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クルマ雑学

ボン穴
【問】 ランサーエボリューションなど一部のスポーツモデルはボンネットに排熱用の穴が開いていま す。 何故他のスポーツモデルには純正採用されないのでしょうか?
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【答】 エボに限らず、乗用車のスポーツモデルのボンネット穴に、高速走行時の排熱効果はあまりあり ません。
 それは、穴の開いていないハイパワーモデルについて考えてみれば判ることです。
 アリストやスープラ、GT−R、RX−7などは高速走行時に何処から排熱しているのでしょうか?
 それはボディ下部からです。
 フロントスポイラーの形状に拠って差はありますが、基本的に高速走行時、ボデイ下部に負圧が生じ ています。 フロントにエンジンを積んだ乗用車はエンジンルームの下が開いていますので、ラジエータ を通った空気は此処から排出されるのです。

 では、ボンネットに穴を開けても、走行中の冷却効果は望めないのでしょうか?
 いいえ、ある前提条件を満たすのであれば、効果は十分に期待できます。
 それは、ボンネットに開けた穴の上面に、走行中十分な負圧が掛かっているという条件です。

 先に述べた通り、スポーツモデルのバンパー形状は、走行中のボディ下部に負圧を生じるよう設計さ れています。
 通常のボンネットでは、この負圧がラジエターの前後に大きな圧力差を生じることに因ってラジエター のコアに風が通り、熱交換がすみやかに行われています。
 ボンネットに開いた大きな穴の上面に負圧が掛かっていなければ、そこから空気がエンジンルーム 内に侵入し、ラジエター後部の負圧を減衰してしまうのです。
 これではラジエターの放熱効率が低下してしまい、水温が下がりません。
 逆にボンネットに開けた穴の上面に走行中十分な負圧が掛かっていれば、ラジエター後部の負圧が 大きくなることが期待できます。
 この場合にはラジエターのコアを通る外気の量が増え、放熱効率が向上するでしょう。

 もうひとつ、それを満たすことでボン穴の効果が期待できる前提条件があります。
 それは、ボディ下部に生じた負圧が、ボンネットに開けた穴に干渉しないという条件です。
 「そんなことがあるのか?」と訝られそうですが、横置きエンジンのFF車両などではエンジンが邪魔に なってエンジンルーム上部の空間と、エンジンルーム下部の空間が分断されているものがあるので す。
 その代表例がランエボです。
 ランエボは、制御とギミックの補機類でエンジンルームが埋め尽くされています。ラジエター後方の空 間も極めて僅かで、その僅かな空間もエキマニの凸部で上下に分断されています。
 ですから、ランエボの場合、ボディ下部に発生した走行中の負圧は、ラジエターの下半分にしか作用 することができません。
 ラジエターの上半分には、ボディ下部に発生した走行中の負圧が干渉することができず、コアを外気 が速やかに通れません。
 こういうクルマの場合は、結構いい加減に開けたボンネット穴でも、そこそこの効果が期待できるので す。
 逆に言えば、縦置きエンジンなどではエンジンルームの空間が分断されていませんから、ボディ下部 に生じた負圧が、ボンネットに開けた穴から外気を吸い込んでしまい、ラジエターの放熱効率が落ちて しまいます。

 また、次の条件を満たすものについても、ボン穴の効果が期待できます。
 それは、フェラーリ等のMRスポーツのように、ラジエターのコアを通った空気を全てボンネット上面か ら抜いてしまう場合です。
 マツダのRX−7のチューニングパーツのように、インタークーラーとラジエータの外気導入経路を 別々にした物(通称『Vマウント』)も同様です。

 というわけで、ボンネットに穴を開けるのは、雨水などが浸入してトラブルの原因になるデメリットを考 慮すれば、メリットが少ないのです(特に縦置きエンジンの場合は)。



 なお、以上の理屈は、ある程度以上の速度で走行する場合に限られます。
 峠ドリフトなどのように、比較的遅い速度でエンジンに負担を掛ける走り方をする場合は、出鱈目に 開けられたボン穴でも結構有効です。  走行風が当たらない状況下では、ボディ下部に負圧も生じま せんから、エンジンルームに熱気が篭ります。  これがボン穴から抜けるので、(ラジエタの冷却効率 は上がりませんが)エンジンブロックから放熱されて水温が下がります。
 究極のマル貧冷却チューンのボンネット外しも同じです。
 もちろん、ボンネット外しは、ある程度以上の速度になればエンジンルーム内に設計者の意図しない 空気の乱れが起こるため、ラジエターを外気が通過し難くなります。  当然、冷却効率が落ちて水温 が上昇しますので、“峠ドリフト専用”って仕様でもない限り、止めておいた方が無難です。





