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用品知識いろいろ

やっていけないチューニング

 表題を見た瞬間に「ああ、ノーマルECUでブーストUPとか、ノーマルポンプ&ノーマルインジェクターで タービン交換とか、そーゆー話だな」と推理されたアナタ。
 残念でしたハズレです。
 たしかにそういう改造をすればクルマは壊れます。
 ですが、その故障で被害を被るのはオーナーだけであって、周囲に被害を及ぼすワケではありませ ん。
 パワーアップに必須の出費を下手にケチった結果です。 自業自得。 本人以外、誰も悲しみはしま せん。

 逆に言えば、チューニングによって生じる故障リスクが現実のモノとなった場合に、周囲に被害を及 ぼすような改造は、厳に禁じられなければなりません。

 たとえばブレーキ。
 峠やサーキットを攻めるクルマのブレーキを強化していないドライバーは、ほぼ皆無でしょう。
 最近は、ホイールスポークの隙間から見える大径ローターやビックキャリパーにファッション性を求め る向きもあるようで、どう考えても装備過剰にしかならないワゴン車やワンボックス車両のブレーキに手 が入っていることも少なくありません。
 左様に安易に改造されがちなブレーキですが、改造後の信頼性はノーマルよりも遥かに劣ります。
 いえ、ブレーキ性能が劣るワケではありません。
 熱容量の大きいブレーキローターを用い、より広い摺動面積でブレーキパットを摩擦させ、大きなブレ ーキキャリパーでブレーキパッドの面圧を均一化させ、さらに熱に強い(耐フェード性能に優れた)材質 のブレーキパッドを使うのですから、ブレーキ性能がノーマルよりも劣るとは考えられません。

 私が危険性を訴えるのは、機械としての信頼性です。

 安価なブレーキローターにありがちな不適切な成分を含んだ鋳鋼は歪を生じ易く、高温⇔常温の繰り 返しで割れを生じます。
 また、安価なブレーキローターはコストを抑えるために鋳造後の徐冷時間を短縮しているため、内部 に残留応力があり、高温⇔常温の繰り返しで酷い歪みを生じます
 安価なビックキャリパーは精度が低く、ピストンがスムーズに動かなくなって“齧り”を生じ易く、安いア ルミ材の対抗キャリパーは高い圧力で容易に開いてしまいます。
 対抗キャリパーの強度が余りにも低い場合は、結合部からフリュード漏れが起こることさえあります。
 ブレーキパッドも(さすがに最近は聞きませんが)高熱x高圧に負けて摩材と裏板が剥がれることがあ ります。
 これらの機械的な故障によって唐突に制動力が失われた場合、待っている結果は周囲を巻き込む 大事故です。
 ノーマルのブレーキはたしかにスポーツ走行に対して容量不足であり、ハードブレーキングの繰り返 しで早期に制動力が弱まっていきますが、ちゃんとしたメンテナンスが施されていれば唐突に制動力が 失われることはありません。

 ですから、ブレーキの改造は、実績のあるアフターパーツメーカー製を選択し、十分以上に経験のあ る整備士の手によって交換x取り付けが行われなくてはなりません。

 たとえば、サスペンション。
 実際にその必要性があるかどうか以前のレベルで(主にファッション性を理由に)安易に交換される 足回りですが、純正のサスペンションスプリングに比べてアフターマーケットのサスペンションスプリング は、その材質も熱処理も劣るため、(そう滅多に起こりませんが)走行中に破損(折れる)危険性があり ます。
 走行中にサスペンションスプリングが破損すれば、クルマは進行方向を大きく乱そうとします。
 モータースポーツで鍛えられた運転技術が伴うので無い限り、周囲を巻き込んで大事故に至るでしょ う。

 ですから、サスペンションの改造は安価なノーブランド製品を選ぶことなく、できれば純正品を作って いる会社のアフターパーツや、モータースポーツで実績を重ねているメーカー製を選ばなければなりま せん。
 もちろん取り付けは、十分以上に経験のある整備士が行わなくてはなりません。

