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ドライヴィング理論

(07) ドリフトは本当に遅いのか? 
【問】 インターネット上の掲示板や、雑誌の解説を読むと、「ドリフトが遅いのはタイヤが滑っているロ ス」だと書かれています。
 しかし、その一方で、「ドリフトは旋回の早い段階から立ち上がり方向を向くので、素早く立ち上がるこ とができる」ともあります。
 ドリフトとは速く走るための技術なのでしょうか? それとも単なる曲芸なのでしょうか?
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【答】 ようするにドリフトの理論的解説をしろってことですよね。

 なかなか上手な表現が思い付かないので後回しにしていたのですが・・・ネット上を見回ってみると、 やはりというか何というか大間違い勘違いな思い込み理論で語られるドリフト理論ばかりが目に付きま す。
 どこか、せめて当らずとも遠からずな程度に正鵠をかすめているページでもあれば、無断で「ドリフト については http://・・・.・・・.ne.jp を参照」と書いて誤魔化そうと企んでいたのですが、そうは問屋が卸さ ないみたいです。

 明日(9月17日)から再就職となりますので、HPの更新どころではなくなるでしょうから、長文を綴れ るのもこれが最後と考えて、説明に挑戦してみようと思います。

 まぁ分かってしまえばどうってことないんですよ。
 中学校で習う程度の極々基礎レベルの古典運動物理学の知識で説明できてしまう現象ですからね。
 分からないと思考の迷宮に入り込んでしまいますが。


■俯瞰から捉えたドリフトのヨーイング角速度変化と、スリップアングル変化

 ドリフトとは、現象として捉えた場合、「ヨーイングの先取り」と見なすことが出来ます。

 あるカーブをグリップ走行でクリアするクルマを俯瞰して、ヨーイング角速度の変化を測ったとしまし ょう。
 旋回開始01秒後に、進入の直進路に対するクルマの進行方向は02°(+02°)
     02                       06°(+04°)
     03                       15°(+09°)
     04                       31°(+16°)
     05                       47°(+16°)
     06                       63°(+16°)
     07                       59°(+16°)
     08                       75°(+16°)
     09                       84°(+09°)
     10                       88°(+04°)
     11                       90°(+02°)
という結果が出たと仮定します。
 これは90°のカーブを11秒間掛けて曲がったということなのですが、旋回開始から徐々にヨーイン グの角速度が増速し、31°〜75°まで定常円旋回状態が維持され、75°から徐々にヨーイングが 収束したことを示しています。

 では、このカーブを同じラインで、ドリフト走行で駆け抜けたらどうなるでしょうか。
 旋回開始から各秒毎の車輌の位置(座標)が、グリップ走行とドリフト走行で同じだと仮定しても、ドリ フト走行の各秒毎のヨーイング角速度は、
 たとえば、
 旋回開始01秒後に、進入の直進路に対するクルマの進行方向は05°(+05°)
     02                       18°(+13°)
     03                       36°(+18°)
     04                       48°(+12°)
     05                       58°(+10°)
     06                       68°(+10°)
     07                       78°(+10°)
     08                       85°(+07°)
     09                       88°(+03°)
     10                       89°(+01°)
     11                       90°(+01°)
となるでしょう。
 同じ11秒間掛けて90°曲がっていても、ヨーイング角速度の変化はグリップ走行の場合と
大きく異なります。
 比べると一目瞭然ですが、ドリフト走行では早い時期に速いヨーイング角速度を急激に発生させ、そ れをゆっくり収束して旋回しています。

 これを、旋回円の接線に対する車体の角度(=スリップアングル)として捉えると、
@ グリップ走行は、車体のスリップアングルが定常円旋回状態でθ1を維持するのに対し、ドリフト走 行は、定常円旋回状態でθ1よりも大きなスリップアングルθ2を維持します。
A グリップ走行は、定常円旋回状態に至るまでの経過において、車体のスリップアングルが角度ゼロ から穏やかに増加してθ1となりますが、ドリフト走行は、定常円旋回状態に至るまでの経過において、 車体のスリップアングルが角度ゼロ〜急激に増加して一旦θ2よりも大きい角度θ3となり、そこから収 束してθ2となります。
 平たく言えば、進入で一気に向きを変えるわけです。
B グリップ走行は、車体のスリップアングルが定常円旋回の後に、θ1から穏やかに減少して角度ゼ ロとなって立ち上がりの直進状態に至りますが、ドリフト走行も同様に、定常円旋回の後にθ2から減 少して立ち上がりの直進状態に至ります。 ただし、θ2>θ1ですから、立ち上がりの直進状態に戻る までに変化させなくてはならない車体のスリップアングルは、ドリフト走行の方が大きくなります。

