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サスペンション

簡単な実験を使ったプリロードの説明
 たしかに言葉だけで理屈を理解するのは、そう容易いことではありません。
 しかし、「プリロードの理屈が文章で理解できない」と言われると面食らってしまいます。
 だって、ほとんどの人は「荷重を受けて縮むバネの自由長からの縮み量は、制限された伸びスローク に依存しない(ただし、[ 縮み量 ] > [ 制限された伸びストローク] である限りに於いて)」という説明で納得してもらえ るのですから。

 「内部応力が云々」などと言われると、このヒト大丈夫かな?とさえ思えてしまいます。

 タレントの大空テントさんのギャクネタの様に「ついて来れん子は置いてきますよ〜」と言っても良いの でしょうが、それではあまりに不憫なので、(少々サービス過剰だという気もしますが)もっともっと簡単に説明し ましょう。
 …といっても、サスペンションの図を描くのは面倒だし、何よりサスペンションそのもの ではプリロードが理解できないみたいなので、バネ秤を用いた実験をすることにしま す。



 まず、最大貫量500グラムのバネ秤を用意しました。  っても、実は勤めている施設で郵便物の重さ を量るのに使っているバネ秤なんですけどネ。

 

 このバネ秤に愛飲の缶コーヒーを載せます。

 

 実貫重量228グラムですね。

 さて、このバネ秤を皿に何も載っていない状態で、差し金を使って皿を押します。
 差し金は、文房具の三角定規と直線定規をセロハンテープで留めて作りました。
 

 何も皿に載せていない状態で、皿上面の高さが地面から155mmでしたので、三角定規を155mmの位 置で留めてあります。
 

 この差し金を秤の皿に当てます。
 
 直線定規の部分が、地面に対して目盛り0mmである時、秤の皿は素の状態と同じであり、秤の針が 指す数字は0グラムです。



 では、差し金に使っている直線定規の目盛りが地面に対して5mmを指すようにします(=素の状態から、 皿を5mmだけ引き下ろした状態)

 
 つまり、これで皿は何も載せられていないにも関わらず、5mm沈んだワケです。
 この時、皿上面の高さは地面から150mm(155-5)。

 
 秤の針が指す数字は約150グラムです。


 ここまでは理解できますよね。


 では、この「差し金に拘束されて、何も載せられていないにも関わらず皿が5mm沈んだ状態」がプリロ ード5mmだということは理解できますか?
 ( 「違うッ!」と仰りたい方は、その理由を添えてkeibow001@gmail.comまでe-mailをお送り下さい。  なお、お手数ではあ りますが、メールの題名の何処かに“圭坊”もしくは“魔窟”と御明記ください。  「はじめまして」や「こんばんは」などの題名は 自動的に削除されます。)

 プリロードとは、あらかじめバネを縮めておくことであり、それ以上でもそれ以下でもありません。
 ですから、差し金に拘束されて、何も載せられていないにも関わらず 皿が5mm沈んだ状態」とは紛れもなく、プリロード5mmの状態なのです。

 差し金に拘束されて、何も載せられていないにも関わらず皿が5mm沈んでいる時、秤の針は概ね150 グラムを指しています。
 この秤の皿に150グラムよりも軽い物を載せても針は動きません。
 たとえば、素で量れば100グラムある単1電池を差し金で拘束されたバネ秤に載せても、そのバネ秤 の針は動かないのです。

  
 ↑左の画像が素で量った状態。  秤の針は100グラムを指しています。
 一方、右の画像は、プリ5mmの秤に乾電池を載せた状態。  秤の針は乾電池を載せる前も、載せ た後も150グラムを指したままで変化はありません。



 では、150グラムより重い物を載せたらどうなるでしょうか?
 先ほど素の状態で実貫した缶コーヒーを載せてみましょう。

 

 針が指している数字は・・・

 

 素で量った時と同じです(まぁ、当然と言えば当然すぎる結果ですが)。

 もし、あらかじめ縮めておくことに因って内部応力とやらが変化し、 同じ荷重に対して自由長から縮む量が変化してしまうのであれば、
プリ5mmを掛けられている秤で量る缶コーヒーの 重さは、缶コーヒーの質量とは異な ってしまうのです。
 ( 「異ならないッ!」と仰りたい方は、その理由を添えてkeibow001@gmail.comまでe-mailをお送り下さい。  なお、お手数 ではありますが、メールの題名の何処かに“圭坊”もしくは“魔窟”と御明記ください。  「はじめまして」や「こんばんは」などの 題名は自動的に削除されます。)

 つまり、プリロードとは、
1: 自由長から5mm縮める(皿などの構造物の重さを受けているので、厳密に言えば、 「目盛りゼロを指す時のバネは自由長ではない」が、それは無視する)のに必要な荷重が 150グラムである時、プリ5mmは150グラムを超える荷重を受けるま で縮まない(自由長から5mm縮んだ状態のまま)

2: 150グラムを超える荷重を受けると、プリ0もプリ5mmも荷重に応 じて縮む(秤の場合は、プリ0もプリ5mmも皿上面の高さが同じ)

3: クルマの場合は、荷重の抜けたサスペンションのバネが伸びて プリロードの拘束に達しない限り、プリ0もプリ5mmもクルマの姿勢は 同じ。
 で、その時の各サスペンションスプリングの自由長からの縮み量 は、プリ0もプリ5mmも同じ。

=: プリロードでバネレートは変化しない。

4: そしてクルマの場合は、荷重の抜けたサスペンションのバネが 伸びてプリロードの拘束に達した際に、そのバネだけがそれ以上伸 びなくなるために、クルマの姿勢が制限される。
 というだけの話なのです。


