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内燃工学

 なぜ、ロングストロークエンジンは、低速トルクが太いのに高回転が苦手なのか?

 2018.09.04 ホンダのV-TECHエンジンを例に、ロングストロークエンジンの要求オクタン価が低い理由を解説
【問】どうして、ロングストロークエンジンは、低速トルクが太いのでしょうか?  また、なぜショートスト ロークエンジンは高回転に強いのでしょうか?
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【答】 圧縮率が同じで、動的なガス交換率が同じ(燃焼する混合気の量が同じ)なら、下死点における 容積が同じシリンダがピストンに与える仕事量は、ロングストロークもショートストロークも同じハズで す。
 にも関わらず、ロングストロークエンジンは低速トルクが太く(=実用回転域において力強い)、高回 転に弱い(=高回転でパンチがない)と言われます。

 ロングストロークの低速トルクが太いのは、第一に、熱損失が少ないからです。
 圧縮行程を終えて点火され、膨張する作動ガス(=膨張行程においては、「燃える混合気」)は、まず 燃焼室とピストン頭頂部に熱を奪われ、次いでピストンが下死点に向かうに連れて現れるシリンダー壁 に熱を奪われます。
 ピストンを押す仕事量の源は、作動ガスの圧力ですから、燃焼室・ピストン頭頂部・シリンダー壁に熱 を奪われれば奪われる程作動ガスの圧力(=平均有効圧力)が低下して出力が落ちてしまいます。
 適当にスクエアなボア×ストロークを設定し、そのロングストロークバージョンとショートストロークバー ジョンを比較すれば簡単に判る通り、下死点時の容積が同じでも、その時の燃焼室・ピストン頭頂部・ シリンダー壁の総面積は、ロングストロークよりもショートストロークの方が大きくなります(劇的に大き な差ではありませんが)。  つまり、ロングストロークは下死点時の容積が同じでも、熱を奪う壁の総 面積がショートストロークよりも狭いために、熱効率が良く、低速トルクが(比較的)太くなるワケです。

 第二の理由は、ロングストロークが、ノッキングという厄介な現象に対して有利であることです。
 別項で詳しく説明した通り、点火プラグからエンドガス(=点火プラグから遠い距離にある混合気)ま での距離が長ければ長い程、ノッキングが起こり易くなります。  これは、火花点火式ガソリンエンジ ンにおけるノッキングという現象が、火炎がエンドガスに伝播する前に、膨張した燃焼ガスの圧力がエ ンドガスを圧搾してしまうことに由って発生するからに他なりません。
 ということは、点火プラグからエンドガスまでの距離が短ければ短い程、火炎がエンドガスに早く到達 することが出来、膨張した燃焼ガスの圧力がエンドガスを圧搾し難くなるワケです。
 下死点時の容積が同じなら、ピストン径はショートストロークエンジンよりもロングストロークエンジン の方が小さくなります。  つまり、点火プラグからエンドガスまでの距離が短くなりますから、ロングスト ロークエンジンはショートストロークエンジンよりもノッキングが起こり難いのです。
 ノッキングが起こり難ければ、それだけ最も効率の良いタイミングで混合気に点火することが出来、 熱効率が良くなるワケです。


 第二の理由に追加で、作動ガスの流速や乱流についても触れておく必要があるでしょう。

 かつてホンダは、V-TECHという夢のようなバルブ駆動システムを発明し、実用化させました。

 それは低回転域と高回転域でバルブのリフト量を変化させ、低回転域の燃焼効率と高回転域の燃焼 効率を両立させるという正に内燃屋が夢にまで見たであろう大発明でした。

 さて。

 では、どうして低回転域と高回転域でバルブのリフト量を変化させる必要があるのでしょうか?

