」などのキーワード検索を行って図を探し見て下さい。

 解説の為の図が貴方の手元にあると仮定して話を進めます(オイオイ)。
 排気ガスが排気管出口に向かって流れていくエネルギーを利用して、恰も水力発電が発電タービン を回すが如くに排気タービンを回します。
 コンプレッサーは、排気タービンと同じ軸で繋がっており、排気タービンが勢い良く回ると、コンプレッ サーも勢い良く回ります。
 勢い良く回るコンプレッサーは、自然給気でエンジンが吸い込む以上の外気を圧送することができま す。  ここに矛盾が生じてしまいます。  空気が弾性体でないと仮定すれば、ある回転数で稼動する エンジンが一定時間内に吸入する空気の量は一定になりますから、コンプレッサー〜吸気バルブの間 へ、エンジンへ送り込まれなかった余剰な空気がドンドン溜まって行き、その圧力でコンプレッサー〜 吸気バルブ間を形成するパイプ類やサージタンクなどが破裂してしまいます。 
 ところが、現実の空気は弾性体ですから、ある程度まではパイプ類やサージタンクなどを破壊しない で圧搾されていくことが出来るのです。
 この「コンプレッサー〜吸気バルブ間の空気が圧搾される現象」が「過給」であり、その圧縮率がター ボメータなどの計器によって我々が過給圧の数値として認識するのです。

 圧搾された空気は、同じ体積でも酸素の密度が高くなります(正鵠を期す表現をするなら「ピストンが 下死点に在る時にシリンダー内に含まれる酸素のモル数が大きい」)。  ですから、その多い酸素分 子に見合う燃料を供給してやれば、より多くの燃焼ガスを得ることが出来、結果としてピストンを押す膨 張圧力が大きくなってパワーアップするワケです。
 
 ところが、幾ら空気が弾性体であると言っても、[ コンプレッサーの送風量 ] > [ シリンダーへの吸気 量 ] である以上、そのままコンプレッサーが一定の稼動を続ければ、コンプレッサー〜吸気バルブ間 にはドンドン、ドンドン、ドンドン余剰な空気が溜まって行きます。  圧搾された空気がシリンダーへ吸 い込まれて行くことを考えれば、コンプレッサーの風量が極端に大きくない限り、適当な過給圧で釣り 合ってしまいそうな気もしますが、それは違います。  少なくともエンジン回転数が変わらず、コンプレ ッサーの送風量が変わらないのであれば、コンプレッサー〜吸気バルブ間へ際限なく空気が溜まって いきます。  しかし、クルマの速度が可変であるために、コンプレッサーの送風量がそう多くない場合 には釣り合うことが可能になります。
 ガソリンエンジンの場合は、希薄な混合気が着火しないため、シリンダーが吸い込む空気の量(注: モル数)が増えたら、それに応じて燃料も多く供給しなければなりません。  より多い混合気が燃焼し てより強い膨張圧力が得られれば、コンロッドを介して大きな軸出力となり、クルマが加速されます。   クルマの速度が上がれば、同じギアでもエンジンの回転数は高くなります。  エンジンの回転数が高 くなれば、単位時間にシリンダーへ吸い込まれる空気の量が増えます。  シリンダーへ吸い込まれる 空気の量が増えれば、[ コンプレッサーの送風量 ] と [ シリンダーへの吸気量 ] の関係が [ = ] で結 ばれ均衡する勘定になるでしょう。
 ところが、最初の方に書いた通り、コンプレッサーは排気タービンの回転力で稼動しています。  排 気タービンは、排気ガスのエネルギーで回されています。  エンジンの回転数が高くなれば、排気ガス の量も増えます。  必然的に排気タービンはより勢い良く回されることになり、コンプレッサーの回転 速度も上がります。  コンプレッサーの回転速度が上がれば、コンプレッサーの送風量も増えますか ら、再び[ コンプレッサーの送風量 ] > [ シリンダーへの吸気量 ] の関係となって、コンプレッサー〜 吸気バルブ間にはドンドン、ドンドン、ドンドン余剰な空気が溜まって行きくのです。
 コンプレッサー〜吸気バルブ間の耐圧性もさることながら、余りにも高い過給圧によってシリンダーへ 極端に多い圧搾空気が入り込み、大量の混合気が燃焼して強烈な膨張圧力が発生すると、各エンジ ンパーツがそれに耐えられなくなって壊れてしまいます。
 したがって、ターボチャージャー付きのエンジンには、ある程度以上に過給圧を上げない工夫が施さ れているのです。
 市販車は、スイングバルブ式ウェイストゲートという仕組みを採っています。
 これは、排気ガスがタービンに干渉する前に排出してしまう穴を設け、その穴を蝶番で止めたバルブ によって開閉します。  バルブの開閉を制御しているのは、アクチュエーターという名前の部品で、ス イングバルブを閉まる方向にバネの力で押さえています。  アクチュエータには気室があり、サージタ ンク内の過給圧がこの気室に掛かるよう、チューブでサージタンクと繋がっています。

