基督暦2022年10月10日 クルマ雑学へ追加
Q : 何故トラックは左側リアタイヤのボルトが緩むのか?
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A : 真夏でも真冬でもタイヤ交換が支障なく行えるようにするために、熱膨張を考慮して、ホイールに
開いている穴は、其処に挿すボルトの外径よりも大きくなっています。 もちろん、座面もナットの最下
部もテーパーの形状になっており、ボルトを締めればボルトは穴の中心に置かれるようになります。
しかし、真夏は熱膨張して大きくなった PCD ( Pitch Circle Diameter:車のホイールを固定する全て
のハブボルト穴の中心点を結んでできた円の直径 ) にナットが掛かるため、ホイールの穴に対してナ
ットはホイール全体の中心側が強い圧力で接しています。 もちろん、真冬は逆で熱収縮で小さくなっ
た PCD にナットが掛かるため、ホイールの穴に対してナットは、ホイール全体の外周側が強い圧力で
接することになります。
ここまでが前置き。
ホイールのセンターの直上を通過しようとするナットに関して脳内検証してみるとこうなります。
真夏の熱膨張しているホイールに対して強い圧力で接しているのは ( ホイールのセンターの直上を
通過しようとするナットに於いては ) ナットを鉛直に睨んで下側。 なので左側駆動輪をホイールの正
面から観察すると、加速しようとするとナットを締めようとする力が働き、減速しようとするとナットを緩め
ようとする力が働く ( もちろん、右駆動論をホイールの正面から観察れば真逆の力が働く )。
もちろん、真冬は真逆になります。 真冬の熱収縮しているホイールに対して強い圧力で接している
のは ( ホイールのセンターの直上を通過しようとするナットに於いては ) ナットを鉛直に睨んで上側。
なので左側駆動輪をホイールの正面から観察すると、加速しようとするとナットを緩めようとする力が
働き、減速しようとするとナットを締ようとする力が働く ( もちろん、右駆動論をホイールの正面から観
察れば真逆の力が働く )。
ここまでの説明だと僅かに緩んだ分だけちゃんと締まるから何も問題は起こらないように思える。
ではここからタネ明かし。
実は真冬でもホイールの温度は走行して加減速を繰り返している限り、そうそうキンキンには冷えてく
れない。 なぜならブレーキの熱で暖め続けられているからだ。
だから、基本的にナットが緩むとか締まるとかって現象に関しては、真冬は気に病む必要は無い。
問題は真夏、というか暑い時期だ。
直前の文章だけどおさらいをしておこう。 真夏、というか暑い時期の左側駆動輪は、加速しようとす
るとナットを締めようとする力が働き、減速しようとするとナットを緩めようとする力が働く。
パワーウエイトレシオが3.0未満なんていう特殊なスーパースポーツカーを除けば、基本的に時速
100kmからの制動距離で、静止状態から時速100kmに到達する乗用車はない。 つまり、殆ど全ての
乗用車に於いて
[ 減速力 ] >>> [ 加速力 ]
である。 ましてやトラックだ。 トラックなどの運搬車両は、ガンガン加速するとガンガン燃料を消費
して燃料代が儲けを削って行くから、基本、周囲のクルマの流れを妨害しない程度に緩やかにしか加
速しない。 一方、( 車両用信号よりも早く赤に変わる歩行者用信号を注視する等して、急ブレーキを
可能な限り回避するようにしていても ) 信号は守らなくてはならないから、制動Gはそれなりに発生す
る。
つまり、一般的な乗用車もそうなのだけれど、トラックに於いては圧倒的に
減速G ] >>>│越えられない壁│>>> [ 加速G ]
なのです。
だから、左側駆動輪のナットが緩むワケです。
しかし、JIS方式なら右側駆動輪は正ネジでも左側駆動輪は逆ネジ。 換気扇も扇風機も自転車のペ
ダルも回る力で緩まない方向にネジを切ってあるのに、どうしてトラックの後輪をISO規格にしてしまっ
たのか。 此処に書いた解説は中学生でも理解できるレベルだし、中学生でも自分で導き出せるレベ
ルだ。 この程度のことすら理解でいないほどに国土交通省には蒙昧(ばか)しかいないのか?
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