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内燃工学

 エンジンブレーキをかけると、エンジンは熱くなるか、それとも冷え る? 2012.01.29 お便りを頂戴 しました
【問】エンジンブレーキをかけると、エンジンは熱くなるのでしょうか、それとも冷えるのでしょうか? 
本来ブレーキが行う運動エネルギーから熱エネルギーへの変換を、エンジンが代行すると考えると、熱 く なるような気がします。 
しかしシリンダー、ピストン、ヘッド周りに関しては、気圧が下がり断熱膨張で冷えるようでもあります。 
例えばオーバーヒート気味のときは、エンブレの使用を控えるべきか、はたまた励行すべきなのでしょ う か。 
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【答】ううう…古傷が… 
 実は、私もこの点について誤解していたんです。 
 今は証拠隠滅して如何なる検索エンジンでも拾えない削除済みページに「ロータリーエンジンは何故 エ ンジンブレーキが効かないのか」という薀蓄を延々と綴ったことがあります。 
 それは、レシプロとロータリーのポンピングロスの違いについて述べたモノだったのですが、読者の 方 (ディスクCをリカバリしてしまった際にメールの記録が全て失われたため、HN等が分からなくなって しま いました…(滝汗))から、メールにて「下り坂をエンジンOFFで走行中にスロットルを開閉してもエ ンブレ は殆ど変化しないよ」と指摘されてしまいました。 

 そして、実際に大阪茨木のサ●ータウンの下り坂で エンジンOFF。  アクセルをパタパタ開閉し てみると……なんと!御指摘の通り、エンジンブレーキは 殆ど変化しません! 
※解説:「大阪茨木のサニ●タウン」=高台にある新興住宅地までの道路が素晴らしいワインディングなのですが、直管の馬 鹿が来て騒音を撒き散らしたた め、茨木警察によって走り屋が締め出されました。 今は、スキール音を響かせると15分以内 にパトカーがやってきます。


 良く考えてみればこれも道理。

 まず、アクセル全 [ 開 ] 状態、つまりエンジンキーOFFでアクセルペダルを踏んだ時は

 1) スロットルバルブでのロスは、極小
 2) 吸気バルブを新気が通る際の抵抗は、ある
 3) 圧縮行程での抵抗は、大きくある
 4) 膨張行程では逆に圧搾された空気がピストンを推す
 5) 排気バルブを空気が通る際の抵抗は、ある

 ☆ 3と4は釣り合って相殺するが、3の際に空気が加熱される分だけエネルギーを損失している

 次に、アクセル全 [ 閉 ] 状態、つまりエンジンキーOFFでアクセルペダルから足を離した時は

 a ) スロットルバルブでのロスは、最大
 b1) 新気の量が僅かなので、吸気行程で吸気バルブを新気が通る際の抵抗は、極小
 b2) ただし、スロットル以降が負圧状態でピストンが下がるので若干の抵抗がある
 c ) 負圧の燃焼室内に向かってピストンが引き上げられる
 d ) 新気の量が僅かなので、膨張行程燃焼室が負圧になる=抵抗
 e ) 排気バルブが開くと負圧のシリンダ内へ排気バルブから空気が入り込み、ピストンの上昇に
    伴って再び排気バルブから空気が排出される。 空気が再び排出される際は抵抗。

 ☆ cとdは釣り合って相殺するが、b2とdの際に空気が冷却される分だけエネルギーを損失している

 つまり、

 ・ アクセル全 [ 開 ] 状態 → 吸排気バルブを空気が通る時の抵抗&圧縮時の空気加熱
 ・ アクセル全 [ 閉 ] 状態 → スロットルバルブを空気が通る時の抵抗
                   &減圧時の空気冷却&排気行程時の空気排出抵抗
 で

 エンジンキーOFFでアクセルペダルを踏んだ → 離した時に生じる減速Gは

 [ 吸排気バルブを空気が通る時の抵抗&圧縮時の空気加熱 ] 
  ― [ スロットルバルブを空気が通る時の抵抗
      &減圧時の空気冷却&排気行程時の空気排出抵抗 ]

 に因ってもたらされ、その差は実際のトコロ、全然大したことないんですね。

 エンジンブレーキにスロットルロスやポンピングロスを含むのは当然ですが、アクセルを全 [ 閉 ] にし た際に生じる減速の大部分がスロットルロスやポンピングロスを原因としているワケではありません。
 どちらかといえば、モータリング抵抗(エンジンを外部から回そうとする際の抵抗)やエンジンオイルポンプやウ ォーターポンプなど(AT車においてはトランスミッション・フリュ―ドの加圧ポンプも)の駆動抵抗,駆動系の損失,タ イヤの転がり抵抗,そして高速域においては更に空気抵抗が支配的に影響することに因って、減速し ていると捉えるべきでしょう。
 (逆に言えば、アクセル [ 開 ] 時は、エンジン出力がこれら諸抵抗に打ち勝ってクルマが進んでいる ワケです)