 さて、では実際にどのとうにして過給圧が制御されているのか順序立てて見て行きましょう。
 先述の通り、ターボチャージャーは排気ガス→タービン駆動→コンプレッサー稼動→過給発生→混 合気増量→燃焼圧力増大→排気ガス増大→強くタービン駆動→強くコンプレッサー稼動→大きな過給 発生→混合気もっと増量→燃焼圧力もっと増大→排気ガスもっと増大→更に強くタービン駆動・・・とい う循環を繰り返して行きます。
 スイングバルブ式ウェイストゲートは、増大した排気ガスの一部をバイパスから逃がすことにより、極 端に強く排気タービンを駆動しないようにするのです。  そして、そのスイングバルブの開閉を過給圧 を使って行います。
 アクチュエーターの気室には、サージタンクから繋がって過給圧と同じ圧力になっています。  そし て、その圧力はアクチュエータの気室内にあるダイアフラムという膜に作用しています。  ダイアフラ ムに強い圧力が掛かると、スイングバルブを押し閉じているバネの力に勝って、スイングバルブが開く のです。  このため、自動車メーカーが設定した以上の過給圧が掛かると、スイングバルブが開いて 排気タービンを駆動する排気ガスの量が減り、コンプレッサーの風量が下がって過給圧の上昇が抑え られるわけです。

 ここまでの説明で御理解頂けた通り、ブーストアップとは、このスイングバルブ式ウェイストゲートの作 動を遅らせることによって、抑えられるべき過給圧を上昇させてしまうことなのです。

 では、強化アクチュエータとブーストコンローラは何が違うのでしょうか。

 強化アクチュエーターとは、スイングバルブを押し閉じているアクチュエーターのバネを強くしただけの ものです。  より強い過給圧がアクチェーターのダイアフラムに作用しないとスイングバルブが開かな いようにするわけです。
 ブーストコントローラーとは、サージタンクとアクチュエーターを繋いでいるチューブにバイパスバルブ を設けるものです。  ブーストコントローラーには、機械式と電子式があり、前者は、調整式の小穴か らアクチュエーターのダイアフラムに掛かるべき過給圧を逃がします。 それにより、より強い過給圧が アクチェーターのダイアフラムに作用しないとスイングバルブが開かないようにするわけです。  電子 式のブーストコントローラーは、過給圧をセンサーで監視しており、設定した過給圧までバイパスバルブ を開放してアクチュエーターのダイアフラムに掛かるべき過給圧を逃がします。  センサーが監視して いる過給圧が設定以上になるとバイパスバルブを閉じてアクチュエーターのダイアフラムに過給圧を作 用させ、スイングバルブを開き、過給圧の上昇を止めます。

