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サスペンション

ダンパーのお仕事
【問】通常、ダンパーの役割は、バネが固有振動数で伸縮する動きを抑えることにあると言われます。   それだけなら、初心者向けのサスセッティングに [ ノーマルスプリング&強化ダンパー ] があるの は何故なのでしょう?
 あまり意味があるとは思えないのですが...
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【答】一般的な自動車工学に於けるダンパーの役割は、ご認識されておられる通り、ボヨンボヨンと伸 縮するバネの抑制です。
 しかし、モーターススポーツに於けるダンパーの役割は、それ以外にもあります。
 ひとつは、「ピッチング/スカットおよびロールのオーバーシュートを抑えること」です。
 別頁でも触れましたが、制動時のノーズダイブ&テールリフト/加速時のノーズリフト&テールダイブ/ 旋回時のロールは、バネ上重量という質量の運動ですので、慣性力を持ちます。
 この慣性力が災いして、瞬間的に荷重移動のオーバーシュートという現象が起こります。

 たとえば、500gまで量れる秤の皿に100gの錘をストンと載せると、秤の針は一発で100gを指すことが 出来ません。
 一旦、数十g余計に振れてから、ブヨンと戻って100g未満の数値を指し、100gの目盛り付近で何度か 振れてから、最終的に100gを指して停まります。
 「一旦、数十g余計に振れた」その瞬間、錘の重さは100gなのに、秤には百数十gの荷重が掛かって いるのです(あくまで一瞬ですが)。

 もし、秤にダンパーが組み込まれていたとしましょう。
 (100gの目盛り付近で何度か振れるのは、バネの固有振動であり、クルマのサスペンションの場合 は、ダンパーがコレを抑えるカタチになります。)

 そうすると、最初に錘が置かれた時、皿の降下速度が抑えられます。
 皿の降下速度が下がれば、一旦多目に針が振れる量(数十g)が小さくなります。

 つまり、たとえば0.5Gで制動した際、計算上で150kgの荷重移動が起こる重心高さ&ホイールベース なクルマを想定しましょう。
 その際、フロントに加わる荷重は75kgの筈ですが、フロントサスペンションがオーバーシュートして縮 むと、(瞬間的にですが)容易に100kg以上の荷重がフロントに掛かります(もちろん、その瞬間にリアの 荷重も100kg以上抜けます)。
 強いダンパーでノーズダイブ&テールリフトの速度を下げれば、オーバーシュートの量が減り、瞬間 的に荷重移動量が75kgを超えても、その度合いは小さくなります。

 さて、強いダンパーでノーズダイブ&テールリフトの速度を下げると、もう一つの面白い現象が起こり ます。

 秤に話を戻します。
 ダンパーが組み込まれていない秤に錘を載せると、 [ 重力加速 ] − [ バネの反撥 ] で皿が降下しま す。
 錘を載せた直後、僅かな時間だけですが秤に錘の重さは少ししか伝わりません。
 一方、ダンパーが組み込まれている秤に錘を載せると、 [ 重力加速 ] −( [ バネの反撥 ] + [ ダン パーの抵抗 ] ) で皿が降下します。
 こちらは、錘を載せた直後からダンパーの抵抗分だけ多く秤に錘の重さが伝わります。

 もちろん、荷重移動は「移動」ですので、秤に錘が乗るように荷重移動した場合、同時に何処かの秤 から同じ重さの錘が取り除かれます。
 ダンパーが組み込まれていない秤から錘を外すと、 [ バネの反撥 ] − [ 重力加速 ] で皿が上昇し ま す。 
 錘を外した直後、僅かな時間だけですが錘の重さの減少分は、秤に少ししか伝わりません。 
 一方、ダンパーが組み込まれている秤から錘を外すと、 [ バネの反撥 ] −( [ 重力加速 ] + [ ダン パーの抵抗 ] ) で皿が上昇します。 
 こちらは、錘を外した直後からダンパーの抵抗分だけ多く錘の重さの減少分が秤に伝わります。 

※ なんだかピンと来ない人もいらっしゃるかも知れませんが、重心高さが変化しない限り、4つのタイヤに掛かる荷重の合計 は、常に車両重量とイコールです。
 荷重移動に拠って何処かのタイヤに多く荷重が掛かれば、同時に他のタイヤから同じ大きさだけ荷重が抜けるのです。 荷 重移動はあくまで荷重「移動」であって、荷重「増」でもなければ、荷重「減」でもありません。

 これがモーターススポーツに於けるダンパーのもう一つの役割です。
 つまり、制動初期や加速初期において、荷重移動量をダンパーの抵抗分だけ上乗せすることによ り、初期応答(レスポンス)を良くすることができるのです。
 (倒立ダンパーが持て囃されるのも、バネ下重量や剛性云々だけでなく、フリクションロスで見かけ上 の減衰力が大きくなることも一要因だったりします)
 もちろん、サスペンションの動きを強く拘束してしまうと、路面への追従性が悪化してしまいますから、 一概に「ダンパーを硬くすれば速くなる」とは言えません。
 あくまで、走行するシチュエーションに拠って変わりますが、 [ ノーマルスプリング&強化ダンパー ]  はクルマの動きが良く分り、それでいてノーマルよりもちょこっとだけ速いという初心者向けの良いセッ ティングの一つなのです。





