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ドライヴィング理論

溝落とし
【問】この際だから聞きますが、某漫画の「溝落とし」は実際に有効なのでしょうか?
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【答】この際だから答えます(笑)。  「より緩やかなライン取りで、高い車速を保って最短距離を走る」 という意味であれば「有効」です。  しかし、某漫画で解説されているように「溝に引っ掛けてグリップさ せる」という効果は、机上の空論の域を出ることはありません。

 まず、浅い低速カーブなど、クリッピングポイントがピンポイントとなるコーナーについて検証してみま しょう。
 道幅が車幅しかないような、まるで教習所のS字クランクのようなコーナーで無い限り、車線を守って さえ「コーナーのR」と「走行ラインのR」は異なります。  走行ラインは可能な限り緩やかなRを描くべき であって、コーナーのRに沿うことしか出来ない「溝落とし」は意味がありません。  あまり深くないコー ナーに於いては、「速く走るために緩やかな走行ラインを描いた結果、クリッピングポイントに於いてタ イヤが浅い溝の上を通過してしまった」という「溝落とし」は「アリ」ですが、「溝の淵にタイヤを引っ掛け て走る溝落とし」は「ナシ」です。

 では、次にヘアピンカーブのような深いコーナーや高速コーナーなど、クリッピングポイントがピンポイ ントではなく区間となるコーナーについて検証してみましょう。
 こちらは、クリッピングポイントが区間になりますから、その間、溝の淵にタイヤを引っ掛けて走れば、 より高い旋回速度が可能なように思われます。  そして、それはクリッピング区間にのみ限って考え ればその通りでしょう。
 しかし、実際にクルマが走行した場合、クリッピング区間に入る前にクルマは既に横Gを受けていま す。  タイヤが溝に引っ掛かって得られる求心力は、タイヤのグリップ力に因って得られる求心力と異 なり横滑り角に応じて増減するものではありません。  引っ掛かった瞬間にイキナリ最大の求心力が 発揮されてしまいます。  つまり、前輪イン側タイヤが溝の淵に引っ掛かった瞬間、フロントタイヤだけ がその溝のRに沿って移動しようとするため、前後輪の求心力差が劇的に増大してしまいます。  そ の結果、クルマは、いきなりスピンモードに入ることになってしまうのです。

 では、なんとか某漫画に花を持たせるため、少し特殊な環境を前提にしてみましょう。
 奥が深くなっているスプーンカーブで道幅が狭ければ、クルマはさして大きくない横G状態からクリッピ ング区間に入ることになります。  この前提条件であれば、タイヤが溝の淵に引っ掛かった瞬間にス ピンモードに入ることは無いでしょう。 
 うんうん♪コレならタイヤを溝の淵に引っ掛ける溝落としが有効になりそうですネ。  ヨカッタヨカッタ
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 異議あり!
 いやいやいや、それで納得しちゃイケマセンって、旦那。
 公道で疾ってるんですから、その理屈には無理があります。
 深い溝でなくとも、道路脇の溝は基本的に路上の埃やゴミを雨水で流すためのもの。  スプーンカ ーブへの進入時は旋回制動なのですから、そんな時に片輪を溝に落としたら溝に溜まった埃やゴミで タイヤが滑ってしまいます。  これは旋回方向とは逆方向へのヨー運動を発生させてしまうため、ドラ イバーは滑り易いタイヤに合わせて制動力を緩めなくてはなりません。
 旋回制動で圧倒的に不利になってしまう以上、奥で深くなるスプーンカーブであっても溝落としは意味 が無いのです。

 ただし、某漫画のウンチクとは全く逆の理屈で溝にタイヤを落とすテクニックが存在します。
 WRC関連のビデオを観ていると時折登場するそのテクニックとは、ヘアピンカーブへの進 入で、アウト側の路肩へタイヤを落とすのです。  先に述べた通り、道 路脇の溝は基本的に路上の埃やゴミを雨水で流すためのものであり、そこは溜まった埃やゴミで滑り 易くなっています。  つまり、アウト側のタイヤの制動力を奪うことによって、あたかも「戦車の旋回」の ように一気に向きを変えるのです。
 (ただし、このテクはウルトラCの高難度らしく、超絶ドラテクで飯食ってるWRCドライバーでもミスっ て、コーナー途中でハーフスピンして停まってしまうシーンが何度もビデオに出てきます。)

 ちなみに余談ですが、WRC関連のビデオでも、「引っ掛けて遠心力に抗する」ことを目的とする「溝落 とし」は観ることは出来ません。

 ただし、極限られた条件下に於いてのみ、「引っ掛けて遠心力に抗する溝落とし」が成立します。
 それは、路面全体を砂が覆うなどの環境によって路面μが著しく低いコーナーを、アクセルONで強 いアンダーステア傾向を示すクルマで攻める場合です。
 この場合、4輪を普通に路面へ置くと、駆動力によって著しいアンダーステアが発生するため旋回加 速することができません。  このような状況下に於いては、イン側のフロントタイヤを溝へ引っ掛けて アンダーを殺すテクが成立します。  しかし、WRCのビデオでもなかなか観ることが出来ない点から 考えて、かなり特殊な技術なのではないでしょうか?  もちろん、某漫画のように整地されたアスファ ルト路面で繰り出せるモノではありません。






 ・・・ところで・・・
 件の某漫画では、S2000のドライバーが「溝落とし」を評して「下回りがスカスカな旧車ならではの 技」と言っていましたが、そうなの?