 そういう意味で、一般の自動車知識として知られている「エンジンブレーキの正体は、スロットルロスと ポンピングロス」は間違いなんですね。



 さて、 
 > シリンダー、ピストン、ヘッド周りに関しては、気圧が下がり断熱膨張で冷えるようでもあります 
 は、理論的に正しいのですが現実的ではありません。 
 といいますのも、それならば、スロットルを塞いだエンジンをモーターで駆動し、冷えたエンジンに風を 当てれば周囲の熱を奪うことが可能になるからです。 
 実際にそのような冷房器具が販売されていないのは、発生する摩擦熱に差し引かれて効率が酷く悪 い所為だと思われますが、ことエンジンに関して言えば、上述の通り減圧比が小さいために負圧そのも のが決して大きくなく、それ故に奪われる熱量も少しです。



 結論を申し上げますと、 
 (1)負圧でエンジンは幾らも冷えない 
 (2)エンジンブレーキは、エンジンなどの摩擦損失に因って車体の慣性運動エネルギーを減衰するた め、エンジンは摩擦熱で発熱する。 
 しかし、ガソリンを燃やした際に発生する熱量に比べれば、それは遥かに小さいものです。 
 したがって、オーバーヒートしそうな状況において、エンジンブレーキに因る発熱を懸念することは杞 憂です。  オーバーヒートしそうなくらいアクセルをガンガン踏んだ時は、ブレーキも酷使してしるはず で す。  ペースを落としてクーリングランするのであれば、エンジンブレーキも積極的に活用してブレ ーキ もクーリングしてあげるのが良いでしょう。



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 平成24年01月21日に「K.H」様より本稿に関してお便りを頂戴しました。

  - - 引用ここから- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

 はじめまして。
 圭坊さんのページで自動車工学について勉強させていただいています。
 非常にわかりやすく感服させられる次第です。

 その中で、一つ誤りというか、指摘があるのでメールさせていただきます。
 クルマ関係Q&Aの、
 内燃機関−エンジンブレーキをかけると、エンジンは熱くなるか、それとも冷える?
 のページ中の下記の箇所で、
 > > シリンダー、ピストン、ヘッド周りに関しては、気圧が下がり断熱膨張で冷えるようでもあります
 > は、理論的に正しいのですが現実的ではありません。
 > といいますのも、それならば、スロットルを塞いだエンジンをモーターで駆動し、冷えたエンジンに
 > 風を 当てれば周囲の熱を奪うことが可能になるからです。
 > 実際にそのような冷房器具が販売されていないのは、発生する摩擦熱に差し引かれて
 > 効率が酷く悪い所為だと思われますが、ことエンジンに関して言えば、上述の通り
 > 減圧比が小さいために負圧そのも のが決して大きくなく、それ故に奪われる熱量も少しです。

 と述べられていますが、このスロットルを塞いだエンジンをモーターで駆動し、冷えたエンジンに
 風を てて熱を奪う装置は、実際に製造されています。
 ”スターリングクーラー”といった名称のものです。
 参考ページを貼っておきますので、参考にしてください。

 http://fpsc.twinbird.jp/faq.html#fpsc01

 ※ ただ、どの程度断熱膨張で冷えるのかよくわからないので、
   エンジンブレーキでエンジンは冷えるのか?がyesなのかnoなのか私にはわかりません・・・。

 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 引用ここまで - -

 ほう。 これは驚きました。

 そんな冷却機関が存在する(しかも商品化され、今なお絶えていない)んですね。

 でも、これだけだとどういう理屈なのか分からないので
 キーワード [ スターリング冷凍機 ] で検索してみました。
 そうしたところ、理屈を説明しているページを発見しました。

 http://www.jsrae.or.jp/annai/yougo/190.html

 要するに、伝熱製に優れた材質のパイプに、
 両側からピストンを突っ込んで、端の方で一気に圧縮する。

  ↓

 そうするとオール電化の湯沸かし器に使われているヒートポンプのように、
 圧縮されたガスが発熱する(断熱圧縮)。

  ↓

 そのまま置くとパイプを伝わって熱が外に逃げる。

  ↓

 圧縮されたガスの温度が下がったら、ガスの容積がそのままになるように
 2つのピストンを動かして、圧縮されたガスを移動させる。

  ↓

 移動した先で圧縮されたガスを減圧してやると、スプレー塗料を一気に使った時の様に
 膨張したガスが吸熱する(断熱膨張)。

 つまり、パイプの [ ガスを圧縮した部分 ] は発熱して、 [ ガスを膨張した部分 ] は吸熱するから、
 熱交換が行われることになる
                    ・・・という仕組み。

 こういうのを思いついちゃう人って凄いと感心しますね。

 ただまぁ、この [ スターリング冷凍機 ] ってヤツは、仕掛けの胆(きも)が「ヒートポンプで高温化」にあ りますから、エンジンブレーキと仕組みの根幹は同じでも効率は全然違いますよね。

 断熱圧縮にしろ断熱膨張にしろ、その熱量は圧縮/膨張させられるガス量とその圧力差に依存してい るのですから、閉じたスロットルの隙間(とアイドリング用の空気通路)を通った僅かな空気と、排気バ ルブからシリンダーに吸い込まれた僅かな空気をエンジンの圧縮比で断熱膨張しても高が知れてます よね。

 なので、たとえこういう製品が存在しても、やっぱり、エンジンブレーキじゃ幾らも冷えないと思いま す。


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