■■■2007.09.09 追加□□□■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■

 上に書いた
 >錘を載せた直後、僅かな時間だけですが秤に錘の重さは少ししか伝わりません。
 を理解出来ない方がおられるようです。

 本家「教えて&教えます」で、「秤の上にバネ&ダンパーを置き、その上に10kgの錘を載せた場合 に、「ダンパーの減衰力+スプリングの反発力=10kgf で釣り合いながら縮み、スプリングの反発力が 10kgfになったところで停止する」んだと主張するレスがありました。
 オマケに「スプリングが縮もうが反発しようが秤は『スプリングの重さ+10kg』を示すんじゃないの?」 いう匿名スレまであって、コッチは( ゚д゚)ポカーン状態です(笑)。

 いやいや、あのね。
 「ダンパーの減衰力+スプリングの反発力=10kgf」なら、スプリングはそこからビタ1mm縮むことが出 来ないんだけど(笑)。
 10kgの錘を載せた時、「スプリングの反発力<10kgf」なら縮む,「スプリングの反発力>10kgf」なら伸 びる,「スプリングの反発力=10kgf」なら10kgの重さと釣り合って止まる…ですよ
※:ダンパーは、ロッドの稼動速度にブレーキを掛けるだけの存在ですから、ロッドの速度が遅くなれば抵抗が小さくなるため、 「伸びるか縮むか」に関与することは殆ど出来ません。

 つまり、スプリングは「スプリングの反発力<10kgf」の時に縮んでいるんです。

 10kgの錘を置いた瞬間に「ダンパーの減衰力+スプリングの反発力=10kgf」になるというなら、タイ ヤはサスペンションが稼動し始める瞬間から荷重移動量の全てを受け止めることになります。

 スプリングの硬さに関係なく、アッパーマウントに伝わった荷重変化が(サスペンションの稼動に関係 なく)直ちにタイヤへ伝わるという理屈には甚だしい矛盾が生じます。
 上から下への伝達が「直ち」であるなら、当然のことながら、下から上への伝達も「直ち」であるハズで す。
 そうすると、どれほどコンフォートな柔らかいサスペンションであっても、路面の凹凸によるタイヤへの 入力が直ちにアッパーマウントへ伝わることになります。
 ノーマルの2kg/mm程度のスプリングでも、スプリングの代わりに鉄パイプを挟んだノーサス仕様で も、乗り心地が同じということになってしまいます。
 それはもはや“緩衝装置”ではありません。
 
 バネを介するんだから、「伝わる力(釣り合う力)は、そのバネ長さにおけるバネの反発力」ですよ。


 さて。
 ことのついでなので。
 >一方、ダンパーが組み込まれている秤に錘を載せると、
 > [ 重力加速 ] −( [ バネの反撥 ] + [ ダン パーの抵抗 ] ) で皿が降下します。
 >こちらは、錘を載せた直後からダンパーの抵抗分だけ多く秤に錘の重さが伝わります。
 に追加説明をば。

 というのも。
 ヒ☆ミ☆ツの掲示板に書いたら反応がヨカッタので♪

  …と。
 「スプリングが伸び縮みする過程においては、幾何学的な作用としての荷重移動は、その一部しかタ イヤに伝わっていない」
 を御理解頂いた上で。

 次に、ダンパーの減衰力がどのように影響するか?の検証に移りたいと思います。

 ここでは喩えとして、「掃除機のパイプ」に登場願うことにしましょう。

 「掃除機のパイプ」は蛇腹と吸い込み口の間にある「伸縮可能な棒状の部分」です。

 このパイプは太さの異なる2本のパイプが直線上に繋がってできており、細いパイプが太いパイプの 内側へ入り込むことによって長さを調整することが出来ます。

 調整方法は、リング状のネジを緩めてパイプを動かし、任意の長さでリングを締めて固定します。

 このリングを半端に締めると、細いパイプと太いパイプが摺動しながら伸縮することになります。

 緩く締めると弱く摺動し、強く締めると強く摺動します。

 この摺動抵抗(フリクション・ロス)をダンパーの減衰力に見立ててみましょう。

 秤の上に掃除機のパイプを立てて置き、その上に10kgの錘を載せます。

 リングが極端に緩められているとしたら、錘はほぼ自由落下し、パイプが縮み切った瞬間に停止しま す。
 この時、秤が示す数値は、自由落下中にほぼゼロを示し、パイプが縮み切った瞬間に10kgを遥かに 超える数値を示した上で、最終的に10kgを示して止まります。

 リングが強く締められているとしたら、錘はフリクションロスに阻まれながら緩やかな速度で降下し、 パイプが縮み切った瞬間に停止します。
 この時、秤が示す数値は、錘の降下中は「錘の重量」×「フリクションロス」を示し、パイプが縮み切っ た瞬間に10kgを示して止まります。

 サスペンションスプリングが縮んでいる行程中にダンパーが効くと、この喩えでいうところの「『錘の重 量』×『フリクションロス』」だけ過渡状態の荷重が足されることになるんです。

 ですから、、「フロントの減衰力を上げると制動初期時の荷重移動量が少しだけ大きくなる」のです YO。


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