 オイラ、「溝落とし」ってのは、「極浅い溝にトレッドブロックの縁を引っ掛けている」んだと解釈していま したヨ。  でも、下回りがスカスカじゃない現代車に出来ないってことは、それこそ深い側溝にドスンと タイヤを落としているってコトですよね? 
 そんなことしたら、一発でタイヤのサイドが裂けてバーストしちゃうよ(笑)。 
 フォークリフト用の中実タイヤじゃないんだから、もうちょっと考えて漫画描いてくれないと・・・真面目 に馬鹿にしているこのホームページの方が馬鹿みたいじゃん(泣)。



■■■ 補 稿 □□□■■■■■□□□□□■■■■■□□ 2004.09.18 ■■

 さて、上に綴った薀蓄に「異議あり!」というメールを頂戴しましたので、返信と併せて掲載させ て頂きます。

> 溝落としについて
> 説明文を読んでいるとたしかにゴミやら落ち葉やらがあるだろうなあと思います。
> 漫画の文で「世の中にはプロ顔負けのアマもおり、それらの人たちはある限定されたコースを
> 走り続けることによって特化するものだ」と書いてありました。
> まあだれでもできる技ではなくあくまで地元スペシャルとして独学で研究し、
> なんと成功してしまったてな感じでいいのではないでしょうか。
:いやいやいや。
 「ある限定されたコースを走り続けることによって特化」というのは、そのコースのスペシャリストになる というだけの意味でしょう。
 時計方向に曲がるコーナー手前でイン側の溝にタイヤを落とし、旋回制動を掛ければ、反時計方向 にヨー角加速してコースアウトするのは必至。  これは単純な物理現象であって愛と勇気と友情と根性 でどうにか出来るモノではありません。  「特化したスペシャリスト」とは、決して「ある限定されたコース を走り続けることによって物理を超越できる」という意味ではないのでは?



> あと、「極浅い溝にトレッドブロックの縁を引っ掛けている」んだと解釈していたというところで
> S2000とバトルしているコースの溝と主人公の地元の溝は違うのはお気づきになりましたか?
> ここは溝というか路肩に段差がありそれに引っ掛けています。その段差に
> フロントやらサイドやら擦ってしまうからすかすかの車ではないとだめとなったのでしょう。
> バーストはいかにもしそうですが。
:そうです。
 問題は正(まさ)しく「バーストはいかにもしそう」という点にあります。
 タイヤが損傷→破裂してしまわない程度の「引っ掛け」は、トレッドブロックの引っ掛かり以外に在り得 ません。  もし、深い溝にタイヤを落としてしまうのであれば「良くてタイヤがバースト」「悪くすればアノ 『ロードスター』のように事故ってしまう」しかないでしょう。
 旋回の物理学以前のレベルで、深い溝にドスンとタイヤを落とすウルトラテクニックは、たとえ漫画で も酷過ぎる出鱈目です。  それが通るレベルを対象に漫画を描くのであれば、【コロコロコミック】あた りが適切だと思います。


■■■ 補 稿 □□□■■■■■□□□□□■■■■■□□ 2009.11.03 ■■

 さて、上に綴った薀蓄に「別の視点のご紹介あり!」というメールを頂戴しましたので、 返信と併せて掲載させて頂きます。

> Sと申します。はじめまして。
>
> 異議、というか別の視点のご紹介です。
>
> ドライビング理論>溝落としのところです。「ひっかける」という使い方・効果については
> 全く同意件なのですが、読んだ本の中に別の意味合いとして登場していたので
> こちらをご紹介します。
>
> ポールフレール著 新ハイスピードドライビング
> http://www.amazon.co.jp/dp/4544040442
> ルマンウイナーの著者がポルシェ本社のドライビングレッスンを行った際に
> サーキットの溝(イン側スロープ)に車輪を入れてコーナリングスピードを
> 上げるレッスンをおこなったことが写真付きで紹介されています。
> 理論的な話では、タイヤサイドを溝にひっかけてぶら下がるのではなく
> イン側を低くして車体にバンク角をつけた状態にする、とのことでした。
>
> 伝聞ではなんですので御一読されて評価をお勧めします。

 全く以って弁解のし様もありません。 当該書籍を私は所有しております(汗)。 それも色々改定され た現行版じゃなくて、昔のヤツ。
 一応、全部読んだ上でこちらのサイトを立ち上げさせて頂いたのですが、根本的に鳥頭なので完璧 に記憶の彼方でした。

 ただし、弁解させて頂くなら、本の記載は、あくまで当時の『サスペンションストロークに対して不適切 なアライメント変化をきたすポルシェ』にとって有効な技だったのであろうと推察いたします。
 というのも、 [ 車体がイン側にバンクする ] = [ アウト側タイヤから見た路面が(見掛け上)逆バンク になる ] であり、 [ 溝に落ちた分だけ重心が低くなって車両左右間の荷重移動量が減る ] という効果 を相殺して余りある逆効果になると考えられるからです。


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