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オイル及びオイル添加剤
オイルクーラーの配管は、細い物の方が油圧を確保できるので良い・・・?
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【問】雑誌に「オイルクーラーの配管は、細い物の方が油圧を確保できるので良い」と書いてありまし
た。 それならGT−Rのチューニング車輌などに、太い12番のホースを使うのは何故でしょう?
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【答】BM誌が廃刊になったおかげで少しは嘘ンコ記事も減るかと期待していたのですが・・・自動車雑
誌に限らず専門誌の編集者って、採用試験の際に、専門分野に関する出題は無いのでしょうか?
この雑誌記事の筆者は、何の為に油圧が存在するのかが皆目理解出来ていないようです。
油圧は、エンジンの隅々までオイルを送り、各摺動部が流体潤滑(および弾性流体潤滑)を維持する
ために必然的に発生するものです。
つまり、オイルの到着先が抵抗になっているから、オイルポンプの後に正圧が生じているのです。
これは、潤滑するために油圧が生じているのであって、油圧が生じているから潤滑できているワケで
はありません。
オイルクーラーの無い配管を下図のように表すと、
━━━┓ ┏━━━━━━━
←← ┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
━┓ ←
┃ B A ←
┃ ←
━┛ ←
←← ┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
━━━┛ ┗━━━━━━━
オイルクーラー付きの配管は、以下のようになるでしょう。
━━━┓ ┏━━━━━━━
←← ┗━━┓ ┏━┓ ┏━━┛
━┓ ┗━━━┛=┗━━━┛ ←
┃ B = A ←
┃ = ←
━┛ ┏━━━┓=┏━━━┓ ←
←← ┏━━┛ ▲ ┗━┛ ┗━━┓
━━━┛ ▲ ▲ ┗━━━━━━━
▲ コア
ホース
この図に於いて細いホースを使うということは、
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← ┗━━┓ ┏━┓ ┏━━┛ ←
━┓ ┃ ┃=┃ ┃ ←
┃ B ┗━━━┛=┗━━━┛ A ←
┃ ┏━━━┓=┏━━━┓ ←
━┛ ┃ ┃=┃ ┃ ←
← ┏━━┛ ▲ ┗━┛ ┗━━┓ ←
━━━┛ ▲ ▲ ┗━━━━━━━
▲ コア
ホース
とすることを意味します。
他の項目で、「ブレーキホースが膨らむと制動力は落ちるのか?」というQについて解説していますの
で、ご参照頂ければ幸いなのですが、流体を持つ圧力伝達経路の流路を絞ると、絞られた箇所の前
後に圧力差が生じます。
つまり、図上のA点、B点で圧力を測れば、その圧力差は、
[オイルクーラー無し] < [オイルクーラー有り(太い配管)] < [オイルクーラー有り(細い配管)]
の順に大きくなります。
この現象は、簡単に言えば、「流れを悪くするとその下流の流量が減る」というだけの話に過ぎませ
ん。
さて、油圧は何のために必要なのでしょうか?
何故、油圧低下がエンジン破損の懸念に繋がるのでしょうか?
