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ブレーキ

 何故ビックローター&ビッグキャリパーがもてはやされるのか? 2007.04.27 全面改訂
【問】ブレーキは、運動エネルギーを熱エネルギーへ変換する理屈で制動力を得ているのですから、最 大効率が、タイヤがロック寸前の状態になるのは理解できます。
 ということであれば、タイヤをロックするだけの容量があれば十分なのではないでしょうか?
 何故ビックローター&ビッグキャリパーがもてはやされるのでしょう?
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【答】
 理由は幾つもあります。
 まず大径ローターのメリットは
(1)より外周部を挟むのであれば、同じパッドを同じ圧力でローターへ押し付けても、発生する回転拘 束力が大きくなる(※1)
(2)体積が増えるので熱容量が大きくなる → ローターの温度上昇が緩やか → 耐フェード性能の向
(3)表面積が増えるので放熱性が良くなる→耐フェード性の向上

 次に対向ポッド式キャリパーのメリットは、
(1)片押し式キャリパーは、万力で挟むような構造をしているために、高さ(外周側と内周側の距離)が 長いパッドを使うとキャリパーが開き易い。
  一方、対向ポッド式は、箱の一面を開けたような構造をしているために、開き難く、高さのあるパッド が使っても問題が起こり難い(※2)
(2)(1)の片押し式キャリパーの弱点を剛性アップで補おうとすると、どうしても重くなってしまう。
  重い片押しキャリパーは、旋回中の遠心力や左右へ転舵した際の慣性力によってキャリパーがス ライドピン方向に動いてしまう。
  キャリパーがスライドピン方向に動くとローターに押されてピストンが戻されてしまう。  そうなると、 次にブレーキペダルを踏んだ際に踏み代が多くなってしまう。  増える踏み代次第では危険でさえあ る。
  対向ポッド式であれば、この心配がない。
(3)4ポッドや6ポッドなどの対向多ポッド式キャリパーは、回転方向に長いパッドを使っても面圧を均 一に出来る。  それゆえに大きなパッドが使える。
  摩擦力は荷重に依存していない(アモントン・クーロンの摩擦法則)ので、大きなパッドを使ったから といって同じ油圧に対する回転拘束力が大きくなるワケではありませんが、大きなパッドは単位接触面 積あたりの負荷が小さくなります(※3)
  単位接触面積あたりの圧力が小さいので、減り難くなる・・・など、摩材の制約が少なく、良いブレー キに仕立て易くなります。

 もちろん、デメリットも多々。
 大径ローターのデメリットは
(1)鉄といえども数百度の高温下の剛性・靭性は決して高くない。 そのため、大径ローターは厚く作ら ないと強度が保てない → 外径差以上に重くなる → ばね下重量増 → タイヤの路面追従性悪化 →  巧妙なサスペンション設計と高性能パーツで凌ぐと車輌価格がUP。
(2)(1)の理由で厚く作らざるを得ないが、厚く作れたローターは熱で歪み易い → 熱を帯びても歪み が出難いような構造が必要 → 製造コストUP → 車輌価格に反映
(3)大きな内径のホイールを要求する → タイヤがロープロフィール化 → 乗り心地悪化,ピーキーな 限界特性 → 巧妙なサスペンション設計と高性能パーツで凌ぐと車輌価格がUP。

 対向ポッド式キャリパーのデメリットは、
(1)高さのあるパッドを使うのでなければ、対向ポッド式の方が重くなってしまう → 対策としてアルミ材 で作る → 材質によっては剛性低下,製造単価高騰。
(2)キャリパー全体がスライドピンに沿って動く片押し式と違って、ローターの“振れ”に対する追従性が あまり良くない → ローターの交換サイクルが短くなる → 維持費高騰
(3)ピストンが多くなれば多くなるほど、ピストンが固着する可能性が高くなってしまう → 頻繁なメイン テナンス → 維持費高騰
(4)リアブレーキに採用する場合は、別にパーキングブレーキを備える必要が生じる → 車輌価格UP

 まぁ、単純に言って、高い車輌価格と高額の維持費が許される車種なら大径ローター&対向多ポッド キャリパーが使えるけど、そうじゃないクルマに使うのは無理ってことです。

※1
 外径280mm(半径140mm)のローターに、外周端と内周端間の距離40mmのパッドを組み合わせれば
 パッドの外周端が描く円弧の半径は280mm÷2=140mm
 パッドの内周端が描く円弧の半径は280mm÷2-40=100mm
 車輪が1回転する間にパッドが摺動する面積は
 (140^2-100^2)×π≒30159平方ミリ

 同じパッドでローター外径が320mmなら
 パッドの外周端が描く円弧の半径は320mm÷2=160mm
 パッドの内周端が描く円弧の半径は320mm÷2-40=120mm
 車輪が1回転する間にパッドが摺動する面積は
 (160^2-120^2)×π≒35186平方ミリ

 ローター外径280mmの時、高さ40mmのパッドが摺動する面積が30159平方ミリ,それが同じパッドでもローター外径320mm なら35186平方ミリですから、その差は
 35186÷30159≒1.167
 パッドに掛かる荷重(油圧)が同じでも、単純計算で回転拘束力が約17%も増える勘定になります。

※2
 上(※1)の計算において、外径320mm(半径160mm)のローターに、外周端と内周端間の距離60mmのパッドを組み合わせ れば、
 パッドの外周端が描く円弧の半径は320mm÷2=160mm
 パッドの内周端が描く円弧の半径は320mm÷2-60=100mm
 車輪が1回転する間にパッドが摺動する面積は
 (160^2-100^2)×π≒49009平方ミリ

 同ローターに外周端と内周端間の距離60mmのパッドを使った時と比べて
 49009÷35186≒1.393
 パッドに掛かる荷重(油圧)が同じでも、単純計算で回転拘束力が約39%も増える勘定になります。

 更に言えば、外径280mmのローター&周端と内周端間の距離40mmのパッドの組み合わせと、外径320mmのローター&周 端と内周端間の距離60mmのパッドの組み合わせを比べると、
 49009÷30159=1.625
 パッドに掛かる荷重(油圧)が同じでも、単純計算で回転拘束力が約63%も増える勘定になります。 デカいローターとデカい パッド(=必然的にデカいキャリパー)の組み合わせが如何に効くかが良く分かりますね。

※3
 30トントラックのブレーキを軽自動車のブレーキに換えて超高圧を掛け、時速三桁kmから急制動するシーンを思い浮かべれ ば御理解頂けることでしょう。
 停止する遥か手前でパッドが燃えて炭化してしまいます。


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