 (上の記事と絡みますが)たとえば車高短。
 VIPやワゴニストなどで、車高短の挙句にタイヤが前後から見てハの字になっているクルマがありま すが、あれではタイヤの接地面積が僅かしかありません。
 暴音族にありがちな低速でノロノロと蛇行するだけなら然程危険ではないのですが、もし仮に制限速 度程度で普通に走行した場合、急ブレーキの必要な状況(たとえば歩行者の飛び出しや先行車両の 急制動など)でノーマル車の何倍もの制動距離を走ってしまいます。
 前方に人影が見えたなら撥ね飛ばしてしまうでしょう。 先行車両が急制動したなら強烈に追突してし まうでしょう。
 ハの字タイヤが格好良いという美的感覚自体が理解不可能ですが、まともに走れないようなアライメ ントは危険です。

 たとえば燃料系。
 チューニングで大幅にパワーアップすると、ECUデータの書き換えの他に、燃料ポンプやインジェクタ ーの交換が必要になります。
 でも、これらは基本的に同形状のジョイントパーツを差し替えるだけですので、経験を十分に積んだ 整備士が手順を踏んで(手抜きすることなく)作業するのであればそれほど危険ではありません(逆に 言うと、素人が見様見真似で弄るのは非常に危険)。
 問題はノーマルの燃料配管を変更する改造を施す場合です。
 ノーマルの燃料配管はイイ加減そうに見えて実は巧妙に設計されています。
 まず、燃料フィルターを除いて、基本的に十数年間のメンテナンスフリーに耐えます。
 そして、事故で車体が破損しても余程グチャグチャに壊れない限り、そうそう燃料漏れを起こしませ ん。
 ノーマルの燃料配管に手を加えるということは、この素晴らしい信頼性を失うということを意味します。

 ちょっと話が逸れますが、クルマって結構な頻度で燃えているのをご存知でしょうか。
 実は年間8000台ほどが毎年何らかの理由で火災を起こしています。
 だけど、それで自動車メーカーの責任が問われることは殆どありません
※ 設計上のミスが車両炎上の要因となって、リコールすることもありますが僅かです。
 なぜでしょう?
 それは自動車メーカーの設計や製造以外が原因で出火しているからです。
 放火。
 後付け電装パーツが原因でバッテリーが短絡。 
 ATフリュードなどの燃え易い油脂類が排気管などの高温部に滴り落ちて発火。
 パワーウインドウなどのモーターが過負荷で加熱して周囲の樹脂が発火。。。そりゃもう挙げればキリ がありません。
 これららの車両火災でも [ 何が燃えたか? ] によって、 [ ボヤで済むのか? ] [ 車両炎上まで行っ てしまうのか? ] が決まります。
 もう私が言いたいことが分かってしまったと思いますが、車両火災において漏れたガソリンに火が点く ほど恐ろしいことはありません。

 着火したガソリンは、驚くべき速さで燃えます。
 焚き火へ、コップに半分ほどのガソリンを振り掛けた経験のあるオチャメさんもおいででしょう。 下か ら上に向けて火炎放射器を放ったかの如き火炎にビビった筈です。
 ガソリンを介する車両火災は、初期にあの勢いで燃え上がるのです。
 煙や臭いに気がついて、クルマを停めて避難する時間なんかありません。
 走行中にボンッ!という音を立てて車両が一気に炎に包まれます。
 その状況下でブレーキを踏めるドライバーが何人いるでしょうか?
 まず間違いなく火達磨のクルマが周囲のクルマへ突っ込んで地獄絵巻になります。

 大容量ポンプの代わりに中容量ポンプの2基掛けで、要求供給量の少ない低中速はポンプを片側稼 動にするなんてのは、なかなか理にかなったシステムです。
 この燃料ポンプ改造は、ノーマルの数倍の出力を搾り出すようなハイチューン仕様に採用されていま す。

