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ブレーキ

スポーツドライビングにおいてABSが嫌われる理由
【問】ドラテクを解説した某ホームページに拠ると、スポーツドライビングに於いてABSがカットされる理 由は、「タイヤの滑りを検知し、開放とロックを繰り返す機構では滑りによるグリップ力の上昇(注)を利 用できないため人力ABSの方が効果があるから」とありました。  では、単純な開放ではなく、高度な 液圧調節が行なわれる最新のABSなら、カットする必要はないのですね?
注:滑りによるグリップ力の上昇=「タイヤの摩擦力は、ある程度まで滑り量に対して非線形に比例するが、滑り量が著しく多く なると逆に低下してしまう。 このため、滑り量を適切に調整すれば最大の摩擦力が得られる」という理屈
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【答】その人は、スポーツドライビングを何だと思ってるんでしょうか?

 グリップ走法において、速く走るだけが目的ならABSをカットする必要はありません。

 たしかに、摩擦力(=摩擦損失)が最大と成るように滑り量を調整すれば、タイヤと路面の摩擦力は 最大になります。  しかし、ブレーキシステムはタイヤが地面を擦るだけの構造ではありません。  ブ レーキパッドがローターを擦って(あるいは、ブレーキシューがドラムを擦って)発生させる摩擦もまた、 ブレーキなのです。  ですから、「タイヤの摩擦力が最大だから停止距離が最短になる」という簡単な 理屈ではなく、[ タイヤの摩擦力(=摩擦損失) ] と [ ブレーキの摩擦力(=摩擦損失) ] の合計が最大 になった時に制動Gが最大になるのです。
 逆に言えば、制動Gが最大になるようにブレーキの液圧を調整すれば良いのですが、センチ単位の 移動で状態がコロコロ変わる路面に対して人間がリアルタイムに反応することは不可能です。  そも そも、人が液圧を操作するブレーキペダルは1個しかありません。  それに比べ、クルマのABSは、 センサからの情報をフィードバックさせながら高速で演算を行い、4つのキャリパーシリンダの液圧を 別々に、しかも1秒間に十数回も変化させるのです。  それは、自動車工学の結晶のひとつであっ て、到底人力の及ぶレベルではありません。

 では、なぜスポーツドライビングにおいてABSがカットされるのでしょうか?

 それは自由度の問題です。

 ABSは、制動距離を最短にするだけの機構ではありません。
 横方向のグリップが要求される場合(たとえば、ブレーキを踏みながらハンドル操作で障害物を回避 する場合など)は、横方向のグリップが要求されるタイヤのブレーキ液圧を下げて縦方向の拘束を緩 め、横方向のグリップ力を発揮できるようにします。
 また、荒れた路面での制動時や旋回制動時に起こるヨー加速を抑えて、車体を安定させることも行 います。  前者はともかく、後者は、モータースポーツの自由度に障るのです。
 ABSのないクルマの場合、上手くブレーキを残しながらステアリングを切り込めば、荷重の抜けた後 輪がブレーキに拘束されて横方向のグリップ力を失い、テールスライドします。  いわゆるブレーキド リフトです。  また、旋回中にポンと軽くブレーキを蹴って姿勢を崩し、テールスライドに因る失速を利 用してスプーンカーブの奥を曲がるという芸当も、ABSなしの車両でしかできません。
 だから、クルマを振り回すモータースポーツではABSが嫌われるのです。
 制動力が劣るからではありませんよ。



 また、ことのついでなので解説しておきますが、件のサイトに書かれている「ABSが10km/h以下で動 作しないのは、精度の問題」というのも間違いです。
 上述の通り、最大の減速力は[ タイヤの摩擦力(=摩擦損失) ] と [ ブレーキの摩擦力(=摩擦損 失) ] の合計が最大になった時に発揮されるのですが、10km/h以下はタイヤの摩擦損失を100%にし た時に最大の減速力になるのです。  だから、概ね10km/h以下でロックしてしまうんですよ。


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