 このように、強化アクチュエーター、機械式ブーストコントローラー、電子式ブーストコントローラー三者 は全てスイングバルブをより高い過給圧で開くようにするパーツなのですが、その効果には少なからず 違いがあります。
■強化アクチュエーター
○:スイングバルブを強いバネで押し閉じるため、排気バルブ〜排気タービン間の圧力(これを「1次排 圧」といいます)が高くなってもスイングバルブが開き難い。
×:過給圧に比例してダイアフラムに圧力が作用し、比較的低い過給圧から少しずつスイングバルブ が開くため、コンプレッサーのレスポンスが鈍い。
×:過給圧の微調整をアクチュエーターのロッド長さで行うため、過給圧を設定する作業にトンデモナイ 手間が掛かる。
■電子式ブーストコントローラー
○:センサーが設定以上の過給圧を検出するまで、アクチュエーターのダイアフラムに圧を与えないた め、アクチュエータのバネさえ負けなければ1次排圧を高く保つことが出来、コンプレッサーのレスポン スが鋭い。
○:過給圧の設定が簡単。  商品によっては直接過給圧を入力して設定することが出来る。
×:アクチュエーターのバネを強化しないため、1次排圧が余りにも大きくなるとアクチュエーターのバ ネが負けてスイングバルブが開いてしまう。
×:電気仕掛けのバイパスバルブが熱に弱いため取り付けレイアウトに悩まされる。
×:高価。
■機械式ブーストコントローラー
○:安価。
○:強化アクチュエーターに比べれば、過給圧の設定が簡単。
×:インパネまで配管を引き回して、運転席から過給圧の調整が出来るようにすることも可能ですが、 配管が長くなるとアクチュエーターのダイアフラムに圧力が掛かるまで時間を要するようになってしまう ため、オーバーシュートが起り易くなります。  そのため、エンジンルームに置くことになります。
×:開きっ放しの細いバイパス穴から、アクチュエータのダイアフラムに掛かる過給圧の一部を常時抜 くだけなので、結局過給圧に比例してダイアフラムに圧力が作用し、比較的低い過給圧から少しずつス イングバルブが開いて行きます。
×:アクチュエーターのバネを強化しないため、排気ガスの圧力が大きくなるとアクチュエーターのバネ が負けてスイングバルブが開いてしまうのです。

 これでお分かり頂けたと思いますが、1次排圧が高くなるようであれば強化アクチュエーターが優れて おり、1次排圧が余り高くならないのであれば、電子式ブーストコントローラーが優れています。  そし て両者は同時装着が可能ですから、強化アクチュエーターを装着して高い1次排圧に備え、電子式ブ ーストコントローラーでコンプレッサーの高いレスポンスを手に入れることが可能になります。
 つゆーわけで、オススメは強化アクチュエーターと電子式ブーストコントローラーの同時装着によるブ ーストアップです♪



■□■2006.11.26■□■

 ひさびさ本家にURLを貼られてビックリしましたので、記念に(笑)補足しておきます。
 強化アクチュエータでのブーストUP量調整は、ターンバックル式のロッド長調整に拠って行います。
 これは、いわゆる『プリロード』というカタチになります(正しい用語は『セット荷重』)。
 要するに一定の圧力が掛かるまで、スイングゲートを開かないようにすることで過給圧を上げようとい う魂胆なんですな。

 ところで、ロッドの長さが同じでも、ノーマルのアクチュエータと強化アクチュエータは、ダイアフラムを 押すバネの強さが違うため、同じ過給圧でもスイングバルブの開く量が違います。
 ですから理論上は、排気のバイパスが行われ難い分だけ、(ロッドの長さが同じでも)過給圧は強化 アクチュエータの方が高くなるハズです。  でも、実際には殆ど変わらないみたいなんですね(本家Q &Aに貼られたURL:http://fujimura-auto.co.jp/original_parts/gdb/GDBactuator.pdf)。 排気バイパ スの大きさ(つまり、スイングバルブの開放度への依存度)が大きく影響しますので、他のクルマも同じだとは限 りませんが、この数値は意外でした(汗)。


トップへ
戻る
前へ
次へ