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ドライヴィング理論

(12) タックインについて (FFはリアが軽くてスピンし易い?)
2007.05.13-29 読者様よりご指摘を頂戴しましたので、一部改稿いたしました。
2007.11.18 かめ様より図の間違いをご指摘頂きましたので、訂正いたしました。

【問】FF(フロントにエンジンを搭載し、前輪を駆動する形式)のクルマにおいて旋回中にアクセルを閉じると、FR (フロン トにエンジンを搭載し、後輪を駆動する形式)のクルマよりも強いタックイン現象を起こす傾向があります。 
 この現象の説明は、一般に「荷重の抜けたリアタイヤの摩擦力が弱くなり、軽いリアが横滑りする」と 解説さ れています。  しかし、遠心力は質量に比例するのですから、リアの軽いFF車は、リアタイヤが 負担する遠 心力が小さいため、リアタイヤは横滑りし難いのではないでしょうか? 
■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■ 
【答】 とりあえず、どういう状態になることを「タックイン」と称するのかについて、再確認しておきましょう。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃あるクルマが速度を保って、あるいは、弱く増速しながら旋回しているとする。┃
┃このクルマの運転者がアクセルを閉じた際にオーバーステアとなり、イン側に ┃
┃巻き込むような挙動を示す現象を「タックイン」と称する。         ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 タックインという現象を理解する上でポイントとなることの一つ目は、「アクセルを閉じる前が定速または増速 である」という点にあります。

 「減速なら既にアクセルが閉じられているんだから、それ以上に閉じたって大した変化が起こるワケないじゃ ん」って突っ込まれそうですが、これはそういう話ではなくて、旋回することに因って旋回抵抗が発生するので すから、増速は勿論、定速維持でもクルマは駆動されているということに意味があるのです。

 定速の時は、
 [ (プラスの)駆動力 ] と [ 旋回時の走行抵抗 ] がバランスしていて、

 増速の時は、
 [ (プラスの)駆動力 ] が [ 旋回時の走行抵抗 ] に勝っているのですから、

 アクセルを閉じた時の減速Gは、
 [ (マイナスの)駆動力(=エンジンブレーキという抵抗) ] + [ 旋回時の走行抵抗 ] になるワケです。

 旋回時の抵抗は、真っ直ぐに走っている時の走行抵抗よりも大きいのですから、旋回中にアクセルを閉じて 起こる制動Gは、同じギア同じ速度で直進中にアクセルを閉じて起こる制動Gよりも確実に大きくなります。

 このため、旋回中にアクセルを閉じて起こる荷重移動量が直進時よりも大きくなります。

 タイヤが生む横力の大きさは、荷重に依存していますので、同じ横滑り角のままでも荷重の寄った側が発 生する横力の方が大きくなります

 そうすると、前後輪の横力の着力点(K)がフロント側へ移動します。
 [ 重心Gに作用する慣性力 ] と [ Kに作用するタイヤの横力 ] によって車両はヨー角運動するのですか ら、
 単純に梃子の原理で、GK間の距離が離れればヨー角運動が加速されます。
 そのために、アンダーステア傾向が緩和され、場合に拠ってはオーバーステア傾向を示すことになるので す。 

※ 荷重を大きくする代わりに、タイヤのコンパウンドを変えると考えれば解り易いと思います。
[ フロント荷重になる ] = [ フロントタイヤに掛かる荷重が大きくなって摩擦力が大きくなり、リアタイヤに掛かる荷重が小さ くなって摩擦力が小さくなる ]
  ↓
[ フロントタイヤのコンパウンドを予選用の柔らかいモノにし、リアタイヤのコンパウンドを耐久レース用の硬いモノにする ] = [ 同じ荷重でもフロントタイヤの摩擦力が大きくなり、リアタイヤの摩擦力が小さくなる ]
  ↓
 フロントタイヤをハイグリップにして、リアタイヤをローグリップにすると、アンダーステア傾向が弱くなる。
  ↓
 フロントタイヤの摩擦力が大きくて、リアタイヤの摩擦力が小さいのは、タイヤのコンパウンドを変えた場合も、前後の荷重を変えた場 合も同じ。
   ↓
 フロント荷重になった場合も、アンダーステア傾向が弱くなる。
 <<注意>> リアタイヤが限界を超えて滑る次元まで至らなくとも、アンダーステア傾向は弱まる。



 さて、次にタックインという現象を理解する上でポイントとなることの二つ目について考えてみましょう。

 それは、旋回中にアクセルを閉じなければならない状況が、どういう状態なのか?という点にあります。

 ニュートラルステアで旋回できているなら、敢えてアクセルを閉じる必要はありません。
 クルマがアンダーステアを呈していて、定速もしくは増速状態のままでは軌跡がガードレールの向こう側に 行ってしまいそうなら、カーブを無事に曲がり切るためには減速せざるを得ません。  この減速の際に、ドラ イバーが予想していた以上に軌跡の半径が小さくなるのが「タックイン」です。