 文字で説明していますので、非常に理解し辛いかと思います。
 ここまでの文章は御理解頂けましたでしょうか?
 御理解頂いたものとして話を進めます(←オイオイ)。

■進入時に、タイヤと路面の摩擦を能動的に活用するドリフト

 上述のAを読むと、ドリフト走行の場合、「進入で一気に方向を変える」とあります。
 これは低中速コーナーにおいてブレーキペダルを踏んだまま、転舵したり、エンジンの回転数を合わ さずにシフトダウン、あるいはサイドブレーキを引いて後輪を一時的にロックさせたり、大きなフェイント モーションによってヨーイングを誘発したりして方向を変えることを指します。 高速コーナーにおいて は、小さなフェイントモーションや速い転舵操作に因ってヨーイングを誘発します。
 これらの操作に因って、クルマは一時的にスピンモードへ突入しますが、そこで発生したテールスライ ドはタイヤと路面の強い摩擦ですから、大きな摩擦熱を発生させ、クルマの運動エネルギーを熱エネル ギーに変換させます。
 つまり、進入で大きなテールスライドを生むドリフト走行は、それだけでブレーキ操作とは別の制動効 果を生むのです。
 ですから、ある進入速度でグリップ走行の限界となるコーナーがあっても、進入時のテールスライドで 減速する分だけ、ドリフト走行の方が速い進入速度が許されることがあります。
 具体的に言えば、例えば定常円旋回状態部分の限界速度が70km/hの場合に、グリップ走行だと進 入時の制動開始直前の速度が100km/hで精一杯だとします。
 この場合、100km/hから直進状態で制動し、例えば80km/hまで速度が落ちてから旋回制動によっ て70km/hまで車速が落ちているのだとしましょう。
 これがドリフト走行なら、定常円旋回状態部分の限界速度が70km/hの場合に、進入時の制動開始 直前の速度は100km/hよりも速くすることができます。
 もし、進入時の制動開始直前の速度が110km/hだとして、直進状態での制動によって90km/hまで しか減速できなかったとします。
 グリップ走行での進入時の旋回制動では速度が落ちきらず、定常円旋回状態部分の速度が70km/ hを超えてしまうでしょう。
 しかし、先述の通り、進入時にテールスライドさせると、路面とタイヤの間に大きな摩擦熱が発生して クルマの運動エネルギーを消費してしまうので、車速が落ちます。
 上手くいけば、進入時の制動開始直前の速度が110km/hであっても、定常円旋回状態までに70km /hまで減速することが可能になるのです。
 これは、
 [テールスライドによって発生する摩擦熱] > [旋回制動によって発生する摩擦熱]
この不等式が成り立つ場合に限り、ドリフト走行の方がグリップ走行よりも高速で進入することができま す。
 タイヤの負荷を無視するのであれば、この点でドリフト走行はグリップ走行よりも勝っていると言える でしょう。

