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ブレーキ

[ 蹴るような急ブレーキ ] と [ 踏みしめるような急ブレーキ ] の違い
【問】急ブレーキを掛けるとタイヤがロックするのに、ジワリ → ギュウゥゥゥっとブレーキペダルを踏み 絞るとロックしません。
 クルマ関係のサイトで訊くと「荷重移動する前に強い制動をするからだ」と教えられたのですが釈然と しません。
 荷重移動は重心高さに於ける水平方向の慣性力と、地面(高さゼロ)で生じるタイヤの抵抗との間で 生じる単純な力学のハズです。
 荷重移動は制動力に依存している( [ 強い制動 ] ⇒ [ ピッチ方向への大きな荷重移動 ] )のですか ら、大きな荷重移動をするためには強い制動が必要です。
 たとえバコ!っとブレーキペダルを蹴っているのだとしても、大きな制動を掛けているのですから、そ の時点で大きな荷重移動が発生しているハズです。
 「荷重移動する前に強い制動をするからフロントタイヤがロックしてしまうのだ」と云う理屈はオカシイ のではありませんか?
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【答】そうですね。
 巡航状態からいきなりバコ!っとブレーキペダルを蹴飛ばすとタイヤがロックするのに、ジワっと踏み 締めるとタイヤがロックしないのは、ブレーキの小さな非スポーツモデルに於いて良く経験する現象で す。
 この理由は、「荷重移動する前に強い制動をするから」ではなく、「荷重移動がタイヤに伝わる前にタ イヤの回転を強く抑制したから」です。
 ブレーキを踏んでタイヤの回転を抑制すると、 [ ブレーキパットとローター間の摩擦損失 ] + [ タイヤ と路面間の摩擦損失 ] に因ってクルマの慣性運動エネルギーが消費されて車速が落ちます。
 タイヤを含むブレーキシステムの抵抗はタイヤの接地面に働き、クルマの慣性運動は重心高さに働く ため、前後輪間に“荷重移動”いう現象を生じます。

 ここで気付いて頂きたいのは、荷重に因ってサスペンションスプリングが縮むということです。
 荷重に因って縮むバネは、その荷重に相応な長さに縮んで初めて全荷重を伝えることが出来ます。
 たとえば、5kg・mmのバネに100kgの荷重を掛ければ単純計算でバネは20mm縮みます。
 しかし、一瞬で縮むワケではありません。
 縮み始めから5mm縮んで10mm縮んで20mm縮むのです。
 そして、縮み始めから5mmしか縮んでいない時や10mmしか縮んでいない時は、100kgの荷重を未だ 伝えていません。
 スタビライザーやサスペンションスプリングに関する記事で、「前後輪いずれか一方のスタビライザー やサスペンションスプリング“だけ”を強化した場合に生じる荷重移動の偏り」でも例に挙げましたが覚 えておいででしょうか?
 20mm縮んで100kgの荷重を伝えるバネが5mmしか縮んでいないなら、伝わっている荷重は25kg。   バネが10mmしか縮んでいないなら、伝わっている荷重は50kgです。
 ということは、ブレーキペダルを踏んでタイヤの回転を抑制しても、フロントサスペンションが相応の長 さに縮むまでの間は、その減速Gに比例した荷重はタイヤに伝わりきっていないのです。
 ですから、巡航状態からいきなりバコ!っとブレーキペダルを蹴飛ばすと、荷重移動がタイヤに伝わ る前(=フロントサスペンションが縮んで行く途中)にタイヤの回転を強く拘束してしまうから、タイヤがロックし易 くなってしまうのです。

 そういう意味で言えば、サスペンションスプリングを硬くすることの意外なメリットに気付かされます。
 サスペンションスプリングを硬くする → 水平Gの変化に伴う姿勢変化量が少なくなる → 姿勢の変化 に掛かる時間が短くなる → 荷重移動が早くタイヤに伝わる → 急な操作に対する挙動変化が早い  → 乱暴な運転でもソコソコ走ってしまう
 というメリットです。
 しかし、これは同時にデメリットでもあります。
 「乱暴な運転でもソコソコ走ってしまう」のですから、
 → (低い次元なら)運転が下手でも破綻し難い → 自分の運転技術を過剰評価してしまう → 下手な クセに高い次元の運転に挑んでしまう → 自爆・・・南無〜
 ですから、「ノーマルの性能を出し切れるようになるまでは、サスペンションに手を付けちゃイケナイ」 と言われるんですね。

 さて、この辺の理屈が理解出来ると、応用で「ノーマルサス車両の走らせ方」が理解できます。

 荷重移動に因ってサスペンションが伸び縮みするということは、サスペンション直上の質量が大きく上 下運動をするということです。
 純正の柔らかくストロークの長いサスペンションの場合に、たとえば急ブレーキでフロントサスペンショ ンが大きく縮み、リアサスペンションが大きく伸びると上下方向に慣性運動エネルギーを持ってしまいま す。
 フロントサスペンションが勢い良く縮むと、たとえば本来なら荷重移動100kgに対して20mm縮むべき 処が、勢い余って30mm縮んでしまうかもしれません。
 もし、本来なら荷重移動100kgに対して20mm縮むべき処が、勢い余って30mm縮んでしまったとした ら、30mm縮んだ瞬間にタイヤに掛かる荷重は100kgではなく150kgになってしまいます(一瞬だけです が)。
 つまり、純正の柔らかいサスペンションのデメリットは、姿勢変化量の多さに伴うアライメント変化だけ ではなく、こうした荷重移動のオーバーシュートもあるのです。

 逆に言えば、純正の柔らかいサスペンションで速く走るコツの一つは、荷重移動量がオーバーシュー トしてしまわないよう挙動変化の速度を抑えることです。
 具体的に云えば [ 始めに速く操作しない ] つまり、「急の付く操作をしない」ということです。
 ドラテク談義で頻繁に言われる「急の付く操作をしない」の理由は、「急ブレーキ」に於いては [ 同じ踏 力でもタイヤがロックし易くなる ] ,「急ハンドル」に於いては [ 挙動がオーバーシュートし易くなる ] か ら駄目なんですね。


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