 モータースポーツのテクニックとして能動的に活用しようとするのでない限り、「タックイン」という現象の多く はドライバーの意図しない現象のハズです。

 エンジンブレーキを使って減速したら、減速したその速度で描くであろうと予想したよりも遥かに小さな弧を 描いたためにドライバーが驚いてしまった…そいう心理的な影響が「タックイン」という現象に対する修辞句を 誇張しているように思います。





 では、ここからが本論…「FRよりもFFのタックインが急激な理由」の説明です。 

 FFでもFRでもアクセルを抜けば、減速Gに応じた荷重移動が起こります。 
 この荷重移動量は、 [ ホイールベース長さ ] と [ 重心高さ ] 、 [ 減速Gの大きさ ] 、 [ 車重 ] の4要 素だけ で弾き出される単純な幾何計算です。 
 つまり、荷重移動量の大きさは、重心がフロントに偏っていても、リアに偏っていても変化が無く、ま た、エン ジンブレーキが前後どちらの車輪に掛かっても(制動Gの大きさが同じなら)変化がありませ ん。 

 ということは、「荷重がフロントに移動することでリヤタイヤの摩擦力が下がるのに対し、タイヤ にかかる横 力は荷重移動する前後でほぼ変わらない」ということが支配的であるならば、FFにだけ 強いタックインが起こ るのはオカシイのです。 
 もし、 [ ホイールベース長さ ] と [ 重心高さ ] 、 [ 減速Gの大きさ ] 、 [ 車重 ] という4要素が同じな ら、タッ クインの強さも同じでなければならないのですから。 

 ところが、現実にFRよりも四駆の方が強いタックイン現象が起こり、そして四駆よりもFFの方が格段 に強い タックイン現象が起こります。 

 何が違うのでしょうか? 

 理屈は極めて単純です。  
 「FFはエンジンブレーキで前輪の抵抗が大きくなり、FRは後輪の抵抗が大きくなる」 
 ただこれだけのことです。  

 リアタイヤが横滑り角を持っているということは、「重心に働く慣性力の延長線上」には、「前輪軸の中 間」も 「後輪軸の中間」もありません。  

 このため旋回中の車両において、前輪あるいは後輪どちらか一方にだけ駆動力や制動力が働くと、 ヨー 方向の力が発生してしまうのです。  

 ・・・と言葉で説明されてもピンと来ませんよね。  

 そこで、旋回姿勢の俯瞰図を描いてみました。 

   


 私たちが、峠やサーキットを攻めている時の旋回姿勢です。

 この場合、前後のタイヤのスリップアングル(横滑り角)はこう↓なります。 

 


 このクルマが前輪駆動車であった場合に、エンジンブレーキを掛かけるとこうなります。  

   


 エンジンブレーキと慣性質量だけに注目して見ましょう。 

   


 エンジンブレーキの作用点と重心に紫色の棒を宛がうと面白いことに気が付きます。 

   


 「エンジンブレーキ」と「慣性質量」によって「紫色の棒を時計方向に回そうとする力」が作用すること が御理 解頂けることと存じます。  

 この時計回りの力は、車両へこの↓ように作用します。  

   

 つまり、「エンジンブレーキ」と「慣性質量」によって、ヨー角運動が加速されるワケです。  




 では、このクルマが後輪駆動車であったらどうなるでしょうか?  

   


 エンジンブレーキと慣性質量だけに注目して見ましょう。 

   


 エンジンブレーキの作用点と重心に紫色の棒を宛がうと面白いことに気が付きます。 

  


 「エンジンブレーキ」と「慣性質量」によって「紫色の棒を反時計方向に回そうとする力」が作用するこ とが御 理解頂けることと存じます。  

 この反時計回りの力は、車両へこの↓ように作用します。  

  


 つまり、「エンジンブレーキ」と「慣性質量」によって、ヨー角運動が減速されるワケです。  

 エンジンブレーキが「前輪のみに掛かるのか?」と「後輪のみに掛かるのか?」の違いは、このような 作用 に因って、ヨー角速度が加速されたり減速されたりすることにあります。  

 通常、FF車のタックインが強い理由は、元々質量配分がフロントに偏っている所為だと説明されがち で す。 

 しかし、たとえばパイロットシャフトやリアデフを備えているにも関わらず、エンジンが鋳鉄製のために フロン トへ車重が偏っているランエボのタックインは余り強くありません。  

 この理由は、前輪にエンジンブレーキが掛かることに因って生じるヨー角運動の加速と、後輪にエン ジンブ レーキが掛かることによって生じるヨー角運動の減速が相殺するからに他なりません。  