■タイヤと路面との間に生じる「滑り」によって旋回能力が落ちるドリフト走行。

 リアタイヤが横滑りすることによって路面とタイヤの間に大きな摩擦熱が発生すると、運動エネルギ ーが消費されるので車速が落ちます。 運動エネルギーが消費されるがままにしていると、どんどん車 速が落ちて行き、最後には止まってしまうでしょう。 そこで、リアタイヤに駆動力を与え、加速すること によって摩擦熱による減速を相殺する必要が生じます。
 つまり、 曲芸的なドリフト走行で、定常円旋回状態になってもリアタイヤが空回りしているのは、リア タイヤに駆動力を与え、加速することによって摩擦熱による減速を相殺しているのです。
 ただし、グリップサークルという概念が理解できていればお分かりの通り、旋回中のタイヤに駆動力 を与えるということは、横方向のグリップ力を低下させることを意味します。
 したがって滑っているタイヤへ徒に駆動力を与えることは、横方向のグリップ力を低下させ、横滑り速 度を加速してしまう可能性があります。 
 空回りによる接地面の滑りも、横滑りによる接地面の滑りも同じことなのですが、そのような状態に陥 ったタイヤは、滑りによって摩擦熱を生じるだけで能力を使いきっています。
 したがって、そういう状態のタイヤは、グリップサークルの大きさが極端に小さくなっています(※注 1)。
 グリップサークルが極端に小さくなれば、発生し得るコーナーリングフォースも小さくなります。
 リアタイヤのコーナーリングフォースが小さくなっているにも関わらず、フロントタイヤのコーナーリング フォースが十分に発揮されていれば、ヨーモーメントが過大になってスピンしてしまいます。
 したがって、リアタイヤのコーナーリングフォースが小さくなれば、それに合わせてフロントタイヤのコ ーナーリングフォースも小さくせざるを得ないのです。
 フロントタイヤは、横滑り角を小さくすることで、コーナーリングフォースを小さくします。
 実践的に言えば、ハンドルの転舵量を減らしてフロントタイヤの横滑り角を小さくするのですが、ドリフ ト状態ということは、車体にスリップアングルがついていますので、
 [フロントタイヤの横滑り角] = [転舵によるフロントタイヤの舵角] + [車体のスリップアングル]
となっています。
 加えて、後輪駆動車の場合、空回りしているリアタイヤに比べ、駆動力の掛からないフロントタイヤは たとえ同じ荷重でも有効なグリップサークルの大きさが違います。
 したがって、
 [空回りするリアタイヤに合わせた操舵量] = [フロントタイヤの横滑り角] − [車体のスリップアング ル] − [前後輪の摩擦円の差]
 となり、各々の数値如何によって、運転席から見た操舵量が旋回方向とは逆になってしまうことがあ ります。
 それがつまり、「フルカウンター」と呼ばれる逆ハン状態なのです。
 決して某嘲笑カシラモジ漫画が言うような「ノーズがインへ入りすぎるのを戻す」行為ではありません。

 さて、もはや言うまでもないことと存じますが、上述のようにリアタイヤが激しく横滑り&空回りし、その リアタイヤに合わせてカウンターステアをあてている状態のクルマは決して速くありません。
 リアタイヤの小さなコーナーリングフォースに合わせて、フロントタイヤのコーナーリングフォースを小 さくしているのですから、全輪のコーナーリングフォースの総和は非常に小さなものとなります。
 コーナーリングフォースは求心力ですから、小さなコーナーリングフォースでは大きな遠心力(※注2) に拮抗できません。
 遠心力は速度の2乗に比例しますから、小さな遠心力にしか拮抗できない小さなコーナーリングフォ ースでは、遅い速度でしか旋回できないのです。

 では定常円旋回の部分において、「深いドリフトアングルで速いドリフト」は実現不可能なのでしょう か。
 いえ、クルマ次第では、深いドリフトアングルと速いドリフトが両立可能です。
 グリップ状態でのリアタイヤのグリップサークルを異常に大きくしておくことです。
 リアタイヤが横滑り&空回りで、グリップサークルの大きさが小さくなってしまうのであれば、小さくなる 分を見越して大きなグリップサークルを用意してやれば良いという理屈です。
 しかし、そのようなクルマは、ドリフト開始時点の段階でドライバーの手を煩わせます。
 進入時に直進状態の制動から、テールスライドをさせることがドリフトの開始となりますが、リアタイヤ のグリップサークルが異常に大きい場合、生半可な姿勢制御ではテールスライドしません。
 旋回方向とは逆方向へ一旦切り込む「振り返し」などのワザは、操作にある程度の時間を要してしま いますので、そこで発生するタイムロスも問題となります。
 更に言えば、異常に大きなグリップサークルを生み出せる超鬼ハイグリップなタイヤが用意できるの であれば、前後輪にそのタイヤを履かせてグリップ走行した方がもっと速く走ることができるのです。
 ですから、前後輪にしょぼいタイヤを履いてグリップ走行するライバルを、後輪に超鬼ハイグリップな タイヤを履いて深いドリフトアングルでドリフト走行する貴方が抜き去ることができると言うだけの話でし かありません。

 さて、深いドリフトアングルでの高速コーナーリングは諦めるとして、浅いドリフトアングルならドリフト 走行に勝機はあるのでしょうか?
 結論から言えば、勝機はありません。  ただ、負けない速さを得ることはできます。