 低回転でバルブのリフト量を小さくする目的がシリンダーに入る空気の量の制限ならば、そんなもの はスロットルを絞るだけで済む話です。 わざわざ面倒な機構を組み込んでまで、低回転でバルブのリ フト量を小さくするには理由がある筈です。

 それは、ずばり、作動ガスに乱流をもたらすために他なりません。

 開いたバルブの隙間を通る際に作動ガスの流れが乱されます。

 この時、バルブのリフト量が少なく通り道が狭い方がより大きく乱れることになります。 また、バルブ のリフト量が少なく通り道が狭ければ作動ガスの流れも速くなります。 ケーキに刺さった蝋燭の火を 消す時にクチを窄めますね、あれと同じです。

 この速くて乱れた流れが点火プラグで着火された後の火炎伝播を後押しして、燃焼室内の端まで早く 炎を届けるのです。

 この目的をさらに進化させたエンジンも存在します。

 ツインカム4バルブエンジンの吸気側2バルブの片方を低回転域で止めてしまう事に因り、空気の通り 道を半分にして、作動ガスの乱れをより大きく、流れをより速くして、更に要求オクタン価を下げようとい うシロモノです。

 実はこれもホンダエンジンで、wikipedia に拠れば

   > ホンダのREV、HYPER-VTEC、VTEC-E、L型エンジンにおけるi-VTECなど、
   > 主にホンダ車を中心に採用されている

 とのこと。

 さすがはBMWからエンジン屋と褒められるだけのことはありますね。

 最近は貨物車屋に堕ちた感がありますが。

 さて、話が横に逸れました。

 ロングストロークエンジンは、燃焼室の直径が小さくなる分、どうしても吸気バルブの直径が小さくな り、それ故に同じシリンダ容積であってもショートストロークエンジンよりも作動ガスの流速と乱れが大き くなるので、要求オクタン価が小さくなって低回転で有利になるのですね。


 さて、かように熱効率の良いロングストロークエンジンが、どうして高回転になると、からっきし情けなく なってしまうのでしょうか?
 その理由は、第一にガスの通るバルブの開放面積が狭いという点にあります。
 上述において私は、“ロングストロークエンジンがノッキングし難い”ということの理由として、「下死点 時の容積が同じなら、ピストン径はショートストロークエンジンよりもロングストロークエンジンの方が小 さい」と説明させていただきました。  ピストン径が小さいということは、バルブ数が同じなら必然的に 使えるバルブの最大径も小さくなってしまいます。
 バルブの径が小さいということは、バルブが目一杯開いた状態でも、バルブとバルブシートの隙間の 面積が狭いということです。  狭いということは、ガス(吸気バルブにおいては空気(新気)、排気バルブにおいて は排ガス)が通り難いということを意味します。
 つまり、ガスの速度が遅い低速時は問題にならないのですが、高回転時はバルブとバルブシートの 隙間の面積が狭いためにガス交換の効率が落ちて残留ガスが増え、充填効率が下がってしまうワケ です。

 第二の理由は、ピストンスピードです。
 ロングストロークとは文字通りピストンの上死点から下死点までの距離が長いということです。
 ピストンの上死点から下死点までの距離が長いということは、同じエンジン回転数であっても、ピスト ンの速度が速いということです。
 ピストンの速度は単純にエンジンの回転数と正比例しますから、高回転になるとロングストロークエン ジンのピストンはトンデモナイ速度で往復運動をさせられることになります。
 この高速におけるシリンダとピストンリングの摩擦が損失として効く他に、高速で往復運動するピスト ンの慣性質量が、ピストンピンやクランクの軸受けに与える衝撃は、負荷要因として看過することが出 来ません。