 水タンクの中に燃料配管を通してガソリンを冷却するというシステムも、攪拌抵抗で過熱したガソリン を冷却することによって要求オクタン価を下げることができるので、パワーアップに貢献します。
 この燃料経路改造は、ゼロヨン仕様のクルマなどに採用されています。 トラクションを掛けるための 錘を水タンクで賄うことが出来るので、ゼロヨン仕様などでは一石二鳥になるチューニングメニューで す。

 最近は大容量でも霧化に優れたインジェクターが販売されていますので、追加インジェクターというチ ューニングメニューは殆ど姿を消してしまいましたが、少し前まで、ハイチューンドターボの燃料増量 は、吸気経路の途中にインジェクターを追加して賄っていました。

 しかし、これらのような燃料配管を大幅に変更するチューニングは、燃料漏れの危険性が格段に増し ます。
 したがって、ストリート仕様に採用されることは稀です。
 (当時は怖いもの知らずで、追加インジェクターをストリート仕様にも使っていました。今考えたら((((( ;゚ Д゚))))ガクガクブルブルです)

 また、空冷フューエルクーラーの増設でガソリンを冷却してからシリンダーへ送るというチューニング もありますが、コッチは更に輪を掛けて(つーか桁違いに)危険です。
 燃料ポンプの2基掛けや水タンクでの燃料冷却などは、トランクルーム内の隔壁付近に並べますの で、配管パーツの品質と取り付けがしっかりしていれば、少々の衝突でも燃料漏れの危険性はありま せん。
 しかし、空冷式のフューエルクーラーの場合は、放熱器(コア)に直接風を当てなければ冷えませんの で、どうしてもラジエターやタイヤハウス前方など、走行風が当たる場所へ放熱器(コア)を配置すること になります。
 放熱器(コア)のガソリンが流れる部分は、薄い真鍮材(もしくは薄いアルミ材)で出来たストロー管の ようなモノですから、少しの応力で容易に破損します。
 つまり、追突事故や出会い頭の衝突事故を起こせば、ラジエター周りがボッコリ凹む程度の損傷で、 放熱器コアが破損しガソリンが噴き出すのです。

 燃料配管の変更を伴うチューニングが絶対禁忌だと言うわけではありませんが、ハイリスクなチュー ニングであるという認識が必要です。
 特に、些細な事故の損傷で容易にガソリン漏れを起こすような配管の変更は、絶対の禁忌です(マジ でシャレになりません)。
 (どうしても空冷式のフューエルクーラーを使いたいのであれば、せめて放熱器(コア)をバルクヘッド 付近に配して、小型の電動ファンで風を当てるようにしてください。 ラジエター付近やタイヤハウス前 方はあまりにも危険です)

 さて。
 以上の説明を読んでどう感じられましたでしょうか?
 クルマは命を載せています。
 そして走るクルマは周囲の他人を巻き込んで大事故を起こす可能性を常に孕んでいます。

 チューニングは面白い・・・YES。
 だけど、
 俺のクルマをどう弄ろうと俺の勝手・・・NO。
 なのです。
 触媒レスで撒き散らされる有毒ガスもイイ加減迷惑ですが、それ以上に周囲を巻き込む大事故に至 り兼ねない改造は、迷惑どころの話ではありません。
 燃料系の話はインパクトが強いので、「燃料系の改造(特に配管の変更を伴うモノ)は怖いな」と記憶 された方が多いと思いますが、ブレーキもサスペンションもアライメントも、今回触れなかったその他の 危険な改造も同じくらい危険なのです。
 火達磨になって焼け死にたい人も、他人を轢き殺して業務上過失致死犯になりたい人もいないと思 います。

 ですから、危険な改造は止めましょう。

 「改造はダメ」ではありません。
 「クルマが壊れるような改造はダメ」なのでもありません。
 「(自分を含む)人を殺したり危めたりしてしまうような改造はダメ」なのです。


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