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ドライヴィング理論

(09) 「ドリフト中のクルマってのはアンダーステアなんだよ」
【問】 漫画『頭文字D』の中に、「ドリフト中のクルマってのはアンダーステアなんだよ」という台詞があり ました。
 テールスライド状態ってオーバーステアではないのですか?
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【答】 本気でドライヴィングテクニックに取り組みたいのであれば、あの漫画は読まない方が身の為で す。
 現実の運転とは全く関係がありません。 ドラゴンボールの【かめはめ波】やアストロ球団の【魔球】を 信じる人はいないでしょ?  それと全く同次元で真に受けてはイケナイ空想物語なのです。
 
 とはいえ、一応実在するクルマが登場し、実在する運転テクニックが登場する(ただし、実在しない運 転テクニックも登場します)以上、そこで吐かれた台詞には何らかの意図があるハズです。
 では、何故あのような台詞が出てきたのでしょうか?
 考えられる要因はふたつあります。
 ひとつは、漫画の中の発言者が無能だという設定。
 たしかに、発言者は主人公の父親や、ロータリー兄のような上級者として扱われていません。
 クルマを操るシーンさえ用意されていないオブザーバーです。
 しかし、問題の台詞は、発言者よりも更に格下の峠初心者達の間違った会話に(心の中で)ツッコミ を入れる形で吐露されます。
 間違った会話へのツッコミが間違っていたのでは、作者の意図は通じません。
 問題の台詞に対するフォローもされていない点から判断しても、作者は正しいと思って問題の台詞を 語らせたのだと考えるのが妥当でしょう。

 では、ふたつめ。
 ひょっとしたら作者は、「定常円を旋回中のクルマが加速した際に、リアが外へ逃げて車体が内側へ 巻き込み、旋回半径が小さくなるのがオーバーステア」という解説文を、間違って理解しているのではな いでしょうか?
 「車体が内側へ巻き込み、旋回半径が小さくなる」のがオーバーステアであるとするならば、「内側へ 巻き込んだ車体をカウンターステアで外側へ向かわせ、旋回半径が小さく成り過ぎないように調整する のが『ドリフト走行』」だという考えは、一応整合が取られているように見えます。
 そして、問題の台詞の直前に語られた主人公の台詞から判断しても、どうやら作者はそう考えている ものと思われます。
 しかし、その考えは間違っています。
 「ドリフト走行」は、曲がり過ぎを調整する技術ではありません。
 そもそも、曲がり過ぎると言う現象自体が、限定された条件の下しか起こり得ないのです。
 ひとつは円旋回の速度が限界速度よりも遥かに遅い時に、加速に因って軌跡の接線に対する車体 の角度(横滑り角)が大きくなった場合。  この場合は、単純に求心力が増大するため、軌跡がそれ までの旋回円の内側へ入ります(本来の自動車用語としての「オーバーステア」)
 もうひとつは、円旋回の速度が限界速度に近い時に、テールスライドに因って生じたタイヤと路面との 摩擦熱がクルマの運動エネルギーを消費して、車速がその旋回の限界速度よりも遥か遅くまで減速し た場合。  これは、ようするにテールスライドしてスピードが落ちたから、より小さな旋回半径で曲がれ てしまうだけの話です。
 ですから、著しいオーバースピードで旋回しようと試みたのであれば、リアが外に逃げて車体が内側 へ巻き込もうが、フロントが外へ逃げようが、関係なしにクルマは期待した旋回ラインに乗ることができ ずコースアウトしてしまいます。

 さて、この「ドリフト中のクルマってのはアンダーステアなんだよ」に対する解釈ですが、本家掲示板に 「フロントも滑っているのでハンドル切った量よりアンダーが出てるって言いたいのでは?」との書き込 みがありました。
 なるほど、なかなか鋭い発想です。
 しかし、この論に従うのであれば、ちょっとした齟齬が生じてしまいます。
・ Aというクルマがあるシチュエーションで急激なスピンに陥ったと仮定します。
・ 同じシチュエーションでBというクルマが穏やかなスピンに陥ったとすると・・・
 Aから見てBはアンダーステアだということになってしまうのではないでしょうか?
 つまり、何らかの状態をニュートラルステアと定義した上で、比較されなければなりません。