 そして更に付け加えるなら、
A: プリロードの拘束に因ってサスペンションスプリングが伸びることが出来なくなると、クルマの姿勢 が制限されるため、ピッチやロールを抑制することが出来る。
B: しかし、プリロードの拘束に因って伸びることが出来ないサスペンションスプリングは、路面のウネ リや凹みに追従することが出来ないため、荒れた路面での接地性が悪化してしまう。
 のです。



 以上。


 幾らなんでも御理解頂けたことでしょう。
 これで理解できないとなると、中学校の理科…いやいや小学校の理科からやり直して貰わないとこれ 以上説明のしようがありません。
 それは私の手に余りますので

 これにて御免。

□■2007.01.12■□

 まさか来るとは思わなかったこのページへの質問メールが当月05日に届きました。
 う〜ん。  まだこーゆー誤解の余地があったんですねぇ。

圭坊さま
 
 突然のメールにて失礼します。
 私は、車高調整キットのプリロードのことを理解するため、色々とネット上の情報を入手しているうち に貴殿のページにたどりついたものです。
 
 貴殿の実験、大変興味深く拝見させていただきました。
 一つ質問があります。もしよろしければご回答をお願いいたします。
 
 乾電池を載せたとき、皿上面からの対地面のプーさん三角定規による計測値は、150mm(つまりプ リロード5mmをかけた状態)であると思いますが、缶コーヒーを載せたときは、上記計測値はいくつに なるのでしょうか?
 また、缶コーヒーを載せたときには、プリロード5mmをどのようにかけているのでしょうか?5mmだ け皿上面を下げておく手法では、対処できない気がするのは、素人の理解不足でしょうか。
 
 以上、お願いいたします。



 では、返答を。


>乾電池を載せたとき、皿上面からの対地面のプーさん三角定規による計測値は、150mm(つまり プリロード5mmをかけた状態)であると思いますが、缶コーヒーを載せたときは、上記計測値はいくつ になるのでしょうか?

 缶コーヒーを載せた時(つまり、秤の針が228グラムを指した時)に秤の皿の高さは、目測で地面から 147mmです。
 プーさん三角定規はプリロードですから、缶コーヒーを載せた時はモチロンのこと、たとえば缶ビール を載せたとしても、地面からプーさん三角定規底辺までの高さは常に150mmです。
 もしかしたら、私の手が写っている所為で、「プーさん三角定規は可動する」と捉えさせてしまったの かも知れませんが、プーさん三角定規はあくまで「プリロード」なのですから、地面からの高さは常に 150mmで固定です。
 僅か3mmの隙間なので写真では分かり難いと思いますが、秤に缶コーヒーを置けば、秤の皿と三角 定規の底辺は離れます。



>また、缶コーヒーを載せたときには、プリロード5mmをどのようにかけているのでしょうか?5mmだ け皿上面を下げておく手法では、対処できない気がするのは、素人の理解不足でしょうか。

 プリロードはあくまで「プリ」「ロード」です。  つまり「あらかじめ」「縮めておく」のですから、プリロード を超える荷重を受けた時に、プリロードはバネに影響することが出来ません。


 今更ですが、プリロードに関する基本的な知識を再確認しておきましょう。

 自由長が20センチある1kg・mmのバネを2本用意して、片方にプリロードを5mm掛けたとします。
 この2本のバネに荷重を1kg刻みで加えて行ったら、それぞれのバネ長さは
┌───────────┬───────┬───────┐
│バネレート1kg・mm, 自│プリロードなし│プリロードあり│
│由長20cmのバネの場合 │のバネ長さ  │のバネ長さ  │
├───────────┼───────┼───────┤
│荷重を受けていない時 │ 200ミリ │ 195ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│1kgの荷重を受けた時│ 199ミリ │ 195ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│2kgの荷重を受けた時│ 198ミリ │ 195ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│3kgの荷重を受けた時│ 197ミリ │ 195ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│4kgの荷重を受けた時│ 196ミリ │ 195ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│5kgの荷重を受けた時│ 195ミリ │ 195ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│6kgの荷重を受けた時│ 194ミリ │ 194ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│7kgの荷重を受けた時│ 193ミリ │ 193ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│8kgの荷重を受けた時│ 192ミリ │ 192ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│8kgの荷重を受けた時│ 191ミリ │ 191ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│10kgの荷重を受けた時│ 190ミリ │ 190ミリ │
└───────────┴───────┴───────┘
 となります。

 つまり、

 プリロードなしのバネ → 自由長200mmから1kg荷重が増える毎に1mmずつ縮 む。

 プリロード5mmのバネ → 荷重が5kgまでは制限されたデフォルト長195mmのま ま。 荷重が6kg以上は、プリロードなしのバネと同じ長さになる。

 なのですよ。



 もうこれ以上の説明は不要だと思いますが、サービスで秤の実験に表を書き換えてみましょうか。
┌───────────┬───────┬───────┐
│上述のバネ秤を使った実│プリロードなし│プリロード(プ│
│験の場合       │の皿高さ   │ーさん三角定規│
│           │       │)ありの皿高さ│
├───────────┼───────┼───────┤
│荷重を受けていない時 │ 155ミリ │ 150ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│100gの荷重を受けた時 │ 152ミリ │ 150ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│150gの荷重を受けた時 │ 150ミリ │ 150ミリ │
├───────────┼───────┼───────┤
│228gの荷重を受けた時 │ 147ミリ │ 147ミリ │
└───────────┴───────┴───────┘


 ですから、缶コーヒーを載せた時、「プーさんの三角定規(=プリロード)は関係していない」のです。


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