更新の際に構造を変える事があります。 構造を変えるとアドレスが一から再配分されますので
ブックマーク等でお気に入りのページに飛んだ際に、目的と違うページが表示されることがあります。
その場合は画面一番下の [ TOP ] からトップページへ移動して、トップページから
目的のページへ移動してください。 お手数ですがよろしくお願いいたします。


内燃工学

 6気筒エンジンの低中速トルクが4気筒よりも細い理由
【問】たとえば日産のエンジンで、RB20よりもSR20の方がパンチ力があると言われるのは何故です か?
 (充填効率が同じだと仮定して)同じ排気量なら、同じエンジン回転数の時に同じ量の空気を吸入して いるハズです。
 それに対して燃料を供給して燃やすのであれば、得られる膨張圧力は同じなのではありませんか?
■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■
【答】各気筒で燃焼される燃料(※)の総和が同じなら軸出力は同じでなければなりません。
 にもかかわらず、実際に多気筒エンジンは低中速域のトルクが細いですね。
 これは何故かと言うと、多気筒化に因って熱損失と摩擦損失が増えるからです。

 クルマのエンジンは、理論的に得られるハズの出力と、実際の出力が大きく異なります。
 これは様々な要素が絡んでエネルギーが損失するからですが、その大きな要因に「熱損失」と「摩擦」 があります。

 シリンダに吸入された混合気は、燃焼して膨張し、膨張圧力でピストンを押し下げるのですが、膨張 行程中にシリンダ壁やピストン頭頂部に熱を奪われます。
 熱を奪われれば膨張圧力が下がります。 つまり、ピストンを押し下げる力が小さくなります。
 同じ排気量でも多気筒化すればシリンダ壁やピストン頭頂部の面積が増えます(これを「S/V比が大 きくなる」と言います。Sは面積、Vは体積の意味です)。
 つまり、熱の奪われる面積が増えるので燃焼中の作動ガス温度が下がって出力が落ちるのです。

 また、多気筒化するとコンロッドの数が増えます。 また、ピストンリングの延べ長さも増えます。
 これらは摩擦する面積が増えることを意味します。
 折角作動ガスがピストンを強く押し下げても、出力軸に伝わるまでに摩擦がエネルギーを消費してし まいますから、摩擦の多い多気筒エンジンは軸出力が小さくなるのです。



 ところで、多気筒化すると低速トルクが細くなる反面、高回転に強くなると言われています。
 話のついでに、多気筒化が高回転に効く理由についても述べておきましょう。

 [仕事量たる出力]=[力量たるトルク]×[回転数](×係数)
 であることは御存知だと思いますが、
 [最大出力]=[最大トルク]×[最大出力発生回転数](×係数)
 とならないのは何故でしょうか?
 それは、高回転になるに従ってエンジンの充填効率が落ちるからです。

 では、何故高回転になるに従ってエンジンの充填効率が落ちるのでしょうか?
 高回転ということは、1回の吸気や排気の時間が短いということです。
 短い時間に吸排気されるためには、混合気や排気ガスの流速が速くならなくてはなりません。
 ところが、吸排気バルブがリフトした際に生じるバルブ隙間は限られていますから、高回転になるとバ ルブ隙間が吸排気の邪魔になってしまいます。
 極端な場合にはバルブ隙間で乱流が起こって混合気や排気ガスが滞ることさえあります(この現象を 「チョーキング」と言います)。
 エンジンを多気筒化すると1個あたりのバルブは小さくなりますが、バルブの総数が増えるのでバル ブ隙間の総面積が広くなります。 
 このため、多気筒エンジンはチョーキングが起こり難く、高回転でも充填効率の低下が少ないので す。
 だから高回転に強いと言われるのですね。



※注意「各気筒で燃焼される燃料」:『燃焼』される燃料であって、『供給』される燃料ではない点に注意 してください。
 高出力エンジンに於いては、燃焼室の熔損を防止するため高負荷・高回転時に理論空燃比以上の 過濃な燃料を供給することがあります。


トップへ
戻る
前へ
次へ