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内燃工学

高回転で出力が頭打ちになるスーパーチャージャー
【問】 スーパーチャージャー(※注1)って、高回転になると機械的損失が大きくなるので出力が頭打ち になると聞きました。
 それで言えば、ターボチャージャー(※注2)も高回転では排気の障害になるので、出力が頭打ちにな るのではないでしょうか?
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【答】 そうですよ。
 低〜中回転域での効率を重視したタービンを選択したターボチャージャーの場合、高回転ではターボ チャージャーが排気の障害になるので出力が頭打ち・・・どころか明らかに低下してしまいます。
 全域でターボチャージャーの効果を期待するのであれば、タービンのA/R比を可変にするなどのギ ミックを装備するか、あるいはシーケンシャルツインタービン化して見かけ上のタービン容量を段階的 に適合させてやらなくてはなりません。
 前者は超高温化で作動しなくてはならない箇所だけに、機械的な信頼性に「?」マークが付きますし、 後者はセカンダリータービンの回転数が立ち遅れる分、出力に谷間が生じてしまいます。
 工業用原動機に比べると、遥かに広い回転数域で安定した出力を期待される自動車用エンジンは、 過給器が余り良い組み合わせではないのかも知れません。
 とはいうものの、技術革新とは大した物で、ランエボのツインスクロールターボ(※注3)などはシングル ターボで、しかもジェットターボ(※注4)などのギミックも持たないのに、かなり低回転から、レブリミット寸 前の高回転までほぼフラットに吹き上がります。
 スーパーチャージャーは、コストを抑えれば低効率な機構を選ばざるを得ず、高効率な機構を選べば コストが跳ね上がってしまうので、生き残りは難しいでしょうね。

 さて、スーパーチャージャーの話題が出ましたので、折角ですからスーパーチャージャーの種類と特 性に触れておきましょう。
 国産車メーカーの採用するスーパーチャージャーのほとんどがルーツ式(※注5)なので、「スーパーチ ャージャー=ルーツ式」だとお思いの貴兄も少なく無いでしょう。
 しかし、正鵠を期した表現をするのであれば、ルーツ式はスーパーチャージャーではありません。 何 故なら、ルーツ式は大気を圧搾充填するのではなく、只単に送風するだけだからです。 そう云う意味 でルーツ式は「ブロアー」と称するのが正しいでしょう。
 さて、ルーツ式ブロアー以外の機械駆動式大気充填装置は、リショルム式(※注6)、スクロール式(※ 注7)とがあります。 ルーツ式以外は圧搾空気を充填しますので、正真正銘のスーパーチャージャーと 呼べるでしょう。
 なお、ルーツ式ブロアーには2葉型と3葉型があり、後者は葉が捩れた構造になっているものもある ため、後述のリショルム式と見間違われることがあります。 しかし、ルーツ式ブロアーはサージタンク 内の圧力が上がると葉が回るのを妨げようとするため、高い過給圧を掛けることができません。 スペ ック表で最大過給圧が0.5などのショボイ圧力のものはルーツ式です。
 ルーツ式の優れている点はコストです。
 似たように見えても、葉の幾何学的構造が、後述のリショルムとは比べ物にならない程単純なので、 機械加工に掛かるコストが遥かに安くできるのです。
 ルーツ式の劣っている点は高過給圧下での機械効率の低さです。  前述の通り、ルーツ式ブロアー は高過給圧下で葉の回転が妨げられるため、単に過給圧を高くすることができないばかりでなく、過給 圧が抵抗となって損失が生じます。  これは、自動車用としては致命的な欠点です。  事実、初代M R2などのルーツ式スーパーチャージャー採用車は、プーリー交換などで過給圧アップを図っても、逆 流圧が抵抗になってパワーを食われるので、ほとんどパワーアップできません。

 次にリショルム式スーパージャージャーについて触れましょう。
 リショルム式の優れている点は効率の高さです。  元が産業用のガスコンプレッサーなだけに出口 圧力が10kg20kgになっても効率がほとんど変わりません(クルマのエンジンにそんな高過給掛けた ら壊れちゃいますけど)。
 リショルム式の劣っている点はコストです。 幾何学的に複雑な軌跡を描いて噛み合わさるスクリュー を高精度に加工しなければならないとか、ルーツ式に比べて2倍以上(正しくは♂スクリューが約3倍、 ♀スクリューが約2倍)の速度で回る軸を圧縮ガスをシールしつつ潤滑し、なおかつ振動で軸がぶれな いように固定しなくてはならないなど、生産コストが馬鹿みたいに高く付いてしまいます。
 NAと10〜20万円位しか値段差が付けられない国産車での採用は困難でしょう。
 ちなみにメルセデスベンツの「KOMPRESSOR」はリショルム式を搭載しているとのコトです。

 最後に、スクロール式スーパーチャージャーについて触れましょう。
 スクロール式の優れているのは本体サイズの小ささです。 ほとんどターボチャージャー並みの大き さは、空間に余裕のない横置きFFに適しています。
 スクロール式の劣っているのはやはりコストです。  実物を見る限り簡単に作れそうなのですが、渦 巻き状のリブを高精度に作るのが大変らしいです。
 また、スクロール式はスーパーチャージャーにもかかわらず、ルーツ式と同様に出口で逆流しようとす る圧力が抵抗になるので、高過給圧下で効率が落ちてしまいます。
 スクロール式スーパーチャージャーの採用例がフォルクスワーゲン社のゴルフしかないのも、このあ たりに理由がありそうです。

※注1 : スーパーチャージャー = エンジン出力を消費して過給器を駆動する方式。  正しくは「機械 式スーパーチャージャー」。  略称「SC」。

※注2 : ターボチャージャー = 排気ガスの圧力を利用して過給器を駆動する方式。  正しくは「排気 タービン駆動遠心式スーパーチャージャー」。  略称は「TC」ですが、略して言う時は普通は「ターボ」 と呼びます。

※注3 : ツインスクロールターボチャージャー = 排気マニホールドを1番4番と2番3番で集合させ、タ ービンケース内にも仕切りを置いて排気干渉を避ける構造。  石川播磨重工製RHEシリーズ。  ラ ンエボでは4型以降に採用。

※注4 : ジェットターボ = ターボチャージャーの排気ガスが流れ込む最狭部に可変フラップを設ける 事によりA/R比を可変にしたもの。

※注5 : ルーツ式 = ∞型断面の羽がケースの中で組み合わさって回転することによって、羽とケース の隙間で空気を送る仕組み。  定量式ポンプと同じ構造のブロワー(扇風機)なので、出口側が高圧 になると逆流しようしてしまう欠点があります。

※注6 : リショルム式 = 2個のスクリューがケースの中で組み合わさって回転することによって、スク リューとケースの隙間で空気を送る仕組み。  スクリューを使うので「スクリュー式」とも呼ばれます。   産業用に使われるガスコンプレッサーと同じ物なので、出口側が高圧になっても効率が落ちません。

※注7 : スクロール式 = 渦巻き状の溝を持つケースの中を、渦巻き状のリブが偏心して動いて空気 が流れていく仕組み。  フォルクスワーゲンゴルフに採用された商品名で「Gラダー」と呼ばれる事が 多い。


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