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正しいステロイド治療法
プロトピック軟膏はステロイド外用剤の代替品となるのか?
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【問】現在脱ステロイド中ですが、全く快方に向かわず発狂しそうです。
かといって折角ステロイドを断ったのですから、今更ステロイドは使いたくありません。 アトピー性皮
膚炎に対する新しい外用薬としてプロトピック軟膏というクスリがあるらしいのですが、これを使っても
大丈夫でしょうか?
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【答】プロトピック軟膏は、現在脱ステロイド状態にあって、その発疹を抑える目的には使えません。
というのも、プロトピック軟膏は、強い免疫抑制効果によってアレルギー反応の暴走を抑える働きが
あるものの、塗った数十分後に耐え難い強烈な痒みを引き起こす虞があるからです。
この痒い発作は、活発な発疹や靡爛や掻破痕がある部位への使用に於いてのみ起こる現象で、健
常な肌、あるいはステロイド外用剤を常用し続けて健常なように見える肌に使用しても起こりません。
また、痒い発作を伴うのは使い始めの数回(数日)だけで、繰り返しプロトピック軟膏を使い続けれ
ば、長くても1週間程度で体が慣れ、痒い発作は起こらなくなります。 しかし、使い始めの数回に発生
する強い痒みは、数時間〜半日程度続くことがあり、それに耐える事は、体力を消耗して体調を崩しか
ねないほど辛いものです。
したがって、使い方としては、まず適度な強さのステロイド外用剤を十分な量&十分な期間使用して
発疹を消し、健常に近い肌に変えてから使用すべきです。 そうすれば痒みの発作に見舞われること
なく、ストロングクラスのステロイド外用剤に近い発疹抑制効果が期待できるようになります(稀に健常
に近い肌でも痒くなることがあります。 でも、その場合は、概ね耐え難いほど強い痒みにならずに済
みます)。
というわけで、貴方のような状態の人にプロトピック軟膏は適していません。
知らないで使うとシャレにならない事態に陥る虞があり、注意が必要です。
ただし、「ステロイド外用剤で一旦ツルピカな肌にしてからであれば、その後ず〜っとプロトピック軟膏
で凌いでいけるか?」と問われれば返答に困ります。
いいえ、プロトピック軟膏が恐ろしい悪魔のクスルだと言うわけではありません。
2ちゃんねるなどの掲示板に見られるような副作用に関する反応は、些か過剰であると思われます。
たしかに、活発な発疹や靡爛、あるいは掻破痕のある広範囲な部位へプロトピック軟膏を大量に使
用した場合、血中濃度が上がって腎障害や高カリウム血症などの重篤な問題が発生する虞が皆無で
はありません。 しかし、それらの重篤な問題は、通常、臓器移植時に拒絶反応抑制薬として注射や内
服で使用した場合に懸念されるものです。
また、16歳未満の児童への使用が制限されている点も、臨床症例が少ないが故の転ばぬ先の杖で
あって、決して毒性が証明されたからではありません。
それでも、プロトピック軟膏の強い免疫抑制効果には、夏の日差しに含まれる紫外線などの強い刺
激によって皮膚癌を発生させる危険性があります。 また、ステロイド外用剤と同様に感染症の危険性
も無視できません。
したがって、プロトピック軟膏使用箇所が紫外線などに晒されないように注意するとともに、入浴時に
超酸性水など無害な殺菌剤で皮膚を殺菌し、日和見感染を避けるよう心掛ける必要があります。
また、薬害とはまったく別に、プロトピック軟膏には常用し辛い短所があります。
ぶっちゃけた話、ステロイド外用剤に比べて薬価がバカ高いのです。
調べたわけではありませんが、5gのプロトピック軟膏を5本くらい処方して貰う時と、10本くらい処方し
て貰う時とでは窓口での本人負担額が、軽く3千円は違ったように思います。 2割の本人負担で5本あ
たり3千円違うということは、もし10割負担ですと1本あたり3千円も掛かってしまう勘定になります。
これは同程度の発疹抑制効果を持つストロングクラスのステロイド外用剤に比べて2倍くらいの価格
です。
腎臓病や高カリウム血症にならないレベルに血中濃度を抑えるため、プロトピック軟膏は1回の使用
量を5g以内、1日の使用回数を2回までに制限するように注意書きされています。 この上限量を使い
続けた場合、1ヵ月の使用本数が5gチューブ60本となりますので、本人の2割負担でも3万6千円です。
これがもしステロイド外用剤なら少し強いランクのものをワセリンで2倍程度に
希釈して使うことができますから、同じ使用量なら金銭負担を1/4に抑えることが可能です。
痒くなってからでは使えない。
かといって常用し続けるにはコスト的に辛い。
また、一応安全性が確認されているとは言え、ユーザーレベルでの極端な使い方に対する不幸な結
果例が何もでていないため、これから長期間に渡って使用する人が実験体になってしまう。
これらの点を鑑みると、ステロイド外用剤を100%プロトピック軟膏へ切り替えてしまうのは賢策ではな
いように思われます。
ステロイド剤は、神経系に作用するクスリ並みに「慣れ」が生じやすく、それ故にインターバルを設け
た使用管理が必須です。 ところが、活発な発疹を内包している肌は数日のインターバルで悪化してし
まいます。 ここに慢性疾患であるアトピー性皮膚炎の治療の難しさがあるのですが、プロトピック軟膏
を併用することで、管理が容易になります。
つまり、数日のインターバル期間をプロトピック軟膏で凌ぐわけです。
適度な強さのステロイド外用剤を十分な量&十分な期間使用して発疹を消し、直ちにプロトピック軟
膏へ切り替えれば、プロトピック軟膏を塗った数十分後に発生する痒みの発作は、ほとんど無しで済み
ます。 その後プロトピック軟膏を数日間使用し続ければ、ステロイド剤に対する体の「慣れ」がリセット
されます。 「慣れ」がリセットされれば、安全にステロイド外用剤が使用できるようになります。
このように、ステロイド外用剤とプロトピック軟膏を交互に使うのが、一番理に適っていると思います。
万一、一番最初にプロトピック軟膏を使った際に痒みの発作があったとしても、今一度ステロイド外用
剤に戻し、あまり日を置かずに再度プロトピック軟膏に挑戦すれば、やがて体がプロトピック軟膏に慣
れて、痒みの発作はでなくなるでしょう。
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