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内燃工学

長時間アイドリングがガソリンエンジンに有害な理由
【問】某掲示板のターボタイマーネタに於いて、長時間のアイドリングがエンジンにとって有害だという発 言がありました。  ガソリンエンジンに於いて長時間のアイドリングの何がイケナイのでしょうか?
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【答】「潤滑性が問題になる」というレスがありましたが、それは誤りです。
 オイルの粘度は温度の上昇に伴って急激に低下します。
 温度ごとの粘度係数を示すグラフが直線を描いているのは、縦軸にlog10Tに比例した目盛り、横軸に log10log10(ν+0.8)に比例した目盛りを置いているからです。  たとえば、SAE30の粘度は、油温40℃の 時に80cP位、油温100℃の時に10cP位ですが、油温70℃の時はその中間の45cPに成りません。   25cP位しかないのです。  つまり、逆に言えば油温が低ければ粘度は非常に高くなるワケです。   SAE30の粘度は、油温140℃の時に5cP位、油温120℃の時に7cP位ですが、油温100℃で10cP位、油 温80℃で17cP位です。  したがって、高温・高負荷で焼き付かないものが、アイドリングで焼き付く道 理がありません。

 また、「アイドリング時には、オイルポンプの吐出量が少ないために、クランクがジャーナルから油圧 で浮き上がることが出来なくなり、メタルタッチして焼き付く」というレスもありました。  これも間違いで す。  たしかに、正常に稼動しているエンジンのクランク軸は、流体潤滑を維持しています。 しかし、 それはオイルポンプからの油圧で浮いているワケではありません。  レイノルズの流体力学理論に拠 れば、「ひとつの面が他面に対して移動する時、両面間に『くさび型油膜』を形成して油圧を発生し、油 膜が負荷能力を有する」とあります。  これをジャーナル軸受けに当て嵌めると、こうなります。
(1)まず静止状態に於いて、クランク軸とジャーナル軸受けは下部で接触しており、非接触な隙間には オイルが満ちています。
(2)接触部〜非接触部はくさび型になりますから、クランク軸が回転し始めると、軸の回転によってオ イルが引き込まれます。  その結果クランク軸はジャーナル軸受けから浮いて流体潤滑を形成しま す。
(3)工学書丸写しな式は割愛しますが、くさび型油膜の油圧は、ある程度まで油膜の厚さに反比例す るため、ピストンやコンロッドの慣性力や燃焼圧力にも耐え得るのです。 

 てゆーか、それ以前に、オイルポンプからの油圧だけで浮いて、ピストンやコンロッドの慣性力や燃 焼圧力に耐えることは、たとえ建設機器に使う超高圧な油圧を用いても不可能なのですヨ。
 よく考えてください。
 クランク軸とジャーナル軸受けの隙間の容積 V は、
 V = ( [ ジャーナル軸受け内径 ÷2 ]の2乗 - [ クランク軸の外径 ÷2 ] ) × π × メタル長さ
です。
 つまり、クランク軸がジャーナル軸受けの中心にあっても、偏心してメタルタッチしていても、クランク 軸とジャーナル軸受けの隙間の容積は同じなのです。
 したがって、たとえ、どれ程物凄い高圧でオイルを吐出しても、油圧でクランク軸をジャーナル軸受け の中心へ持ってくることは不可能なのです。


 さて、ではガソリンエンジンに於いて長時間のアイドリングの何が問題になるのでしょうか?
 アイドリング中のエンジンは、スロットルをほぼ全閉にしていますから、吸気管内に大きな負圧を生じ ています。  そのため、前回の行程に於ける排気ガスの一部が、オーバーラップ期間に吸気ポートへ 吸い戻されてしまうのです(※注)。  このためにシリンダ内の残留ガスが多くなり燃焼温度が低くなり ます。  また、アイドリング中の作動ガス量に比べてシリンダ内壁の面積が大きいため、燃焼〜膨張 行程中の作動ガスが急速に冷却されてしまいます。  これらの理由に因って、ススなどの固体生成物 が多く発生してしまうのが問題になるのです。

 固体生成物は、燃焼室内に堆積して断熱層となって要求オクタン価を上げてしまう他、バルブシート などの密着性を阻害したり、点火プラグに付着して失火させたり、エンジンオイルに混ざってオイルの 寿命を短くします。  また、堆積層が剥離して燃焼熱に晒されると、火種となって過早着火の原因とな ったり、触媒を詰まらせたりします。

 もちろん環境的にガソリンの浪費がダメダメだということもありますが、以上の理由により、エンジン にも良くないのです。




※注:これは、もちろん言うまでもなく、オーバーラップ期間の長いハイパワーエンジンに於いて顕著と なる傾向がありますから、ハイパワーエンジンの方が長時間のアイドリングが禁忌です。


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