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サスペンション

キャスター角を寝かせると、どういう影響がでるのか?
【問】 ホイールアライメントでキャスターを寝かせると直進性が良くなると聞きました。 直進性が良くな るということは旋回性能は悪くなるのでしょうか?
 もし、旋回性能に影響がないとして、他にデメリットは出ないのでしょうか?
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【答】事務用椅子の脚に付いているキャスター車輪を思い浮かべて頂ければ簡単に理解できるでしょ う。
 キングピン軸の延長線が地面と交わる点と、タイヤの接地面が離れれば離れるほど、直進時にキン グピン軸に生じる「転舵を直進方向へ矯正しようとする力」が大きくなります。
 ですから、一概にキャスター角を寝かせれば単純に直進性が向上するように思われがちですが、事 はそう単純ではありません。

 前輪のキャスター作用によって直進性が向上するのは、後輪駆動車だけです。
 前輪に駆動力が掛かる構造のクルマで、前輪のキャスター角を大きくした場合、進行方向に対して少 しでも横滑り角が付くと、加速中にキングピン軸を180度逆方向へ回転させようとする力が生じます。
 特に旋回加速の際には、タイヤに大きな横滑り角が付いていますので、キングピン軸を転舵しようと する力が大きく作用します。
 これらによって直進安定性は低下し、旋回加速中のステアリングは、ニュートラルヘ戻ろうとしなくな るのです。

 ところが、自動車メーカーが公表しているアライメント基準値を見ると、キャスター角は大きく寝かされ ています。
 特にスポーツモデルは顕著にキャスター角が寝かされています。 これは、FF系2or4駆スポーツモ デルでも変わりません。
 つまり、市販のFF系2or4駆スポーツモデルは、直進性を犠牲にしてまでキャスター角を寝かせた設 計になっているのです。

 何故でしょうか?
 実はキャスター角を寝かせると、転舵時にタイヤがキャンバー方向に倒れ込む動きをします。
 タイヤの転舵方向がカウンターステア方向で無い場合、この倒れ込みによってアウト側のタイヤのキ ャンバーがマイナス側に、イン側のタイヤのキャンバーがポジティブ側に大きくなるのです。
 つまり、旋回円の内側へ向かって転舵している場合に、前輪があたかもバイクや自転車の旋回姿勢 のようにイン側へ倒れこむわけです。

 新しい消しゴムを床に立ててみましょう。
 この消しゴムを掴み、水平に押せば、消しゴムが歪んで床と接触している面積が狭くなります。
 この時に、消しゴムを押す側へ適度に傾けると、消しゴムと床の接触している面積を、静止状態近く まで戻すことができます。

 旋回中のタイヤも同じで、前輪があたかもバイクや自転車の旋回姿勢のようにイン側へ倒れこむこと により、タイヤの接地面積が大きくなることが期待できます。
 つまり、前後の重量配分がフロント寄りで、アンダーステア傾向が高く、また、限られた状況下以外で カウンターステア状態になることが少ないFF系2or4駆車両は、キャスター角を寝かせることでアンダー ステア対策になるのです。

 ただし、前述の通り、FF系2or4駆車両においてキャスター角を寝かせると、スロットルON/OFFに因 ってステアリングにキックバックが生じて操舵感が悪化します。
 これが、国産ホットハッチがサーキットタイムに優れるのに、ハンドリング評価が低くなっている原因な のです。
 また、FF系でなくても、大キャスター角には弊害があります。
 大キャスター角によって転舵時のキャンバー角変化を大きくすると、カウンターステアの際に前輪の 求心力が大きく低下するようになってしまうのです。

 スポーツモデルにおいては、サーキットのタイムが商品価値を大きく左右します。
 それ故に、キャスター角を大きくするなどという小細工が横行してしまうのです。

 国産スポーツモデルが、外車勢のようにコントロール性の良さで評価されるためには、我々がサーキ ットタイムに執着することなく商品の本質を見抜く目を養い、それと共に、こうした小細工を評論家たち がレビューで酷評する必要があるでしょう。


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