更新の際に構造を変える事があります。 構造を変えるとアドレスが一から再配分されますので
ブックマーク等でお気に入りのページに飛んだ際に、目的と違うページが表示されることがあります。
その場合は画面一番下の [ TOP ] からトップページへ移動して、トップページから
目的のページへ移動してください。 お手数ですがよろしくお願いいたします。


ドライヴィング理論

 (11) なんでFRはドリフトが持続するのですか
【問】 FFはドリフトの持続ができないのに、なぜFRはドリフトが持続できるのですか。
 FFでもリアを360度操舵可能なタイヤにすればおしりを振り続けられると思いますが、カウンターを あてた状態での持続は不可能だと思います。
 なぜFRがカウンターをあてたままドリフトが半永久的に持続できるのか不思議でたまりません。
 教えてください。
 ※ 折角なので原文ママ

■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■□□□□□■■■■■ 

【答】  どういう状態を指して“ドリフト”と呼ぶかに由って説明内容が変わってしまうのですが、とりあえ ず皆さんが大好きな「リアタイヤからもうもうと白煙を上げながら、フルカウンターで旋 回している状態」のことを、ここでは“ドリフト”と呼ぶことにします。

 とはいえ、これから述べる内容は、ここまで(01〜10)の内容を再びなぞるだけでしかありません。   逆に言えば、理解した理論を他の事象に当て嵌めて思考できる方であれば、これからの説明は不要で す。  既に「なぜFRはドリフトが持続するのか」解っておいででしょう。
 そこで今回は特別に、これまでの文章から一変して、ドラテク関連の専門用語を出来るだけ省いて説 明するように努めてみることにします。
 ただし、それゆえに自動車工学や古典運動物理学的に正鵠を期せない記述になっている箇所が幾つも在ります。  その点 は、予め御了承ください(陳謝)。



 さて、ドリフトの話に入る前に、まずは直進しているクルマについて検証してみましょう。

 ハンドルを真っ直ぐに保っている限り、外乱を受けないクルマは直進します。
 この時、もし魔法でクルマのタイヤを4輪とも事務椅子の脚に付いているようなキャスターに換えたと したらどうなるでしょうか?
 路面が磨いたガラスのように平滑で、横風などの外乱となる要素がなければ、クルマはそのまま直進 し続けるでしょう。
 なぜだか判りますよね。
 そうです。 クルマは慣性の力で直進しているからです。

 では、再びキャスターではなくタイヤを装着したクルマに話を戻します。  もちろん、4輪ともマトモな タイヤを履かせます。
 直進しているクルマのドライバーがハンドルを切ったら、まず何が起こるでしょうか?
 ハンドルを切ると、フロントタイヤが進行方向に対して角度を持ちます。
 進行方向に対して角度を持ったフロントタイヤは、進行方向に対して斜めの方向へ転がろうとしま す。
 ハンドルを右に切ったのであれば、フロントタイヤは進行方向に対して右へ転がって行こうとするわけ ですね。

 前輪が右方向へ進むと、クルマのボディが進行方向に対して斜めになります。
 クルマのボディが進行方向に対して斜めになると、リアタイヤが進行方向に対して斜めになります。
 そうすると今度は、リアタイヤも進行方向に対して斜めの方向へ転がります。
 右へ移動したフロントタイヤに引っ張られて、クルマのボディが進行方向に対して斜めになったのです から、リアタイヤが転がっていく方向も右です。

 この時、フロントタイヤが進行方向に対して成す角度は、
 [ハンドルを切って変わった向き]+[クルマのボディが進行方向に対して斜めになった角度]
 です。

 一方、リアタイヤが進行方向に対して成す角度は、
 [クルマのボディが進行方向に対して斜めになった角度]
 だけです。

 つまり、フロントタイヤの方がリアタイヤよりも横移動量が多いワケですね。

 クルマが旋回する動きを衛星の公転に喩えるなら、この“フロントタイヤの方がリアタイヤよりも横移 動量が多い”時のクルマの動きは、衛星の自転に相当します。 この例では、ハンドルを右に切ってい ますので、クルマの自転運動は俯瞰して「時計方向」になります。

 さて、こうして旋回しているクルマのリアタイヤを、魔法で突然に、事務椅子の 脚に付いているようなキャスターに換えたとしたらどうなるでしょうか?

 前輪は右へ移動しますが、キャスターの後輪は慣性の従って進行方向へ真っ直ぐに突き進もうとしま す。
 前述の通り、後輪がタイヤならリアタイヤが右へ移動するためにクルマはゆっくりと自転しますが、後 輪がキャスターになってしまうと、後輪が慣性に従って真っ直ぐに突き進んでしまうため、前輪と後輪の 進行方向が異なってしまいます。
 タイヤの前輪は右方向へ、キャスターの後輪は慣性方向へ移動するため、クルマの向き(=進行方 向ではないことに留意!)は、やがて旋回円の中心を向き、その後には、キャスターの後輪がタイヤの 前輪を追い抜いて、クルマの向きが進行方向と逆になってしまいます。
 この、クルマの向きが時計方向に急回転する動きにも、(直進する動きとは別の)慣性が働きますか ら、自転する慣性質量を減衰し切れなければ、クルマはスピンしてしまうでしょう。



 では次の思考実験です。
 後輪をキャスターではなく、グリップ力の弱いタイヤに換えるのだとしたら、どうなるでしょうか?
 これも本質的には、キャスターの場合と変わりません。
 フロントタイヤが右に移動してクルマのボディが進行方向に対して斜めになっても、グリップ力の弱い リアタイヤは強い力で横に移動することが出来ないからです。
 クルマのボディが進行方向に対して斜めになっても、弱い力でしか横方向に移動できないリアタイヤ は、慣性に従って突き進んだキャスターの時と余り大差ない軌跡を描こうとします。  そのため、強い 力で右へ移動するフロントタイヤをそのままにしていると、クルマはスピンしてしまいます。



 はい、ここからが本論です!

