更新の際に構造を変える事があります。 構造を変えるとアドレスが一から再配分されますので
ブックマーク等でお気に入りのページに飛んだ際に、目的と違うページが表示されることがあります。
その場合は画面一番下の [ TOP ] からトップページへ移動して、トップページから
目的のページへ移動してください。 お手数ですがよろしくお願いいたします。


実践ドライヴィング・テクニック

ドライとウエットは何が違うのか? (その弐)
【問】雨の日にドリフトの練習をしても、晴れの日に役立たないといわれました。 雨の日に練習するこ とは無駄なのでしょうか?
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
【答】う〜ん、ことドリフトに限っていえば、路面の摩擦係数が大きく異なると操作が大きく違ってきます。
 一番違うのは、横方向にスライドした時の「車速の落ち」ですね。
 路面が乾いていると、横滑りしたタイヤの接地面で凝着→剥離が激しく繰り返され、また、それに伴っ てタイヤ内部に塑性変形が及んでヒステリシスロスとなります。 これら損失がクルマの慣性運動エネ ルギーを消費するので、オーバーステア状態のクルマは(駆動力を与えて加速しない限り)急速に速度 を落とします。
 一方、濡れた路面ではタイヤのゴムが路面に凝着し難いため、横滑りしたタイヤは大きな損失を生 むことができず、オーバーステア状態になったクルマの速度があまり低下しません。
 このため、雨の日にクルマを横滑りさせると、比較的遅い速度で容易に滑らすことが出来る反面、滑 る始めてもなかなか速度が低下せず、ズルズルと滑り続けてガチャンとガードレールに刺さることにな りがちです。

 ですから、晴れの日と雨の日のドリフトは、車速も操作タイミングも操作量も異なります。
 特定のコースでのみドリフトが出来れば良いと考えるのであれば、そのコースで同じ気候、同じクルマ の同じセッティング、同じタイヤ銘柄で走り込めば、タイミングや操作量が体に染み付いて「お山の大 将」になることができるでしょう。
 そんな「お山の大将」状態で満足するのであれば、わざわざ雨の日に練習する必要はありません。
 その前提に限って言えば、雨に日に練習しても無駄ということになるでしょう。

 しかし、そんな特定条件限定のテクニックをドライヴィングテクニックと呼ぶことはできません。
 それはテレビゲームで敵の出現パターンを暗記して攻略することと何ら変わりません。

 少し話が逸れますが、レーシングドライバー「ジャッキー・スチュワート」が普通のドライバーを対象に 開催したドライバーズスクールで、ある練習方法を行いました。
 それは、乗用車のボンネットフード上へ浅いボウル(お料理で卵を泡立てたりする時に使うアレ)をテ ープなどで固定し、そこへテニスボールを入れて生徒に運転をさせます。
 浅いボウルですから、急加速・急減速・急旋回、いずれを行ってもテニスボールは転がり出てしまい ます。
 生徒は腫れ物に触るようにして加減速・旋回を行い、テニスボールをボウルの中に留めなくてはなり ません。
 勿論、おっかなビックリでテニスボールを落とさなければ良いわけではなく、生徒はテニスボールを可 能な限りボウルの縁へ近付けなくてはなりません。
 そして、テニスボールを単にボウルの縁へ近付けるだけではなく、制動→旋回→加速という一連の動 きの中で、テニスボールがボウルの縁に沿って周せるようになるのが、そのレッスンの最終目標となり ます。
 (いうまでもなく、某【頭文字が巨乳】という漫画に出てくる「水を入れた紙コップ」は、この練習方法が 元ネタになっています)

 さて、話を元に戻しましょう。
 晴れの日と雨の日のように、限界速度が大きく異なる環境で各々走り込むことは、少なくともどちらか 一方の操作タイミングや操作量を体に染み込ませることには役立ちません。
 しかし、速い速度域で練習することだけが、速い速度域での運転技術向上に役立つのであれば、浅 いボウルにテニスボールを入れて運転する訓練は無意味です。
 速い速度域で練習することだけが、速い速度域での運転技術向上に役立つのであれば、何を置いて も速い速度域で運転する訓練を繰り返すべきです。 浅いボウルにテニスボールを入れて運転する訓 練をしても、高速域での危険回避能力の向上など望むべくもないということになります。
 しかし、ジャッキー・スチュワートの生徒達は、浅いボウルにテニスボールを入れて運転する訓練をさ せられました。
 何故でしょうか?
 それがドライヴィングテクニックの基礎訓練だからです。
 浅いボウルにテニスボールを入れて運転する訓練は、単に速度が遅いばかりでなく、テールスライド はおろかスキール音さえ鳴らない次元の運転でしかありません。
 しかし、この訓練を繰り返すことによって、摩擦円の概念を体で理解することが可能になります。
 摩擦円の概念こそは、ドライヴィング理論ならびにドライヴィング実践の基本です。
 どんなハイテクニックも基本なくしては成り立ちません。
 同じコースを何百回も何千回も走り込んで、操作タイミングと操作量を体に染み込ませたドリフトテク ニックなど、言ってしまえば砂上の楼閣に過ぎません。
 クルマが(またはクルマのセッティングが)違ってしまえば、あるいはコースが違ってしまえば、全く使 い物にならないパターン攻略です。

 晴れた日に「お山の大将」になりたいというだけであれば、何も好き好んで雨の日に走り込む必要は ありません。
 晴れた日にのみ練習を重ねて特定のパターンを身に染ませ、そのパターン通りに操作してドリフトを 披露すれば良いだけのことです。
 しかし、路面状態や車両を限定しないドリフトテクニックを身に着け、運転技術を向上させたいのであ れば、雨の日にドリフトの練習をすることは有意義です。
 先にも書いた通り、雨の日にクルマを横滑りさせると、比較的遅い速度で容易に滑らすことが出来る 反面、滑る始めてもなかなか速度が低下しませんから、世間一般に思われているほど安全に練習でき るわけではありません。
 しかし、雨の日は、タイヤが減り難いですし、スキール音が騒音になることもありません。 また、スラ イドさせても失速し難いということは、低い速度で高次元な速度調整が求められるということでもありま す。 それは、少なくとも高い速度で高次元な速度調整が求められることよりも安全なハズです。
 操作タイミングや操作量が全く違ったとしても、低ミュー路で積み重ねた練習が、高ミュー路で何の役 にも立たないということはありません。
 直接、目に見える形で反映されていなくても、必ずや結実していることでしょう。



★補足 : ま、大きな声では言えませんが、スキール音って耳障りですからね。
 通報され難いってだけでも、雨の日は走り易いと思いますよ(笑)。


トップへ
戻る
前へ
次へ