 では、「ドリフト中のクルマってのはアンダーステア」なんでしょうか?それとも「ドリフト中のクルマって のはオーバーステア」なんでしょうか?
 そもそものUS/OSの定義に立ち返れば、「定常円旋回から増速した際に、操舵量を減らす 側へ修正しなければスピンモードに入ろうとするのであれば、その スピンモードへ入ろうとしている状態を指してオーバーステア、操舵量を 増やす側へ修正しなければドリフトアウト(クルマが適切に向きを変えることが出来なくて旋回軌道が孕む)に入ろう としているのであれば、ドリフトアウトへ入ろうとしている状態を指してアンダーステア」と称するのです。
 であるならば、カウンターステアを当てて定常円旋回して いる状態は、カウンターを当てていなければスピン している → わけですから、「ドリフト中のクルマってのはオーバーステア なんだよ!」と解釈するのが適切でしょう。
 というか、それ以外の解釈は成立しないと思います。



■■■ 補 稿 □□□■■■■■□□□□□■■■■■□□ 2004.09.18 ■■

 さて、上に綴った薀蓄に「異議あり!」というメールを頂戴しましたので、返信と併せて掲載させ て頂きます。

> あとドリフト中の車は基本的にアンダー のところで主人公の仲間たちは
> 最初テールスライド(パワースライド)=ドリフトと思っていましたが主人公が
> いっているのは4輪ドリフトの場合のことです。たしかにテールスライド状態だと
> オーバーかもしれませんが4輪だとどうなるのでしょうか。

・・・パワースライドでも四輪ドリフトでも同じことです。
 「同一コンディションの路面上において、舵角を固定したまま一定の半径を維持しつつ、円周上を一 定速度で周回する車両を想定する。」
 →「このクルマが増速した場合、
(1)舵角を増さなければ、軌跡の接線に対する車両の角度が不足して求心力が低下 → 求心力の低 下に因って半径が孕み、円から離れてしまう状況を『アンダーステア』。
(2)舵角を減らさなければ、軌跡の接線に対する車両の角度が増加して 
 →@:(旋回中の速度が物理限界よりも随分低い場合)求心力が過大となって軌跡が円の内側に入
 →A:(旋回中の速度が物理限界に近い場合)過大な横滑り角により求心力が低下して、スピンしな がら円の外側に飛び出す
   ・・・状況を『オーバーステア』。
と称するのです。
 ですから、カウンターステアを当てて(つまり、舵角を減らして)前後輪の求心力バランスを取っている 状態は、(もし舵角を減らしていなければスピンしてしま うので)パワースライドであろうが、四輪ドリフトであろうがどちらも 『オーバーステア』と呼ばざるを得ないのです。


■■■ 補 稿 □□□■■■■■□□□□□■■■■■□□ 2005.06.19 ■■

 本家掲示板において、某氏が「アンダーステア」を「フロントタイヤが横滑りすること」と定義して「ドリフ ト中のクルマってのはアンダーステアなんだよ」論を支持していましたが、この理屈は用語の使い方が 無茶苦茶です。
 「フロントタイヤが横滑りすること」が「アンダーステア」なら、当然のことながら、「リアタイヤが横滑り すること」が「オーバーステア」の意味になります。
 ということは、四輪ドリフト状態は前後輪共に横滑りしているのですから、フロントタイヤ側でアンダー ステアが発生し、リアタイヤ側でオーバーステアが発生していることになります。
 アンダーステアかオーバーステアか、どっちやね ん?ってツッコミたくなりますよね。
 「アンダーステア」は「フロントタイヤが横滑りすること」ではありません。 あくまで「(限界速度よりも遥 かに遅い速度で)一定の舵角を維持して定常円を旋回している車両を仮定します。 その車両が増速 した際に、舵角がそのままでは(相対的に)前輪の求心力が不足して、軌跡が定常円からどんどん離 れて行くのがアンダーステア」なのです。


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