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ドライヴィング理論

 (13) ステア特性という用語の本当の意味
【問】アンダーステアやオーバーステアという言葉をドラテク用語として使うのは、本来の使い方ではな いとのことですが、ではアンダーステアやオーバーステアは本来どのように用いられるべきなのでしょ う?

■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■ 

【答】「車輌運動の安定性」を表すために用いられます。

 今更ではありますが、もう一度基本に戻ってドラテク用語ではない、教科書に記載されているステア 特性の説明に触れておきましょう。

 最初の説明の最後に添付(盗用)した図に示されている通り、アンダーステア or ニュートラルステア  or オーバーステアを決定する要素は前後輪の求心力差です。

 低速で走行する時、要求される求心力は大きくありません。

 増速に従って要求される求心力が増えますが、速度の増加に伴って求心力も増えます。

 低速で旋回している時 [ 前輪の求心力 ] >少しだけ> [ 後輪の求心力 ] でした。

 少しだけであっても、 [ 前輪の求心力 ] > [ 後輪の求心力 ] ですから、速度の増加に伴って求心力 が増えると [ 前輪の求心力 ] と [ 後輪の求心力 ] の差が広がります。

 このために前後輪の横滑り角が増えます。

 横滑り角が増えることに伴って前後輪の求心力が更に増えます。

 [ 前輪の求心力 ] と [ 後輪の求心力 ] の差が、その旋回を維持するために適切なヨー角速度を生 み出している状態が“ニュートラルステア”。

 [ 前輪の求心力 ] と [ 後輪の求心力 ] の差が、その旋回を維持するために適切なヨー角速度よりも 速くなってしまい、速度が限界よりも遥かに低ければ旋回半径がどんどん小さくなっていく状態が“オー バーステア”。

 [ 前輪の求心力 ] と [ 後輪の求心力 ] の差が、その旋回を維持するために適切なヨー角速度よりも 遅くなってしまい、旋回半径がどんどん大きくなっていく状態が“アンダーステア”。

 でしたね。

 では、旋回ではなく直進している時に横風や路面のウネリなどによってクルマの進行方向が乱された 時、それぞれのステア特性を持つクルマはどのような挙動を示すのでしょうか?

 脳内実験し易くするために、具体的な例を挙げます。

 高速道路を走行中、トンネルを出た瞬間に強い横風を受け、クルマの進行方向が少しだけ「左」に向 いた。
 進行方向が乱されたということは、瞬間的に旋回姿勢に切り替わったということと同じです。

 ということは・・・

 オーバーステア特性を持つクルマは、どんどん左へ左へ曲がって行くことになります。 クルマの速度 と横風の強さ次第ではいきなりスピンするかも知れません。  クルマの向きが変わるや否や直ちに適 切な修正舵が必要です。  高速道路を巡航中にスパッとカウンターステア!  う〜ん、難しそうで す。  カウンターが遅れたら左の壁,カウンターの戻しが遅れたら、今度は右の壁が待っています。   イヤですねぇ。

 ニュートラルステア特性を持つクルマは、向いた方向へ直進して行きます。 速やかに舵角を修正し なければカードレールとKISSしてしまうでしょう。  走り屋さんなら無問題ですね。  でも、アベレージ ドライバーならちょっとヤバイかも知れません。

 アンダーステア特性を持つクルマは、一瞬左を向いても(ヨー角速度が減っていく特性ゆえに)勝手に 元の進行方向へ戻ろうとしてくれます。 進行軌跡がタイヤ幅1〜2本分程度横にズレるかも知れませ ん。  完全に直進に戻らず、ホンの少し左へ向かっているかも知れません。  でも、ゆっくり対応して も十分間に合います。  走り屋さんでも走っている間中神経を尖らせているワケではありませんから ね、やっぱりこういう特性がありがたいですね。

 もうお分かりですね。
 市販車が必ずアンダーステア特性に設(しつら)えてある理由は、「外乱に対して安定していて安全だ から」です。

 ドラテクサイトでよく言われているような、「オーバーステア特性の旋回は高度なドラテクを要するか ら」ではありません(それも理由のひとつですが)。





 では、最後に。
 総まとめとして、アンダーステア/オーバーステアという言葉を [ 自動車工学用語として本来の意味 ]  と [ ドラテク用語に流用した場合の意味 ] について表にしておきましょう。

┌─┬─────────┬─────────┬─────────┐
│ │ アンダーステア │ニュートラルステア│ オーバーステア │
├─┼─────────┼─────────┼─────────┤
│本│極低速から微増速し│極低速から微増速し│極低速から微増速し│
│来│ていった場合に旋回│ていった場合に、あ│ていった場合に旋回│
│の│円が孕む     │る程度の速度まで同│合に旋回円が小さく│
│意│         │旋回半径に留まるこ│さくなる(内側へ巻│
│味│         │とが出来る    │き込む)     │
├─┼─────────┼─────────┼─────────┤
│原│ヨー角加速度が不足│ヨー角加速度が適切│ヨー角加速度が過剰│
│因│         │         │         │
┝━┿━━━━━━━━━┿━━━━━━━━━┿━━━━━━━━━┥
│流│ドライバーが意図し│ドライバーが意図し│ドライバーが意図し│
│用│たよりもヨー角速度│た旋回軌跡を描く │たよりもヨー角速度│
│の│が遅く、その所為で│         │が速くなり、舵角を│
│意│旋回半径が孕む  │         │維持したままだとス│
│味│         │         │ピンモードへ移行す│
│ │         │         │る        │
├─┼─────────┼─────────┼─────────┤
│原│ヨー角速度が不足 │ヨー角速度が適切 │ヨー角速度が過剰 │
│因│         │         │         │
┝━┿━━━━━━━━━┿━━━━━━━━━┿━━━━━━━━━┥
│間│ドライバーがハンド│ドライバーがハンド│ドライバーが期待し│
│違│ルやアクセル・ブレ│ルやアクセル・ブレ│たよりも、クルマが│
│っ│ーキを操作して足掻│ーキを操作した結果│更に小さい円弧を描│
│た│いたが、ドライバー│ドライバーが望む軌│こうとしたため、操│
│流│が希望する旋回半径│跡を描くことが出来│作を修正した   │
│用│よりも大きな軌跡し│た(狙ったクリップ│         │
│の│か描けなかった  │に付けた)    │         │
│意│(クリップに付けな│         │         │
│味│かった)     │         │         │
├─┼─────────┼─────────┼─────────┤
│原│・操作が不適切  │・操作が適切   │・操作が不適切  │
│因│・速度過剰    │・速度が適切   │         │
└─┴─────────┴─────────┴─────────┘


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