 一方、低回転で効率の悪さを露呈したショートストロークエンジンが何故、高回転になると(ロングスト ロークエンジンに比べて)元気になるのでしょうか?
 それは、先に述べた通り、第一にガスの通るバルブの開放面積が広く、第二に同じエンジン回転数 でもピストンスピードが遅いという点で高回転に有利であることに尽きるでしょう。
 ……おや?……
 低速時にロングストロークよりもノッキングの点で不利だったという欠点はどうなってしまったのでしょ うか?
 実は火花点火式ガソリンエンジンの場合は、高回転になるとノッキングが起こり難くなるため、ピスト ン径が大きくてノッキングが起こり易いというショートストロークエンジンの欠点が消えてしまうのです。
 なぜ、火花点火式ガソリンエンジンが、高回転になるとノッキングが起こり難くなるのかというと、高回 転になるとピストンスピードが速くなるため、ピストン頭頂部に近い混合気が攪拌されて、混合気の流 れに細かい乱流が発生するからです。
 静的な混合気の燃焼速度は、単純な化学反応の伝播速度に依存しますが、細かい乱流まみれの混 合気の燃焼は、化学反応の伝播速度に乱流の速度が加わるため、静的な混合気の燃焼速度とは比 べ物にならないほど速くなります。  この速い燃焼速度ゆえに、エンドガスが圧搾される前にエンドガ スに火炎が伝播するため、高回転における火花点火式ガソリンエンジンは、ノッキングが起こり難くな るのです。
 ですから、高回転では一方的にショートストロークエンジンが有利になつてしまうワケです。



 もちろん、自動車メーカーは馬鹿ではありませんから、吸気管効果や排気管効果などの動的効果を 能動的に活用して低速トルクの太いショートストロークエンジンや、高回転までタレ難いロングストロー クエンジンの実現に余念がありません(特に後者は環境エンジンとして効く)。  ただ、給排気系に特 別な工夫をしない限り、本質的にロングストロークエンジンは低速トルクが太い反面、高回転に弱く、シ ョートストロークエンジンは低速の効率が良くない反面、高回転でもタレないという特性を持っているの です。





■□2007.05.13■□

 google にてキーワード「cabad806」で検索したら、2ちゃんねる の【ぁゃιぃ】オカルトチューンスレ6【プ ラシーボ】というスレッドにこのページがリンクされていました。

 以下、コピペ。
145 :名無しさん@そうだドライブへ行こう :2007/03/13(火) 23:33:39 ID:0Pze5MfF0
 >>144
 JV○Sは、ここで斬ってるぞw
 ttp://cabad806.web.infoseek.co.jp/page154.html#lcn002
 ただこの人、ロングストロークがショートストロークよりトルクが出るのは
 クランク径が大きいからというのを、知らないみたい。
 ttp://cabad806.web.infoseek.co.jp/page544.html#lcn024
 テコの原理を学んでないのかな?

 さすが2ちゃんねる。
 常に我々の想像の斜め上を爆走してるよ。

 自転車のペダルを漕ぐ時に、クランクが長いと要求踏力が小さくなるから、「ロングストロークがショー トストロークよりトルクが出るのは、クランク径が大きいから」と考えているんだろうけど、そ・れ・間・違・ い・デ・ス。
 クランク径が大きくて回転トルクが大きくなるのは、クランクに掛かる力が同じ場合。

 ロングストローク vs ショートストロークで比べているんだから、アタリマエだけど排気量は同じが前提 条件だ。

 たとえば、ロングストロークエンジンが1気筒あたりの排気量(上圧死点〜下死点間シリンダ容積差)500cc で、ピストンストローク10cmなら、ピストン断面積50平方cmで、クランク半径は5cm。
 これに対して、ショートストロークエンジンが同排気量で、ピストンストローク8cmなら、ピストン断面積 62.5平方cmで、クランク半径4cmになります。

 クランク径の違いは、ショートストロークエンジンに比べてロングストロークエンジンが1.25倍。
 しかし、ピストン断面積が0.8倍になってしまうので、平均有効圧力も0.8倍に下がってしまいます。
 1.25×0.8=1
 つまり、クランク径に注目しても、ロングストロークエンジンとショートストロークエンジンのトルクは同じ にしかならないんですヨ。

 こんな簡単なコトに誰も気が付かないのか?  誰も突っ込んでいないぞ。
 それとも、晒し者羞恥プレーなのかな?


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