エンジン内の各摺動部は、潤滑油の皮膜によって流体潤滑を維持するように設計されています。
油圧が低くなると各摺動部へ送り込まれる油の絶対量が減少し、潤滑環境が悪化します。
つまり油圧は、あくまで送られる潤滑油の絶対量を確保するために必要なのです。
逆に言えば、必要な部位に必要な量の潤滑油が送り込まれ、流体潤滑および弾性流体潤滑がちゃ
んと維持できるのであれば、油圧は低くても構いません。
質問のように、わざわざ送油経路を細くして(つまり抵抗を加えて)送油ポンプ直後の直後の圧力を
上げても、その圧力数値は実際の潤滑に何の意味も持ちません。
幾らA点の圧力が高くても、B点に至るまでに大きな抵抗があれば、流れるオイルの量は多くならな
いからです。
こういう誤解は、何も配管に限ったことではありません。
インタークーラーやオイルクーラーのコアに関しても、同様な誤解を耳にすることが少なくありません。
「コアを大きくすると圧損が増える」という迷信です。
たとえば、下図のようなオイルクーラーコアがあったとしましょう。
┏━━━┓
┃ = ┃
━━━━━━━━━━┛ = ┗━━━━━━━━━━━━
=
=
=
━━━━━━━━━━┓ = ┏━━━━━━━━━━━━
┃ = ┃
┗━━━┛
▲
コア
これを下図のような格好で、コアを大型化すれば、
┏━━━┓
┃ = ┃
┃ = ┃
━━━━━━━━━━┛ = ┗━━━━━━━━━━━━
=
=
=
━━━━━━━━━━┓ = ┏━━━━━━━━━━━━
┃ = ┃
┃ = ┃
┗━━━┛
▲
コア
見ての通り、コア内部の流路断面積が増えます。
コア内部の単位面積あたりの抵抗が同じなら、断面積が大きければ大きいほど全体の抵抗は小さく
なります。
つまり、コアの厚さが同じで断面積が大きくなるのであれば、コアの大型化に伴って圧損は小さくなる
のです。
一方、同じようにコアを大型化するのであっても、
┏━━━━━┓
┃ === ┃
━━━━━━━━━┛ === ┗━━━━━━━━━━━━
===
===
===
━━━━━━━━━┓ === ┏━━━━━━━━━━━━
┃ === ┃
┗━━━━━┛
であれば、オイルがコアの中を流れる際に生じる抵抗は、ノーマルよりも大きくなります。
さて、オイルクーラーの場合は、単純に、[コアの断面積拡大]=[抵抗減] 、[コアの流路を長くする]=
[抵抗増]と捉えて構いません。
この時の抵抗減とは圧力損失減であり、抵抗増とは圧力損失増です。
圧力損失が減れば、コアの前後に生じる圧力差は小さくなります。
圧力損失が増えれば、コアの前後に生じる圧力差は大きくなります。
ところが、インタークーラーの場合は少々話が変わってきます。
インタークーラーでは、コアをどの方向に大きくしてもコアの前後に生じる圧力差が大きくなることがあ
ります。
たとえば、「ノーマルで最大過給圧が1.0kg掛かっている車両のインタークーラーを大型化すると、最大
過給圧が0.8kg程度しか掛からなくなる」などです。
しかし、これは圧力損失ではありません。
インタークーラーは吸気温度を下げるために存在しています。
したがって、インタークーラーを大型化すれば、コアから放出される熱量が増え、エンジンの吸気温度
が下がります。
同じ圧力を示す気体のモル数は、温度に反比例しますから、単位時間あたりにスロットルを通過する
吸入空気のモル数が同じでも、吸気温度が変われば圧力は異なります。
ですから、インタークーラーを大型化した際に、ブーストメーターの示す最大過給圧が小さくなっても、
「圧力損失で(吸入空気量が減って)最大過給圧が下がった」と判断するのは間違いです。
たとえブーストメーターの示す数値が小さくなっても、実際にエンジンへ送り込まれる空気のモル数は
増えているかも知れないからです。
ということは、もし燃調に余裕が無い場合に、インタークーラーの大型化に伴って下がった最大過給
圧を、ブーストコントローラーなどで調整して元の過給圧が掛かるようにすることは危険なのです。
同じ過給圧であっても、吸気温度が低ければ実際にエンジンへ送り込まれる空気のモル数は多くな
っており、その吸気量に見合った燃料が供給できなければ空燃比が希薄化して最悪ブローしてしまい
ます。
少々話が脱線してしまいましたが、以前に本家のQ&Aにて、「インタークーラーを大きくしたら最大過
給圧が下がってしまいました」というスレッドに対して、仕様も確認せずに「ブーストコントローラーで元
の最大過給圧に戻してあげましょう」などというトンでもないレスがありましたので、老婆心ながら書か
せて頂きました。
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