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ドライヴィング理論

 摩擦係数とドリフトアングルの関係
【問】雨や雪ではドリフト走法が遅いと言われます。
 雨や雪では路面μが小さいということは解るのですが、摩擦力が小さくなって求心加速力が低下するのは グリップ走法でも同じハズです。
 何故ドリフト走法は、低μ路に於いてグリップ走法よりも一層不利になるのでしょうか?
 また、低μ高μとドリフトアングルの間には何か関係があるのでしょうか?

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【答】摩擦は運動エネルギーの消費ですから、タイヤが運動エネルギーを熱変換する効率が落ちれば摩擦 円は小さくなります。
 タイヤが摩擦を生む理屈はふたつ。
 ひとつは、タイヤと路面の凝着→剥離や、路面の細かな凹凸による表面付近の塑性変形、または凹凸の 突起に因る彫り起こしなどタイヤ表面で起こるエネルギー消費です(これをここでは「タイヤ表面の粘着力」と 表現することにします)。
 もうひとつは、荷重、あるいは加減速および旋回の際に、接地面が移動しようとすることに因ってタイヤ内 部が歪むことに因って生じるエネルギー消費です(これは「ヒステリシスロス」と呼ばれます)。

 「加減速および旋回の際に、接地面が移動しようとすることに因ってタイヤ内部が歪むこと」は、加減速と 旋回で異なります。
 旋回中、タイヤの接地面はタイヤの回転方向に対して横へ移動します。
 それは言い換えれば、タイヤトレッド上の任意の点Aが、タイヤの回転に伴って地面と接触〜解離する間 に、A点は路面に引き摺られて横へ移動すると言うことになります。
 これによってタイヤ内部が歪められ、塑性変形して発熱するのが、タイヤのコーナーリングフォースの源に なるのです。
 タイヤと路面の接地面は、進行方向に対して前後で荷重が小さく、中央部で荷重が最大になっています。
 このため、A点が路面と接触し始めた時、A点に掛かる荷重は小さく、A点がタイヤがタイヤの回転に伴っ て(接地面長さの中央に達するまで)大きくなります。
 その後、A点がタイヤの回転に伴って、接地面長さの中央から遠ざかれば、再びA点に掛かる荷重は小さ くなります。
 つまり、A点は最初路面に軽く接触し、時間の経過と共に強く押し付けられ、やがて再び押し付けられる力 が弱くなるのです。
 この間、A点はタイヤの横滑り量に因って横へ移動するのですが、荷重が弱くなるとタイヤの復元力の方 が摩擦力よりも大きくなります。
 そのため、A点の横移動量は、路面と接触直後は一定速度で増えますが、やがて増える速度が落ち、 [タ イヤの復元力]>[摩擦力]となる時点から減り始めます。
 これをグラフにすると、以下のようになります(下のグラフで実線)。







 路面μが高い時、この曲線はタイヤの横滑り角に比例して縦軸方向に大きくなります(下のグラフで点 線)。
 ★ただし、実線を縦方向に引き伸ばした線よりも、頂点は緩やかになります。







 路面μが低い時も、タイヤの横滑り量が小さいのであれば、高μ路の時と似た曲線を描きます(下のグラ フで実線)。

 しかし、タイヤの横滑り量が大きい場合は、高μ路の時と大きく異なります(グラフ内点線)。
 これは摩擦係数が小さい分、[摩擦係数]×[荷重]である[摩擦力]が弱くなり、早い時点でタイヤの復元力に 負けてしまうからです。







 路面μが低い時に、更に横滑り量を大きくした場合、グラフが描く曲線は、頂点が横へ移動するだけで縦 方向へは拡大しません(下のグラフで破線)。








 これは早くタイヤの横滑り量が増えるため、より早い時点で、摩擦力がタイヤの復元力に負けてしまうから です。

 以上から、「低μ路に於いては、タイヤの横滑り角が左程大きくなくてもコーナーリングフォースが飽和して しまう」ことが理解できます。

 つまり、路面の摩擦係数(μ)が小さくなると、単純に摩擦円が小さくなるばかりではなく、有効な横滑り角も 小さくなってしまうのです。
 ですから、旋回円の接線に対してクルマの角度を大きくする(=後輪の横滑り角が大きい)ドリフト走行は、 低μ路でグリップ走行よりも不利なのです。

 当然、敢えて書くまでもなく、雪道でグリップ走行に徹するGT-Fourを、カニ走りのハチロクが遥か後方から 追い上げるなんてことは物理的に有り得ません。
 ま、アレはクルマ版【アストロ球団】ですから「何でもアリ」なんですけどね。


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