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オイル及びオイル添加剤

 オイル添加剤で部品が溶ける?
【問】市販のオイル添加剤を使用すると、極圧剤がエンジンやミッション内部の部品を溶かすので、クル マの寿命が短くなると聞きました。  本当ですか?
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【答】いやいやいや。

 たしかに極圧剤は、金属部品の表面分子と化学結合することに因って塑性に脆弱な金属化合物の 皮膜を形成します。  この金属化合物は、固体潤滑が起こる潤滑環境下に於いて、接触によって損 耗することで焼き付を防ぎます。  この損耗を「腐食磨耗」と称しますが、それは、高濃度な酸に侵さ れて金属が腐食する現象とは全くの別物です。

 試す機会があれば、市販の添加剤を鍋に入れ、釘などの金属部品を煮てください。
 果たして釘は、高濃度の硫酸や塩酸に漬けた時のように、反応ガスを生じながら溶けてしまうでしょう か?
・・・もちろん、そんな現象を目にすることはできません。

 極圧剤が塑性に脆弱な金属化合物の層を生成するためには、鍋で煮た程度の温度では不十分なの です。  極圧剤は、閃光温度で化学反応を進めて金属化合物の層を生成します。
 ・・・さて、ここで聞き慣れない言葉「閃光温度」について簡単に説明しましょう。
 一見平滑に見える部品の表面は、ミクロレベルでは様々な凹凸が並ぶ粗面です。  流体の少ない 境界潤滑環境や固体潤滑環境では、この凹凸の凸部同士が接触します。  接触圧力は接触面積に 反比例しますから、ミクロ単位の凸部同士はトンデモナイ高圧で接触することになるのです。  この高 圧による接触に因って凸部は瞬間的に著しい高熱になります。  この高熱を「閃光温度」というので す。
 つまり、極圧剤が腐食磨耗を進めるためには、ミクロレベルでの凸部同士の接触が不可欠なので す。
 逆に言えば、流体潤滑が保てている潤滑環境であれば、金属化合物は部品表層の分子にしか発生 せず、腐食磨耗など起こりません。

 では、極圧剤を多量に含んだ市販のオイル添加剤を使用しても金属化合物は発生しないのでしょう か?  ここが市販のオイル添加剤のややこしい部分なのですが、一部の商品を除いて、市販のオイ ル添加剤は粘度がシャブシャブです。  このシャブシャブの液体がオイルに混ざることに因ってオイル の剪断抵抗が低下します。  その結果、軸の回転抵抗が少なくなるのが市販のオイル添加剤の「効 果のカラクリ」です。 
 そして、シャブシャブのオイル添加剤が混ざって粘度が低下したオイルは、高温・高負荷下において 油膜を維持することが困難になります。  その結果、流体の少ない境界潤滑状態に陥り易くなりま す。
 通常であれば、流体の少ない境界潤滑状態に陥れば、ミクロ単位の凸部同士が接触して閃光温度 を発します。  その結果、凸部同士は溶着し、相対運動に因って溶着が剥がされます。  この溶着 →剥離に因って接触面が荒れ、焼き付くのです。
 ところが、極圧剤は凸部同士の溶着を防ぎます。  凸部を剪断抵抗の小さい金属化合物に代えて しまうからです。
 そしてそれは、本来なら発生しなくて良い金属化合物が発生している状態なのです。

 つまり、市販のオイル添加剤の効能の基本的なカラクリは、シャブシャブの液体をオイルに混ぜるこ とで流体摺動面の抵抗を下げ、それに伴って生じる焼き付きのリスクを過剰な金属化合物で回避して いるだけなのです。  だから市販のオイル添加剤に対して腐食磨耗の虞が危惧されるのであって、市 販のオイル添加剤が直接金属部品を溶かしているわけではありません。


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