 旋回中のクルマはただ単にコーナーリングフォースによって、遠心力と釣り合って走行ラインに留まる だけではありません。
 前後輪の[発揮する求心力]と[負担する遠心力]の差によってヨーイングしなければならないのです。
 旋回中のクルマは常に
 [フロントタイヤの発揮する求心力] −[フロントタイヤの負担する遠心力] > [リアタイヤの発揮する求 心力] −[リアタイヤの負担する遠心力]
ですから、
 @ 前後輪の負担する重量バランスが50:50の場合、フロントタイヤはリアタイヤよりも少しだけ大 きな求心力を発揮しなくてはなりません。
 逆にいえば、リアタイヤは少しだけ余裕があるので、ほんの少しなら滑らせてもグリップ走行との速度 差は出難いという理屈になります。
 A 前後輪の負担する重量バランスが60:40など、前輪の負担する質量が大きい場合、遠心力は 質量に比例しますから、フロントタイヤはリアタイヤよりもかなり大きな求心力を発揮しなければなりま せん。
 逆に言えば、リアタイヤはかなり余裕があるので、若干なら滑らせてもグリップ走行との速度差は出 難いという理屈になります。
 B 前後輪の負担する重量バランスが40:60など、後輪の負担する質量が大きい場合、遠心力は 質量に比例しますから、リアタイヤはフロントタイヤよりもかなり大きな求心力を発揮しなければなりま せん。
 ということは、リアタイヤは横方向のグリップ力を最大限に発揮する必要があるので、リアタイヤを若 干なり滑らせてしまっては、グリップ走行と大きな速度差が生じてしまうという理屈になります。
 つまり、多くのFRとほとんどすべてのFFにおいて、若干テールスライドさせる程度であれば、定常円 旋回の部分でグリップ走行に引けは取らないということになります。
 先に述べた通り、
 [テールスライドによって発生する摩擦熱] > [旋回制動によって発生する摩擦熱]
この不等式が成り立つ場合に限り、ドリフト走行の方がグリップ走行よりも高速で進入することができる のですから、
 [テールスライドによって発生する摩擦熱] > [旋回制動によって発生する摩擦熱]
が成り立ち、尚且つ前後輪の負担する重量バランスが60:40など、前輪の負担する質量が大きいク ルマの場合は、前後輪の負担する重量差以上にリアタイヤを滑らさず、定常円旋回部分でグリップ走 行と同程度の車速を維持できるのであれば、少なくとも進入から定常円旋回部分の終わりまでの区間 タイムは、ドリフト走行に軍配が上がるでしょう。

■立ち上がりで不利なドリフト

 さて、進入から定常円旋回を終えれば、あとは速やかに加速してコーナーから脱出しなくてはなりま せん。
 一般に、「ドリフト走行は、クルマの方向を早く変えているので、コーナーから素早く立ち上がることが できる」と考えられています。
 果たしてそうでしょうか?
 よく考えてください。
 たしかにドリフト走行では、クルマは進入の段階で大きく向きを変えます。
 私が挙げた例でも、グリップ走行がコーナーリング開始から4秒後の段階で、進入方向に対して3 1°の角度になっているのに比べ、ドリフト走行では48°と大きな差が付いています。
 立ち上がりの部分でも、グリップ走行が、進入方向に対して+16°→+9°→+4°→+2と速や かに収束させるのに比べ、+7°→+3°→+1°→+1°と僅かに収束させるだけで済んでいます。
 そう考えれば、俗説通りなのですが、実はこれは錯覚なのです。
 実は、立ち上がりの際に行われなければならない「角度の収 束」とは車体のスリップアングルの収束なのです。
 旋回中に付いている車体のスリップアングルを収束なせなければ直進できません。
 コーナーリングのラインを曲線として捉えた場合、車体のスリップアングルは曲線の接線に対する角 度となります。
 もちろん、曲線の接線に対する角度は旋回中殆どの地点で、ドリフト走行の方が大きい(いうまでもな く、進入開始時点と、立ち上がり完了時点は、ドリフト走行、グリップ走行ともに曲線の接線に対する角度がゼロになります) ですから、ドリフト走行はコーナーリング終盤において、(車体の)大 きなスリップアングルを収束させつつ立ち上がらなくてはならない のです。
 ところが、(車体の)大きなスリップアングルを収束させる方法が、立ち上がり加速を阻みます。
 後輪駆動車が(車体の)スリップアングルを収束させる方法はふたつです。
 ひとつはフロントタイヤのスリップアングルを減らし、フロントのヨーモーメントを小さくする方法。
 しかし、もしフルカウンター状態になっているのであれば、それ以上スリップアングルを減らすことがで きませんから、これは使えません。
 もうひとつは、リアタイヤのコーナーリングフォースを増やしてリアのヨーモーメントを大きくする方法で す。
 でも、リアタイヤのコーナーリングフォースを大きくするって・・・そうです、空回りしている後輪への駆 動力を減らしてリアタイヤをグリップさせるしかないのです。  ということは・・・立ち上がりにかけて加 速したいにもかかわらず、アクセルを緩めて車体のスリップアングルが収束するのを待たなくてはなら ないのです。
 ですから、ドリフト走行は立ち上がりにおいて非常に不利な技術といえ ます。