 ★余談ですが、折角ですからボン穴加工の注意点を記しておきましょう。

 ボンネットに穴を開けるのであれば、まず第1に、穴の位置が吟味されなくてはなりません。
 走行中、ボディ表面を流れる空気は、ボディ形状の起伏に因って圧力変化を生じています。
 ボンネットも同様で、その部位によって表面に掛かる空気の圧力が、正圧であったり負圧であったり します。
 ボンネットに穴を開けるのであれば、ボディ下部に生じる負圧に負けないくらい強力な負圧を生じてい る箇所に穴を開けなくては意味がありません。
 具体的にいえば、ボンネットの前端に近い場所になります。
 第2に、穴の形状にも工夫が必要です。
 ランエボは、純正でボン穴を開けていますが、4〜6(含むTM)と8型はその周囲(特に進行方向側) が膨らまされています。
 これは、穴により強い負圧を生じさせる有効な手段です(蛇口から流れ出る水道水に、匙の背面を近 付けると流水の軌道が曲がるのと同じ理屈です)。



 ★さらに余談ですが、社外パーツに在りがちなFRP製(FRP製の表一層にだけカーボンを貼った通称“ウェットカ ーボン製”も含む)ボンネットの破損事故について述べておきます。★

 高速道路における法定速度非遵守運転やサーキットにおけるメイン・裏ストレート全開走行などにお いて、FRP製ボンネットが純正ストライカーの部分から千切れて跳ね上がり、フロントガラスを叩き割っ てしまうという事故が起こることがあります。
 これに対して、「走行風に因ってエンジンルーム内が高圧になるから」と捉える向きが少なくないので すが、その発想は正しくありません。
 まず、アンダーパネルでボディ底面を覆っている競技車両ならともかく、通常の市販車はエンジンル ームの底面を覆うものが何もありません。 つまり、フロントグリルから入ってラジエターを抜けた走行 風は、エンジンルーム下方へ抜けてしまうため、エンジンルーム内が高圧になることはできません。
 つぎに、走行風がラジエーターを抜ける際の抵抗は、想像以上に大きく、ラジエターを抜ける空気の 速度は、走行速度の数十%にしかなりません。 つまり、エンジンルーム内の空気の流れは、淀みや 乱流でごちゃ混ぜの状態であり、走行風が猛烈な勢いで流れ込んできているわけではないのです。  (だからこそ、剥き出しのエアクリーナー(遮熱加工無しで使用)は、淀んだ熱気を吸い込んでパワーダウン しちゃうんですよ。 高速でラジエターを抜けた(=あまり加熱されていない)空気がドバドバ流入して来て、な おかつ、それが高圧なら、剥き出しのエアクリーナーはもっとパワーアップしますって(笑))。

 では、何故FRP製ボンネットが高速走行で破損してしまうのでしょうか?
 それは“負圧”と“撓り”の所為です。
 走行する車体によって押し退けられる空気は、車体の形状が変化する部位に於いて正圧になったり 負圧になったりします。 空気が押し退けられる時は正圧になり、逆は負圧になります。 具体的に言 えば、グリルやヘッドライト付近は正圧、ボンネット前方部は負圧、ボンネット後方部は正圧、ルーフ 前方部は負圧、セダンのリアガラス上方部は負圧・・・になるわけです。 そうです!ボンネット前方部 は負圧になるのです。 
 そして、FRPは比較的しなやかな材質であり、さほど強い力でなくても、入力に対して安易に撓りま す。 純正のボンネットストライカーは、ボンネット前方部中央に設けられていますから、FRP製ボンネ ットの前方に負圧が掛かると、ボンネットが撓って左右が僅かに持ち上がります。
 僅かでもボンネット前方が持ち上がれば、ヘッドライトとボンネットの間に隙間が生まれます。  この 隙間に走行風が流れ込むと、走行風の圧力に因って、ボンネット前方部左右が更に持ち上げられてし まいます。  更に持ち上がると・・・やがて、ボンネットとストライカーの結合部が耐えられなくなって破 壊され、ボンネットがヒンジを軸に跳ね上がるのです。
 ですから、ボンネットに穴を開けてエンジンルーム内の圧力を抜いたつもりでも、それ自体は、FRP 製ボンネットの破損対策にはなりません。 
 もちろん、ボン穴をボンネット前方部に開けた場合、ボンネット前方部の負圧になる空気の流れに干 渉しますから、それに因ってボンネット前方部が持ち上げられなくなった場合、FRP製ボンネットは純正 ストライカーのみでも破損しなくなります。  しかし、ボンネット中央部や後方部に穴を開けても、FRP 製ボンネットの破損防止にはならないのです。  それどころか、ボンネット中央部や後方部に穴を開 けると、そこから外気がエンジンルームへ進入し、ラジエターを抜けた空気の排出を邪魔してしまうた め、水温が上がり易くなってしまいます。


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