 では、後輪を弱いグリップ力しかないタイヤに換えて旋回していて、フロントタイヤばかりがイン側へ 入り込みスピンしようとした場合、どうすれば良いのでしょうか?
 答えは簡単ですよね。 フロントがたくさん横移動して、リアが少ししか横移動しないからスピンするの ですから、リアの横移動量が増やせない以上、フロントの横移動量を減らすしかありません。  具体 的には、切り込んだハンドルを適切な量だけ戻してやれば良いのです。
 さて、先に述べた通り、フロントタイヤが進行方向に対して成す角度は、[ハンドルを切って変わった 向き]+[クルマのボディが進行方向に対して斜めになった角度]です。  ということは、クルマのボディ が進行方向に対して斜めになった角度が非常に大きかった場合、ハンドルを真っ直ぐまで戻しても尚、 フロントの横移動量がリアのよりも過大という事態が起こり得ます。  なぜなら、ハンドルを真っ直ぐに した場合、前後輪の向きは同じになりますが、クルマのボディが進行方向に対して斜めに成っている 分、タイヤは前も後ろも斜め横へ移動しようとします。  フロントタイヤのグリップ力がリアタイヤのグリ ップ力を遥かに凌いでいる場合、ハンドルを真っ直ぐにしてもフロントタイヤの横移動量がリアタイヤよ りも過大になってしまうことがあります。
 そういう場合は、もちろんフロントタイヤを更に戻すことになります。
 最初に右へ切ったハンドルを、真っ直ぐを超えて戻すのですから、左にハンドルを切っているのと同じ 状態になります。



 でわでわっ!
 普通にちゃんとグリップするタイヤでも、何らかの方法でリアタイヤ のグリップ力を小さくしたら、どうなるでしょうか?
 後輪を弱いグリップ力しかないタイヤに換えて旋回するのと、同じことになりますよね。
 それでも尚旋回するためには、切り込んだハンドルをたくさん戻さなくてはなりません。

 そうですっ!
 普通にちゃんとグリップするタイヤでも、何らかの 方法でリアタイヤのグリップ力を小さくしたら、切り 込んだハンドルをたくさん戻さなくては(=必要とあ れば、逆方向へまでも切り込む)ならないのです。

 もう分かりましたよね。
 皆さんが大好きな「リアタイヤからもうもうと白煙を上げながら、フルカウンターで旋回している状態」と は、リアタイヤを空転させて(=もうもうと白煙を上げ)もしくは、サイドブレーキなどでリアタイヤの回転 を止めてリアタイヤのグリップ力を小さくし、切り込んだハンドルをたくさん戻して(=フルカウンター)旋 回している状態なのです。


 と、ここまでが皆さんの大好きな“ドリフト”、すなわち、「リアタイヤからもうもうと白煙を上げながら、フ ルカウンターで旋回している状態」の極めて簡略化した理論的な説明です。



 さて、では、ここからがFFドリvsFRドリの話になります。

 リアタイヤを空転させているにせよ、サイドブレーキなどでリアタイヤの回転を止めているにせよ、タイ ヤと路面が摺動していると摩擦に因って慣性運動エネルギーが減衰されて車速が落ちます。
 したがって、ドリフト状態を持続するためには、駆動して車速の低下を押し留めなくてはなりません。
 FRなどの後輪駆動車の場合は、リアタイヤのグリップ力を低下させる行為(=リアタイヤを空転させ てもうもうと白煙を上げる)が駆動になるため、リアタイヤのグリップ力を低下させる行為と車速の低下 を抑える行為が両立します。

 ところが、FF車の場合は、前輪を駆動しますので、リアタイヤのグリップ力を低下させる行為と車速 の低下を抑える行為が両立しません。

 それどころか、フロントタイヤが横方向へ移動しようとする力が駆動力に食われてしまうため、駆動力 を与えるとフロントタイヤが横方向へ移動しようとする力が小さくなります。  カウンターがあてられて いる状態というのは、あくまで、弱い「リアタイヤの横へ移動する力」に合わせて、強い「フロントタイヤ の横へ移動する力」を減らしている状態です。  それなのに、フロントタイヤの横方向へ移動しようと する力が駆動力に食われてしまったら、強いハズの「フロントタイヤの横へ移動する力」が弱くなってし まいます。

 ということは、カウンターをあてたままでは、駆動力に食われて弱くなった「フロントタイヤの横へ移動 する力」を更に減らしてしまっていることになります。

 これでは、ただでさえ弱いのに更に減らされてしまった「フロントタイヤの横へ移動する力」が、弱い 「リアタイヤの横へ移動する力」とバランス出来なくなってしまいます。

 つまり、FF車において、タイヤと路面の摺動摩擦に因って落ちる車速を駆動力で維持しようとした場 合、カウンター量を減らさざるを得ないのです。
 カウンター量を減らすということは、本来グリップ走行時に切り込む 方向へハンドルを切るということです。
 その姿は、「フルカウンターで旋回している」という状態から遠く掛 け離れて見えることでしょう。
 だから、FF車は、カウンターをあてた状態での持続が不可能になってしまうのです(ただし、リアタイヤの グリップ力を極めて小さくした場合は、フルカウンターにはならなくても、僅かなカウンター状態での旋回を持続することが可能 です)


トップへ
戻る
前へ
次へ