 FF車のタックインが強い理由は、元々質量配分がフロントに偏っているためにFF車のタックインが強 く起こ るという説明も正しいのですが、それに上述の理由が加わらなければならないのです。 




 ・・・というトコロで上手く纏まったと思っていたのですが・・・

 「異議あり!」と言われてしまいました。

 曰く「必ずしも重心の慣性方向は、前輪軸中心よりも外側を向くとは限らない」と。

 確かにその通りです。

 静止状態からステアリングを切り込み微速で発進した時、旋回中心は、 [ フロントタイヤの回転方向に鉛直 な線 ] と [ 後輪軸の延長線 ] の交点です。



 ※ フロントタイヤの回転方向に鉛直な線は、図枠内に収まらないので折り曲げて表示しています。


 これが増速に伴って各タイヤが横滑り角を持つと、旋回中心が移動します。
 旋回中心の移動と共に、重心の慣性方向も変わります(時計方向旋回なら、増速に伴って少しずつ反時計 方向に)。




 ※ フロントタイヤおよびリアタイヤの進行方向に鉛直な線は、図枠内に収まらないので折り曲げて表示しています。

 この時点で、前輪イン側の軌跡半径よりも後輪イン側の軌跡半径の方が小さく、いわゆる内輪差を生じま す。

 これが増速してスポーツ走行レベルになれば、上述のような状態になり、FF車がアクセル急閉でタックイン 現象を起こすのですが、もしこの状態(内輪差のある状態)でアクセルを急閉したらどうなるでしょうか?

 この時点で重心の慣性方向は、まだ前輪軸中心よりも右を向いていますから、エンジンブレーキと重心の 慣性質量が生むヨーモーメントは、このように↓



 になります。

 あれれ!?

 そうなんです。
 旋回速度が遅い時に、FF車がアクセルを急に閉じればアンダーステア傾向が強まり、FR車がアクセルを 急に閉じればアンダーステア傾向が弱まる・・・つまり、上述の説明とは丸っきり逆の現象が起こるのです。

 では何故、車速のあまり高くない時に起こる [ FR車のエンジンブレーキ時のヨー運動加速 ] が「タックイン」 と呼ばないのでしょうか?
 それはもう「タックイン」と呼ぶ程にヨー運動が加速しないからに他なりません。
 
 では何故、車速のあまり高くない時に起こる [ FR車のエンジンブレーキ時のヨー運動加速 ] は、ヨー運動 の加速が小さいのでしょうか?
 理由は、 [ 車速が低い=慣性質量が小さい ] & [ 走行抵抗が小さい=エンジンブレーキ時の制動力が小 さい ] からだと思われます。
 これは、単純に赤色と青色の矢印の大きさが小さいので、ヨーモーメントも小さいという理屈です。

 というわけで結論。

 高速旋回時にFF車がアクセルを急に閉じた場合に「タックイン」が生じる。
 同様の力学現象は、低速旋回時のFR車でも起こるが、ヨーモーメントとして小さいので「タックイン」とは称さ ない。

 以上。





★「タックイン」に関するネット上の誤解★
◎ 前輪において全摩擦の一部が縦方向(駆動)に消費されていたところ、アクセルオフによってその消費がな くなった瞬間横方向へ生かされ求心力が増す。
 ・・・クラッチを切るとか、ギアをNにするとかいうのなら未だしも、アクセルOFFもエンジンブレーキという縦方 向の消費を行います。  「アクセルONの駆動力」と「エンジンブレーキの抵抗」が同じ大きさなら、縦方向の 消費は変わりませんから、この理屈ではタックインが起こらないことになってしまいます。


◎ 直進状態で制動し、ブレーキを緩めてステアリングを切り込む
 ・・・それは荷重移動を使う「テクニック」であって、タックインという「現象」ではありません。


◎ タックインとは、デフが生み出す作用であり、LSDでは起きない現象
 ・・・2wayのLSDはエンジンブレーキでも稼動するため、内輪差を制限します。
 内輪の進む距離は、外輪の進む距離よりも短いため、2wayの強力なLSDを装着したFF車では、駆動(加 速も減速も)に因って強いアンダーステアを示すことになります。
 それに比べると、デフに差動制限が掛けられていない状態(=LSD無し、もしくは拘束力の弱いLSD有り) は、駆動(加速も減速も)に因る強アンダーステア化は起こり難くなります。  したがって、強い差動制限が 「ある」vs「なし」で比べるなら、「なし」の方がより大きなタックイン現象を起こすのは事実です。
 しかし、それと「タックインとは、デフが生み出す作用」は同義ではありません。 「LSDあり」でもタックインに 至るべき物理現象は生じています。  ただ、LSDの差動制限がアンダーステア傾向を強くしてしまうために、 タックインと相殺してオーバーステア化が弱くなってしまうだけのことです。  決してデファレンシャルがタック インを作っているワケではありません。


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