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ドライヴィング理論

 ボディ剛性とステア特性の関係
※本件は、chemi teru様よりリクエストを頂戴しました。

【問】雑誌などに書かれている「ボディ剛性は低いとアンダーステア・オーバーステア共に強く出て、ボデ ィ剛性が高すぎてもアンダーが出る、適度な剛性であるとコントローラブルになる」という解説について、 ちゃんとした理論を教えて。

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【答】この話の前に、拙稿『【荷重移動】荷重移動についてもう少しだけ詳しい話』を一通りお目通し頂い て、
 @ 前後でロール剛性に差があると、横方向の荷重移動は、ロール剛性の高い方へ偏る。
 A アライメント変化に差が無ければ、横方向の荷重移動量が大きくなると左右両輪の合計グリップ 力が低下する。
 B したがって、フロントのロール剛性がリアよりも大きければアンダーステア傾向に拍車が掛かり、 逆ならばアンダーステア傾向が弱まる(オーバーステア傾向が出る)。
 …という理屈をご理解頂きたい。
 実は、上記の@〜Bが理解できていれば、ボディ剛性とステア特性の関係も簡単にご理解頂けるこ と請負いです。

 さて、どこかのページに貼った稚拙な絵をもう一度貼ってみます。
 ロールというのは、サスペンションの構造が生み出すロール軸という仮想の軸周りに発生します。
 このロール軸は、ロール角度(正確には車両の姿勢)によって激しく変化しますので、図として描いて しまうと不都合もあるのですが、概念としてロール軸というモノが存在することはご理解ください。

 


 さて、上図のABCD各点は、各々が車両四輪のアッパーマウントです。
 図は右旋回する車両を後方から捉えていますので、重心に掛る横Gによって点AおよびCが図下方へ 沈み、点BおよびDが図上方へ昇ります。
 この図は、ボディが剛体です。
 では、この図のボディがフニャフニャだったらどうでしょう。

 


 ちょ〜っと微妙な絵になってしまいましたが、ABもCDもほぼ水平なのに、重心が左に寄っていること が理解頂けると思います。
 つまり、ボディが撓ってから、点AおよびCが沈んで、点BおよびDが昇るワケです。

 上から見るとこんな感じ。

 


 さて、では荷重の話を秤に置き換えて考えましょう。

 秤...秤...そう。

 この絵です。

 


 二つの秤に載っている皿は剛体なので、皿を伸ばして秤同士を離しても、秤の示す重さは変化しませ ん(もちろん、皿の重さは無視)。

 


 ところが、この皿が重さで曲がってしまうとしたら、どうなるでしょうか?

 

 歪み方によって数値は変わりますが、上図のように最大計量500gの部分の皿が多く沈むハズです。

 トータルで1kgの荷物を載せているのに、最大計量500gの秤が僅か167gを指していた理由は、最大荷 重2.5kgの秤によって皿の沈む量が抑えられていた所為ですから...
 二つの秤が示す重さは、

 

 となるハズです。
 そして、モチロン、最大計量500gの秤が示す重さと、最大計量2.5kgの示す重さの合計は1kgです。

 では、話をロール概念図に戻しましょう。

 秤の話は、そのままロールに当て嵌まります。

 拙稿『【荷重移動】荷重移動についてもう少しだけ詳しい話』の例をそのまま置くと、
 ボディが十分に剛体であると仮定する時、
 左右間に100kgの荷重移動が起こるなら
 全輪のホイールレートが2kgなら、前輪の左右に生じる荷重移動は50kg,後輪の左右に生じる荷重移 動も50kg。
 これが、フロントのホイールレートが3kgで、リアのホイールレートが1kgなら、前輪の左右に生じる荷 重移動は75kg,後輪の左右に生じる荷重移動は25kgになりました。

 では、ボディの剛性が不十分で撓ってしまうなら?
 フロントのホイールレートが3kgで、リアのホイールレートが1kgの時に、前輪の左右に生じる荷重移動 が75kgになって,後輪の左右に生じる荷重移動が25kgになる理由は、後輪バネの伸縮量が前輪のバ ネによって抑えられていたからです。
 秤の話と全く同じで、前輪のバネによって抑えられている後輪バネの伸縮量が増えれば、後輪の左 右に生じる荷重移動が増え、その分だけ前輪の左右に生じる荷重移動が減ります。

 もう答えは出ましたね。
 前輪もしくは後輪の左右の荷重移動量が多くなれば、左右輪合計のグリップ力は低下するのですか ら、ボディの撓りによって左右の荷重移動量が増えた後輪はグリップ力が低下し、逆に左右の荷重移 動量が減った前輪はグリップ力が向上するんです。

 というワケで。
 元々、[ フロントサスペンションのロール剛性 ] > [ リアサスペンションのロール剛性 ] である市販 車は、
 ボディ剛性化に供って [ 前後サスのロール剛性比 ] が [ ロール方向の荷重移動が前後に偏る度合 い ] に近くなってアンダーステア傾向を強めるワケです。
 一方、経たりなどによってボディが低剛性化した場合は、逆の理屈で基本的にアンダーステア傾向を 弱めます。
 ただ、低剛性なボディは遅れた操作に寛大な半面、動きにタイムラグがあるので競技車両に慣れた ドライバーには限界域の適正な操作が難しく、純粋なステア特性ではなくて、不適切な操作ゆえのアン ダーステアやリバースステアを産むことがあります。

 ↑こーゆー理由で。

 「ボディ剛性は低いとアンダーステア・オーバーステア共に強く出て、ボディ剛性が高すぎてもア ンダーが出る、適度な剛性であるとコントローラブルになる」という解説になるワケです。


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