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オイル及びオイル添加剤

母材の表面硬度を16.8倍にする表面改質添加剤
【問】聞いた所に拠ると、なんでも、エンジンオイルに添加するだけで、母材硬度の実に16.8倍にも表 面を硬化させるオイル添加剤があるとか。
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【答】ねーよ。 そんなもん。
 いやー、このネタ、何処から沸いて出たのか以前から疑問だったのですが、本家Q&AのNo.83140で 添加剤スレが(久々に)白熱してくれたオカゲで、ようやく分かりましたよ。
 ミ●テックという米国製オイル添加剤を日本国内で販売する業者のホームページなんですね。
 以下、無断転記。
 「<前略>〜
 ミ●テック−1にはエンジンやその他機器を損傷させる可能性のある、レジン (樹脂系物質)や固形 物質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、微粒子物 質等は含まれておりません。
 ミ●テック−1はオイルに添加された場合でも、そのオイルを表面処理すべき 金属表面に到達する ための搬送媒体として利用するだけです。  ミ●テック−1が その金属表面を処理すると(イオン結 合して、非常に早いスピードで反応します )その面に於いて摩擦が激減します。
 その金属面は摩擦/腐食/さび等に対して強い複合金属合成物となります。  ミ● テック−1にて 処理された金属表面は弾性特長の低い物となります。 鉄の表面(8620 番)の表面をミ●テック−1 によって処理された物と処理されていないものと を原子顕微鏡によって比較すると、16.8倍も違いま す。  この”硬い(弾性計数の 低い)”金属表面が摩擦係数を引き下げているのです。
 〜<後略>
 何処から突っ込んでイイのか戸惑いますが、語句がグチャグチャです。
 ・・・とりあえず、用語の間違いを箇条書きにします。
(1)「複合金属合成物」ってナニ?  もしかして“金属化合物”のこと?  だとしたら、それは、「他で もない極圧剤が、閃光温度で母材と化合して出来る極めて剪断抵抗の低い(=脆く崩れ易い)腐食層 のこと」なんですが(笑)。
(2)「弾性特長」ってナニ? そんな化学用語無いヨ。
(3)「鉄の表面(8620 番)の表面」ってナニ? “表面の表面”って日本語になってないやん。 特に 8620番という数字に激しく違和感。
(4)「弾性計数」ってナニ? もしかして“弾性係数”の変換ミス? だとしたら、化学用語を根本的に誤 解しているよ。 弾性係数は、数字が大きくなると変形し難くなるの。 だから、「弾性係数の 低い」は、 「軟らかい」の意味です。

 そして、この文章の中で最悪の記述は、「ミ●テック−1によって処理された物と処理されていないも のと を原子顕微鏡によって比較すると、16.8倍も違います。」の部分です。
 コレ、こうやって抽出すると良く分かるのですが、この部分の何処にも「硬さが16.8倍になっている」と は書かれていません。  つまり、何かが16.8倍になっているのですが、その“何か”の正体は分から ないのです。
 私のように他人の文章を常に疑いつつ読む、性根の捻じ曲がった根性悪以外の−−−つまり、普通 の人が−−−この文を読めば、「ミ●テック-1を混入したオイルに晒された金属表面は、硬度が16.8 倍になる」のだと理解するでしょう。 アトピービジネスの松●理論並みに巧妙な詐話です。
 しかし、この文は、2点において硬さに関する記述ではありえません。
 まず、「原子顕微鏡によって比較する」とありますが、電子顕微鏡は硬さを測定する機械ではありませ ん。 波長の関係で、光学顕微鏡では確認し辛い微小サイズを、肉眼が捉えられない波長の短い光を 使って観測する機械なのです。 つまり、電子顕微鏡は、光学顕微鏡と同様に“観る”ことしか出来ない 機械なのです(※注)。
※注:処理された表層の硬さを測定する場合に、ビッカース硬さ測定の際のダイアモンド痕を電子顕微鏡で測定することがあり ます。  しかし、この文の何処にも「ダイアモンド痕を」とは書かれていません。

 次に、母材の16.8倍という数字自体がありえません。
 エンジンブロックは鋳鉄で作られており、その硬さは金属組織のフェライト部位でブリネル硬さ140程 度。  パーライト部位でブリネル硬さ280程度です。
 低い方のフェライト部位の16.8倍であっても、それはビッカース硬さ2500を軽く超えます。
 調質された工具鋼の硬さ上限が概ねビッカース硬さ1000程度ですから、2500という数字は余りにも非 現実的なフィクションです。 というか、測定器での測定は物理的に不可能なのではないでしょうか。

 この文が意味するのは、「電子顕微鏡を使って見比べると、ミ●テック-1によって処理された物は、 処理されていないモノに比べて“何か”が16.8倍になってる」・・・であって、「硬さが16.8倍」ではないと 理解すべきなのです。
 では、何が16.8倍になっているのでしょうか? おそらく面粗度のことではないかと思われます。
 他社のオイル添加剤の広告の幾つかに、添加前と添加後の金属表面を電子顕微鏡を用いて撮影し た画像を載せたモノがあります。 添加前のザラザラした表面状態に比べ、添加後は見違えるように平 滑な表面状態になってる・・・という画像です。 もちろん、それは、
(1)添加剤に因って粘度の落ちたオイルの所為で流体潤滑の維持が困難になり、境界潤滑が起こり やすくなる
 →(2)境界潤滑の際に金属表面の極小な凸部同士が接触する
  →(3)接触に因って極小な凸部が閃光温度に達すると、極圧剤が作用して凸部を剪断抵抗の低い 金属化合物に変える
   →(4)剪断抵抗の低い金属化合物が、凸部同士の接触という剪断に因って取り除かれる
     →(5)凸部が取り除かれることによって金属表面が平滑になる
・・・というカラクリによって生じた結果であって、魔法でも何でもありません。
 別にミ●ティック-1でなくても、極圧剤を大量に含む粘度の低い(あるいはポリマーで粘度を調整して いるために、しばらく稼動すると粘度が低下する)オイル添加剤を使うと、金属表面が平滑になります。
 それが、万歳三唱すべき結果かどうかは別問題なのですが。



 ・・・ってゆーか。
 件の文章は、ミ●テックを製造しているアメリカ本社のコメントじゃなくって、日本の販売会社がホーム ページに書いた文章なんですよね。 だから、読み進む内に購入意欲がビシバシ湧いてくるような催眠 商法的煽り文句がならんでいるんです。  こんなセールストークが、さも真実であるかのように捉えら れ、「オイル添加剤で金属表面の硬度が16.8倍に出来る」などという都市伝説化に至っちゃうのは、根 本的に何かが間違っていると思います。


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