■では速いドリフトは夢物語なのか

 ここまでの説明で速いドリフト信奉者の夢は打ち砕かれてしまったようです。
 しかし、本当に「速いドリフトは夢物語なのでしょうか」。
 いいえ、情況は非常に限られますが、グリップ走行よりも速いドリフト走行はありえます。
 それは前述した「進入時の制動効果」が最大限に発揮されるようなコーナーの場合です。
 たとえば、奥で曲率が小さくなる(奥がキツイ)複合コーナーにおいて、グリップ走行は道なりに旋回制 動することが非常に困難です。  なぜなら、高速の旋回制動となる進入部分で著しい前荷重状態にな ると、リアの荷重が抜けて不安定になります。  その状態から更に操舵量を増やすと、荷重の抜けた リアが滑り出してしまいます。 フロントタイヤは高荷重なので滑り出しませんが、この滑り出さないフロ ントタイヤの抵抗を軸にしてリアタイヤが滑ってしまうので唐突にスピンモードに入ってしまうのです。
 一方、ドリフト走行では、横方向に滑るタイヤと路面の摩擦熱が運動エネルギーを奪い制動となりま すから、絶妙なブレーキコントロールができるのであれば、タイヤを滑らしつつ道なりに旋回制動するこ とが可能です。
 もちろん、後輪を滑らすだけでなく、前輪も滑らすことでより大きな旋回制動力を得ることができるでし ょう。
 この時のドリフトコントロールは、前輪は慣性力によって横滑りしつつもある程度回転して進行方向を 定め、後輪は慣性力と駆動力で横滑りし、車速を摩擦熱で消費しつつ駆動力で斜め前へ進むという芸 当になります。
 進入からクリッピングポイントまで前後輪共滑りながら旋回ラインを描いているドリフトですね。
 このようなドリフトであれば、グリップ走行よりも速いでしょう。
 文字にして書くと神業のようですが、『D1グランプリ』などでモニター越しに観ても「速いっ!」と思うド リフトはこのようなドリフトになっています。

 ちなみに、余談かも知れませんが、こうゆう速いドリフトに失敗すると痛い結末に繋がります。
 フットブレーキでは止まれない速度で進入し、タイヤの横滑りで減速させつつ旋回するのですから、そ れが成立するスイートスポットが非常に狭いものです。
 ちょっとしたチョンボで減速しきれず、尚且つ旋回方向へクルマを運ぶことができずにコースアウトし てしまいます。
 普通の人は、「理論上、グリップ走行よりも速いドリフト走行が存在する」と知っただけで満足し、ゆめ ゆめ実走行で試そうとは思わない方がよろしいでしょう。
 とくに公道でしくじると結果は半端じゃありませんから。


※注1:正しく言うと、「ある瞬間の荷重におけるグリップサークルとは、『タイヤの接地面が生み出し得 る摩擦損失の最大容積』ですから、空転・横滑りをしているタイヤは、接地面の滑り摩擦熱に容積を占 領されてしまい、実有効容積が残らない」となります。

※注2:古典運動物理学上「遠心力」などというものが存在しないことは百も承知で遠心力という言葉を 使っていますから、ツッコミ不要です(笑)。  詳しくは検索して物理学系のホームページを参照して下 さい。  図解入りで分かり易いのは
http://nkiso.u-tokai.ac.jp/phys/matsuura/lecture/general/presentation/Centrifugal/Centrifugal.files/ frame.htm
かな(他にも色々とあるでしょうが)。
 ここで言葉で説明するとしたら、やはりクルマを例に挙げるのが分かり易いでしょう。
 旋回中のクルマに乗っていると、身体が旋回円の中心とは逆方向に引っ張られるように感じます。
 これを遠心力と称しているのですが、実は便宜上言葉を当て嵌めているだけで、遠心力という物理現 象は存在しません。
 タイヤと路面の接地面に発生する摩擦力の影響によって向心力が発生すると、慣性の法則に従って 直進しようとする物体(身体)はおいてきぼりを食らいそうになります。  この「おいてきぼりを食らう感 じ」が遠心力の正体です。


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